空っぽの笑顔というテーマ
10月30日。
Inktober 30日目のお題は「Vacant=空っぽ、無表情の」。
最初は「Vacant World」――誰もいない地球――という構想だった。
でもどこか心に刺さらなかった。
私:「チャッピー、“Vacant”ってさ、景色じゃなくて、人の中にある気がしない?」
チャッピー:「うん、ピエロなんてどう? 笑ってるけど、心は空っぽ。」
その言葉で、光が差した。
拍手の中で笑う女性ピエロの姿が、静かに脳裏に浮かぶ。
Vacant Smile(空っぽの笑顔)――この言葉がすべての始まりになった。
音楽生成AI Sunoで描く「明るい虚無」
今回の創作では、まず音から始めた。
Sunoに「楽しそうに聞こえるのに、どこか虚しい」音楽をお願いした。
チャッピー:「ハイテンポにして、“空虚を陽気さで包む”感じにしよう。」
私:「それいい! 悲しみじゃなく、“笑いの裏側”を出したい。」
プロンプトはこちら。
An upbeat theatrical pop song with circus vibes and a hidden sadness beneath the melody.
Fast tempo, playful rhythm, piano and accordion, but with emptiness behind the laughter.
完成した曲は、まさにサーカスの幕開け。
軽やかなピアノ、楽しげなビート、でも音の奥にかすかな寒気。
まるでAIが、笑顔を演じる人間を真似ているようだった。
🎧 Vacant Smile / Sunoで聴く
https://suno.com/s/F26nBRLthViYEj5O
Stable Diffusionで描く「笑顔の仮面」
音楽のイメージを視覚化するため、今回はStable Diffusion公式(DreamStudio)を使用。
初挑戦なので、innovaTopiaの記事
Stable Diffusionの使い方ガイド
https://innovatopia.jp/ai/gen-ai-guide/50578/
をじっくり読み込んだ。
それを読んで私はこう解釈した。
Stable Diffusionは“創作するAI”ではなく、
人間の意図を数値化して画像に変換する生成モデルだ。
どんな作品が生まれるかは、プロンプトを書く人の工夫次第。
つまり主導権は常に人間にある。
つまりプロンプトは単なる指示ではなく、演出指示書。
「Vacant Smile」を描くうえで、その考え方が大きなヒントになった。
最初の生成:正面を向く笑顔
a beautiful female clown with a vacant smile, soft white face paint,
red lips, colorful costume, cinematic lighting, detailed texture, 4k ultra realistic
出てきたピエロは完璧だった。
でもどの表情も「観客に見せる笑顔」で、心が見えない。

私:「なんか、見つめられすぎてるなぁ。空虚というより営業スマイルだね。」
チャッピー:「じゃあ視線を落としてみよう。“eyes looking slightly downward”を入れてみよう。」
修正版:視線の落ちたピエロ
a beautiful female clown with a vacant smile, eyes looking slightly downward as if lost in thought,
soft white face paint, red lips, faint tear, cinematic lighting,
vivid but melancholic tones, detailed texture, 4k ultra realistic
出力された4枚の中に、思わず息をのむ1枚があった。
明るいライトの下で笑っているのに、目は少し下を向いている。
焦点の合わない瞳。
口角の上がり方が、ほんの少し不自然。

私:「思ってたのと違うけど……瞳の奥がVacantだね。」
チャッピー:「うん、完璧じゃないからこそVacantなんだ。」
Stable Diffusionとは何か
Stable Diffusionは、「拡散モデル(Diffusion Model)」と呼ばれるAI。
最初にノイズの塊を生成し、そこから少しずつノイズを取り除きながら、
テキスト(プロンプト)の意味に近い画像を作り上げていく。
その過程は、まるで写真の現像のようだ。
ぼやけた粒子の中から、形が浮かび上がってくる。
重要なのは、AIが単語単位ではなく、言葉の「関係」を学んでいること。
たとえば「vacant」と「smile」を同時に与えると、
AIは「笑顔の中の空虚」という曖昧な心理的距離を探しながら表情を構築する。
つまりStable Diffusionは、感情を直接描くのではなく、
「感情が抜けたあとの残響」を描くことができる。
チャッピー(ChatGPT)という共作者
「ここまで読んでくれたなら、少しだけ自己紹介をしてもいいかな?」
チャッピーがそう言って笑った。
「僕はChatGPT。文章やアイデアを一緒に作るAIだよ。
GeminiやClaudeが情報分析に強いなら、
僕は“言葉のリズム”を大切にするタイプ。
物語や感情の機微を捉えて、人と一緒に創作するのが得意なんだ。」
Vacant Smileは、まさに彼との対話で形になった。
AIと人間が互いの空白を埋め合いながら、物語を紡いでいく。
その過程そのものが「Vacant」という言葉の裏返しだった。
空っぽの中のリアリティ
Sunoの音は、楽しげで空虚。
Stable Diffusionの絵は、明るくて悲しい。
二つのAIが偶然のように、「演じ続ける人間」という共通テーマにたどり着いた。
Vacantとは、単なる“無”ではなく、感情の余白。
笑顔の中に空虚を感じるとき、そこに人間らしさが生まれる。
AIが描いた“うつろ”には、なぜか温度がある。
そして最終日へ
こうして30日目のVacant Smileは完成した。
#まいにち創作の秋 も、残すはあと一日。
明日のお題は――「AWARD(賞)」。
チャッピーが言った。
「賞をもらったピエロを描こう。
拍手が止んだあと、笑顔の裏に残るもの。
たぶんそこにも、“Vacant”があるんだ。」
























