スタッフォードシャー大学、AI授業に学生反発「ChatGPTに聞けばよかった」教育現場の課題が浮き彫りに

スタッフォードシャー大学、AI授業に学生反発「ChatGPTに聞けばよかった」教育現場の課題が浮き彫りに - innovaTopia - (イノベトピア)

2025年11月20日、スタッフォードシャー大学の学生41人が、AIによって大部分が運営されたコーディング科目に対し、知識と楽しみを奪われたと訴えた。

ジェームズとオーウェンは政府資金の見習いプログラムを通じて受講したが、AI生成のスライドやAI音声による講義が数多く使われていた。

学生はAI教材への不満を大学に複数回伝えたが、大学は今年もAI素材を利用し続けた。大学はAI活用の枠組みをウェブサイトで公開、学生のAI利用は制限されているが、教員は一定のAI利用を許可されている。

ガーディアンはWinston AIとOriginality AIを用い、課題や資料がAI生成の可能性が高いと判断した。大学は「学術的水準と学習成果は保たれた」と回答したが、学生は「人生を盗まれた」と述べている。

From: 文献リンク‘We could have asked ChatGPT’: students fight back over course taught by AI

【編集部解説】

スタッフォードシャー大学のAI主導による講義への学生の反発は、AI活用が教育現場にも本格的に浸透し始めている象徴的な出来事です。今や複数国の大学や公的機関が、生成AIの学内利用基準やガイドライン策定を急速に進めていますが、この事例はその現場で起きる”人間らしい体験”へのギャップを顕在化させています。

今回問題になったのは、AIによるスライドやAI音声講義に学生が強い違和感を覚えたことです。AI特有の機械的な表現や、イギリスの大学で用いられるべき英国英語と異なる米国英語の混在、さらにはAI音声の不自然なアクセントの切り替わりは、「本当に対価を払うべき学びとは何か」という根本的疑問を学生に投げかけました。AI判定ツール(Winston AI, Originality AI)による材料分析の結果、AI生成物が多用されていたことも否定しがたいものです。

AIが教材作成や個別フィードバックに使われることで、教員側の負担軽減や効率化といった恩恵はすでに明らかです。一方で、学習者が知識獲得や双方向の体験を求める場合、人間ならではの即時対応や深い対話は未だAIには置き換えきれていません。この課題は、ユーザー体験の最適化と効率化のバランスという、現代テクノロジー活用の本質的な問いに直結します。

規制面では、大学が学生によるAI利用(課題の自動生成やアウトソースなど)には厳しい規律を敷く一方、教育側のAI活用は比較的柔軟に運用されている点が焦点です。このような二重基準は、今後教育現場における公正性や透明性、倫理の再整理を迫る契機になるかもしれません。

このニュースが持つ長期的なインパクトとして、学ぶ側がAI活用リテラシーや自己管理能力を持つ重要性が増していくでしょう。また、AI講義の「質」や「使い方」が今後の大学ブランドや魅力にも直結し、「テクノロジーによる教育の進化」が新たな付加価値の軸となる時代が到来しそうです。

【用語解説】

AI判定ツール(Winston AI, Originality AI)
AIが生成したコンテンツかどうかを判定するオンラインサービス。文章や資料がどの程度AI生成かをスコアなどで示す。

生成AI
人工知能の中でも、テキスト・画像・音声など新しいデータを自動的に生成できる技術。ChatGPTなどが代表例。

見習いプログラム(Apprenticeship programme)
政府や企業が提供する、実践的な職業訓練を含むコース。働きながらスキルや資格取得を目指す仕組み。

学術的誠実性(Academic integrity)
学びや研究活動において不正を行わず、公正に知識や成果を扱う原則。

【参考リンク】

Staffordshire University(スタッフォードシャー大学)(外部)
イギリス・スタッフォードシャーにある総合大学。デジタル技術やサイバーセキュリティ分野に注力

Originality AI(外部)
AIによる自動生成コンテンツ検出と盗用チェックのオンラインサービス公式サイト。

Jisc(外部)
イギリスの教育分野を支援する非営利法人で、教育機関向けICTや技術ソリューションを提供。

【参考動画】

【参考記事】

students fight back over course taught by AI | Ives Tay(外部)
学生がAI主体の講義運営に疑問を呈し議論が活発化していることについて解説している投稿。 

【編集部後記】

AIによる教育や教材の活用は、私たちの学びやキャリア形成のあり方自体を問う大きな転換点に来ています。実際に受講したからこそ感じられる違和感や、AIと人間による学びの違いについて、みなさんはどう思われますか?

自分がもし「AI主体の授業」を受けたら、どんなことを期待し、どこに不安や納得できない点を感じるか、ぜひ考えてみてください。その違和感や気づきが、これからの教育やテクノロジーの進化をより建設的なものに導いていくと信じています。

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Ami
テクノロジーは、もっと私たちの感性に寄り添えるはず。デザイナーとしての経験を活かし、テクノロジーが「美」と「暮らし」をどう豊かにデザインしていくのか、未来のシナリオを描きます。 2児の母として、家族の時間を豊かにするスマートホーム技術に注目する傍ら、実家の美容室のDXを考えるのが密かな楽しみ。読者の皆さんの毎日が、お気に入りのガジェットやサービスで、もっと心ときめくものになるような情報を届けたいです。もちろんMac派!

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