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AI製品評価フレームワーク | Intuitが提案する効果測定の新手法 | 成功するAI開発の鍵

AI製品評価評価フレームワーク | Intuitが提案する効果測定の新手法 | 成功するAI開発の鍵 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-04-28 10:33 by admin

2025年4月27日、IntuitのグループプロダクトマネージャーであるSharanya Rao氏が、VentureBeatにAI製品の効果測定に関する記事「Is your AI product actually working? How to develop the right metric system」を投稿した。

Rao氏は、AI製品の効果を測定するための体系的なフレームワークを提案している。このフレームワークは、製品の影響を評価するための3つの基本的な質問から始まる:

顧客は出力を受け取ったか(カバレッジ指標)
出力生成にかかった時間(レイテンシー指標)
顧客の評価(フィードバック、採用率、維持率指標)

これらの基本質問から、入力指標(先行指標)と出力指標(遅行指標)を特定し、データ収集方法を決定するプロセスを説明している。

記事では、このフレームワークを検索機能やリスティング(DoorDashのメニュー項目やAmazonの商品リスト)の説明生成など、様々なAI製品に適用する例も紹介している。

Rao氏によれば、適切な指標がなければAI製品の成功を判断することは困難であり、チーム間で異なる解釈が生まれる危険性がある。特に大規模言語モデル(LLM)の時代では、テキスト、画像、音楽など多様な出力を生成するAIの性能を評価するための体系的なアプローチが必要だと述べている。

from:Is your AI product actually working? How to develop the right metric system

【編集部解説】

AIプロダクトの効果を正確に測定することは、多くの企業が直面する重要な課題です。IntuitのグループプロダクトマネージャーであるSharanya Rao氏が提案するフレームワークは、この課題に対する実践的なアプローチを提供しています。

このフレームワークの核心は、「何を測定すべきか」という根本的な問いに答えるための体系的な方法にあります。特に注目すべきは、技術チームとビジネスチームの間でしばしば生じる指標の解釈の違いを解消する点です。エンジニアリングチームが「精度」や「リコール」といった技術的指標に注目する一方、ビジネスチームは「顧客満足度」や「収益への貢献」といった指標を重視する傾向があります。

Rao氏のアプローチは、まず基本的な質問を設定し、それに基づいて具体的な指標を設計するというシンプルながらも強力な方法論です。「顧客は出力を受け取ったか」「出力生成にかかった時間」「顧客の評価」という三つの基本軸は、複雑なAIシステムを評価する際の優れた出発点となります。

特に現代のAI開発において重要なのは、大規模言語モデル(LLM)のような複雑なシステムの評価方法です。テキスト、画像、音声など多様な出力を生成するAIの性能を単一の指標で測ることはできません。このような多次元的な評価が必要な時代において、Rao氏のフレームワークは貴重な指針となるでしょう。

また、先行指標と遅行指標を組み合わせることで、問題を早期に発見し、長期的な成功を測定するバランスの取れたアプローチが可能になります。これは、AIプロジェクトの成功率を高めるために不可欠な要素です。

日本企業においても、AIの導入が加速する中で、適切な評価指標の設計は喫緊の課題となっています。特に日本企業では「品質」に対する要求水準が非常に高く、AIシステムにも同様の期待がかけられます。そのため、精度や信頼性に関する指標をより重視する傾向があります。

さらに、日本では経済産業省が2022年に「AI原則実践のためのガバナンス・ガイドライン」を発表し、2023年には「生成AIの利用に関するガイドライン」も公開するなど、AIシステムの評価と監視に関する規制環境も整備されつつあります。企業はこうした規制要件も考慮に入れた評価指標の設計が求められています。

このフレームワークの実践的な価値は、検索機能やコンテンツ生成など、様々なAI製品に適用できる汎用性にあります。例えば、ECサイトの商品推薦システムや顧客サポートチャットボットなど、実用的なAIアプリケーションの評価にも応用可能です。

最近のAI評価トレンドとして注目すべきは「責任あるAI」の概念です。バイアスの検出や公平性、説明可能性といった倫理的側面も指標に組み込む動きが強まっています。特に金融や医療などの規制産業では、こうした側面の評価が不可欠になっています。

AIプロジェクトの成功には、技術的な精度だけでなく、ビジネス目標との整合性や顧客体験の向上といった多面的な評価が必要です。Rao氏のフレームワークは、こうした複雑な要素をバランスよく考慮した評価システムの構築を支援するものといえるでしょう。

【用語解説】

機械学習(ML):
コンピュータがデータから学習し、パターンを見つけ出し、予測や判断を行う技術。人間が明示的にプログラミングしなくても、データから自動的に学習するシステムを指す。

大規模言語モデル(LLM):
膨大なテキストデータで学習した人工知能モデルで、テキスト生成や理解を行う。ChatGPTやGemini、Claude、Llama 2などがこれにあたる。

精度(Precision):
AIが「正しい」と判断したもののうち、実際に正しかった割合。例えば、スパムメール検出で「スパムだ」と判断したメールのうち、実際にスパムだった割合。

リコール(Recall):
実際に正しいもののうち、AIが正しいと判断できた割合。例えば、実際のスパムメールのうち、AIがスパムと検出できた割合。

カバレッジ:
AIシステムが対応できる範囲や割合。例えば、検索システムで検索クエリに対して結果を返せた割合。

レイテンシー:
システムが処理を完了するまでの時間。応答速度とも言える。ユーザー体験に直結する重要な指標。

【参考リンク】

Intuit(インテュイット)(外部)
金融管理、コンプライアンス、マーケティング製品・サービスを提供する金融テクノロジー企業

Intuit Assist(外部)
Intuitが開発した生成AI搭載のアシスタント。パーソナライズされた推奨事項を提供

【参考動画】

【編集部後記】

皆さん、AIプロダクトを開発・導入されている方は、「本当に効果が出ているのか」という疑問を持ったことはありませんか?技術指標とビジネス指標の橋渡しは、多くの組織で課題となっています。あなたの組織ではどのような評価指標を使っていますか?「カバレッジ」「レイテンシー」「ユーザー評価」という基本軸を起点に、自社のAIプロダクトを見直してみると、新たな気づきがあるかもしれません。ぜひSNSで皆さんの経験や工夫を共有していただけると嬉しいです。

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TaTsu
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