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ーTech for Human Evolutionー

NTT開発の雷制御ドローン技術が世界初成功 – 自然災害対策の新時代へ

NTT開発の雷制御ドローン技術が世界初成功 - 自然災害対策の新時代へ - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-04-28 10:22 by admin

日本電信電話株式会社(NTT)は2025年4月18日、ドローンを使用した雷の誘発・誘導実験に世界で初めて成功したと発表した。この実験では、ドローンの耐雷化技術および電界変動を利用した雷誘発技術の有効性を実際の雷で実証した。

実験概要
実験は2024年12月から2025年1月の期間、島根県浜田市山間部の標高900m地点で実施された。フィールドミルと呼ばれる装置で地上電界を観測し、雷雲の接近に伴い電界強度が高くなったタイミングで、独自の耐雷ケージを具備したドローンを高度300mまで飛行させた。

2024年12月13日の雷雲接近時、地上に設置したスイッチでドローンと地上を導電性ワイヤーで導通させた結果、ワイヤーに大電流が流れ、周囲の電界強度が大きく変化した。雷誘発の直前にはワイヤーと地面の間に2000V以上の電圧が生じており、急激にドローン周囲の電界強度を変化させたことで、ドローンに雷が誘発された。

誘雷と同時に破裂音、ウインチ部の発光、ドローンの耐雷ケージの一部溶断が発生したものの、ドローン自体は安定飛行を続けた。

技術的特徴
ドローンの耐雷化技術

ドローンには雷が直撃しても誤作動・故障しない耐雷ケージが装備されている。この金属製シールドは、雷直撃時の大電流をドローン本体から迂回させ、雷電流を放射状に流すことで大電流により発生する強磁界を互いに打ち消し合い、ドローンへの磁界影響を低下させる仕組みになっている。

人工雷の印加試験では、自然落雷の98%以上をカバーし、自然落雷の平均値の5倍に相当する150kAの人工雷を印加した場合でも、ドローンに故障や誤作動が発生しないことが確認された。

背景と今後の展望
日本では落雷による被害額が国内だけでも毎年1000億円から2000億円と推定されている。従来の雷対策は避雷針を用いる手法が広く使われているが、避雷針によって雷を受ける範囲は限定的であり、風力発電の風車や屋外のイベント会場など避雷針の設置が困難なケースも存在する。

NTTは今後、ドローン誘雷の成功率を上げるために、高精度な発雷位置予測や雷の発生メカニズムの研究開発を推進するとともに、誘雷した雷のエネルギーを蓄積・活用するための研究開発にも着手する予定である。

この技術は、未だ解明されていない雷の発生に関する研究に寄与するとともに、街や人への雷被害の低減に貢献することが期待されている。

from:Japan Has Successfully Used Drones to Trigger and Guide Lightning Strikes — Announcing a New Era of Storm Control

【編集部解説】

NTTが開発した雷誘発・誘導ドローン技術は、自然災害対策の新たな地平を切り開く革新的な取り組みです。今回の実験成功は、これまで人類が「受け身」でしか対処できなかった雷という自然現象に対して、積極的に制御する可能性を示した画期的な出来事といえるでしょう。

この技術の核心は、特殊な保護ケージを装備したドローンと、地上との間に張られた導電性ワイヤーによる電界変動の利用にあります。NTTの公式発表によれば、このドローンシステムは雷を「誘発」するだけでなく、「誘導」する能力も持っています。これは単に雷から身を守るだけでなく、雷の落ちる場所をコントロールできることを意味しています。

実験に使用されたドローンには特殊な金属製ケージが装備されています。このケージは、最大150kAという自然落雷の平均値の5倍もの電流に耐える設計になっており、雷撃を受けても内部のドローン本体を守ることができます。

興味深いのは、このケージが単に電流を遮断するだけでなく、電流を「放射状に分散」させる設計になっている点です。これにより、大電流によって発生する強力な磁界が互いに打ち消し合い、ドローン内部の電子機器への干渉を最小限に抑えることができます。

社会実装への課題と可能性
この技術の社会実装には、いくつかの課題があります。まず規制面では、雷雨時の空域管理はすでに安全上の理由から制限されており、ドローン群を運用するには新たな航空管理プロトコルが必要になるでしょう。日本の航空局はまだこのような特殊な用途に対する規制を整備していません。

また、市場性はコストと拡張性にかかっています。NTTのケージは市販のドローンに後付けできるため参入障壁は低いものの、大規模な運用にはインフラ、トレーニング、メンテナンスへの大きな投資が必要です。

一方で、この技術がもたらす可能性は計り知れません。日本だけでも年間1000億円から2000億円の雷被害が発生していると言われており、この技術が実用化されれば経済的損失を大幅に削減できる可能性があります。

特に、従来の避雷針では保護が難しかった風力タービンや屋外イベント会場などの保護に大きな効果を発揮するでしょう。NTTはこの技術を活用して「重要なインフラや都市部への雷撃を完全に防ぐ」というビジョンを掲げています。

エネルギー捕捉への展望
NTTの研究チームは、単に雷から保護するだけでなく、将来的には雷のエネルギーを捕捉して活用することも視野に入れています。雷は膨大なエネルギーを持っており、これを安全に捕捉・貯蔵できれば、新たな再生可能エネルギー源となる可能性があります。

NTTのチームは「雷のエネルギーを収集し、将来の使用のために貯蔵する」技術の開発を目指しているとのことです。具体的な方法についてはまだ詳細が公表されていませんが、これが実現すれば、自然災害から身を守るだけでなく、その力を人類の利益のために活用するという、まさに「Tech for Human Evolution」の理念に沿った技術革新となるでしょう。

科学的意義と今後の展望
この実験成功は科学的にも大きな意義を持ちます。雷の発生メカニズムはまだ完全には解明されていない部分があり、NTTの技術は「雷の発生に関する研究に寄与する」可能性があります。

これまで人類は雷に対して受け身の対策しか取れませんでしたが、NTTの技術はその関係性を根本から変える可能性を秘めています。

今後NTTは、ドローン誘雷の成功率を高めるために、高精度な雷発生位置予測技術や雷の発生メカニズムの研究開発を進めていくとのことです。また、誘発した雷のエネルギーを捕捉・活用する技術の開発も進めていくでしょう。

テクノロジーによって自然の脅威をコントロールし、さらにはその力を活用するという、まさに人類の進化を促進する技術革新。NTTの雷制御ドローン技術は、私たちの未来を大きく変える可能性を秘めています。

【用語解説】

フィールドミル(Field Mill)
雷雲の接近に伴う大気中の電界強度を測定する装置。地上に設置され、雷発生の可能性を事前に検知するために使用される。

ファラデーケージ(Faraday Cage)
金属製の網や箱状の構造物で、外部からの電磁波や電流を遮断する効果がある。金魚すくいのポイのような金属網で覆うことで、雷が直撃しても内部の機器を保護する仕組み。

導電性ワイヤー
電気を通す性質を持つワイヤー。ドローンと地上を繋ぎ、雷の電流を安全に地上へ導く役割を果たす。

電界強度
空間内の電場の強さを表す物理量。単位はV/m(ボルト/メートル)。雷雲が近づくと地上の電界強度が高まる。

kA(キロアンペア)
電流の大きさを表す単位。1kAは1,000アンペア。一般的な家庭用コンセントが15〜20アンペア程度であるのに対し、雷は数十kAの電流が流れる。

【参考リンク】

NTT公式ウェブサイト(外部)
日本を代表する通信事業者。通信インフラの保守・運用で培った技術を活かし、雷対策技術の研究開発を行っている。

【参考動画】

【編集部後記】

雷を操るドローン技術、皆さんはどう思われますか?自然災害から身を守るための技術革新は、私たちの生活をどう変えていくのでしょうか。もし雷のエネルギーを実際に捕捉・活用できるようになれば、新たなエネルギー源として期待できるかもしれません。身近な場所での雷被害の経験や、この技術に期待することなど、ぜひコメント欄でお聞かせください。テクノロジーと自然の関係性が変わりつつある今、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

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TaTsu
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