日本発AIライブ翻訳「CoeFont通訳」、韓国語・ベトナム語追加で多言語対応を強化

 - innovaTopia - (イノベトピア)

言語の壁を越えたコミュニケーションは、グローバル化が進む現代社会における重要な課題である。特にアジア圏では、ビジネス、観光、教育の各分野で多言語対応の需要が急速に高まっている。

株式会社CoeFontは、AIライブ翻訳サービス「CoeFont通訳」のPC版とiOS版で、韓国語とベトナム語の通訳機能をリリースした。これにより同サービスの対応言語は英語、中国語、フランス語、スペイン語を含む全7言語となった。

リアルタイムでの音声翻訳と字幕表示に対応し、双方向通訳が可能である。ベトナム語および韓国語の発音特性に合わせたAIモデル最適化を実施し、自然な会話テンポでの通訳体験を提供する。

サービスは無料で利用でき、有料プランに登録することで利用時間を追加できる。株式会社CoeFontは2020年設立の東京科学大学認定ベンチャーで、本社は東京都港区、代表取締役は早川尚吾である。

From: 文献リンク日本発のAIライブ翻訳サービス「CoeFont通訳」、PC・iOS版で新たに韓国語・ベトナム語に対応

【編集部解説】

株式会社CoeFontが提供するAIライブ翻訳サービス「CoeFont通訳」に、韓国語とベトナム語が新たに追加されました。この動きは、単なる言語追加にとどまらず、急成長するアジア圏のビジネス環境における言語障壁の解消という、より大きな文脈の中で理解する必要があります。

AI翻訳市場は今、かつてない速度で拡大しています。市場調査によれば、AI言語翻訳市場は2025年に約29.4億ドル規模に達し、2033年には135億ドルへと成長する見込みです。特にリアルタイム翻訳の分野は、年率22%を超える成長率を記録しており、ビジネスシーンでの需要が急速に高まっています。

今回のアップデートで特に注目すべきは、韓国語とベトナム語という2つの言語の追加です。この選択には明確な戦略的意図があります。ベトナムには現在、韓国企業約9,000社日本企業約2,500社が進出しており、韓国はベトナムへの外国直接投資額で第2位を占めています。サムスン電子やLG電子といった大手企業がベトナム北部に大規模な生産拠点を構え、それに伴う日韓ベトナム間の三角ビジネスが活発化しているのです。

こうした環境下で、日本語⇔韓国語、日本語⇔ベトナム語の双方向通訳が可能になったことの意義は大きいと言えます。従来、多言語での国際会議やビジネスミーティングでは、プロの通訳者を複数名配置する必要があり、その費用は莫大なものでした。通訳者は高い集中力を要するため10分程度で交代が必要となり、結果的に複数名体制でのアサインが不可欠だったのです。

CoeFont通訳は、こうした課題に対する解決策を提示しています。発音特性に合わせたAIモデルの最適化により、自然な会話テンポでの通訳体験を実現。基本機能は無料で利用でき、有料プランで利用時間を追加できるという柔軟な料金体系も、中小企業やスタートアップにとって魅力的です。

競合環境を見ると、Google MeetやMicrosoft Translator、Notta、オンヤクといった既存プレイヤーが市場に存在します。しかし、CoeFontの強みは、音声合成技術における深い専門性にあります。同社は2020年に東京工業大学認定ベンチャーとして設立され、2024年10月の統合後は東京科学大学認定ベンチャーとなっています。10,000種類以上のAI音声を提供するプラットフォーム「CoeFont」を運営しており、音声品質において高い評価を得ています。この技術基盤が、通訳サービスの品質向上にも寄与していると考えられます。

ただし、AI翻訳にも限界はあります。法律文書や創造的なコンテンツ、感情的にデリケートな内容など、文脈や微妙なニュアンスが重要な場面では、依然として人間の専門家による介入が必要です。実際、AI翻訳業界のトレンドとして「AIアシスト型の人間翻訳」が注目されており、AIが粗訳を生成し、人間の専門家が最終的な品質管理を行うハイブリッドモデルが主流になりつつあります。

長期的な視点で見ると、この動きは日本企業のグローバル展開を加速させる可能性を秘めています。言語の壁が低くなることで、これまで参入が困難だった市場への進出が容易になり、ベトナムや韓国との協業機会が増加するでしょう。特に、ベトナム市場は若く消費意欲が旺盛な人口構成を持ち、今後さらなる成長が見込まれています。

技術面では、今後さらなる進化が期待されます。音声クローニング技術を用いた感情保存、専門用語への対応強化、低リソース言語への拡大など、AI翻訳技術は日々進化を続けています。CoeFontがこうした技術革新にどう対応していくかが、今後の競争力を左右するでしょう。

【用語解説】

リアルタイム翻訳
音声認識、機械翻訳、音声合成という3つの技術を組み合わせて、話者の発言を即座に別の言語に翻訳する技術である。会議や商談など、双方向のコミュニケーションが求められる場面で活用される。従来のテキスト入力型翻訳と異なり、発話から翻訳までの遅延が1秒以下という超高速処理が特徴だ。

東京科学大学
2024年10月に東京工業大学と東京医科歯科大学が統合して設立された国立大学である。株式会社CoeFontは2020年に東京工業大学認定ベンチャーとして設立され、統合後は東京科学大学認定ベンチャーとなっている。

Text-To-Speech (TTS)
テキストを音声に変換する技術である。AI技術の進化により、より自然で表現力豊かな音声生成が可能になった。CoeFontのコア技術の一つで、10,000種類以上のAI音声を提供している。

Voice Hub
CoeFontが提供するAI音声のマーケットプレイスである。声優、アナウンサー、著名人など多様な音声が登録されており、ユーザーは用途に応じて最適な音声を選択できる。声の作成者は、自分の音声が利用されるたびに収益の70%を得ることができる。

双方向通訳
2つの言語間で相互に翻訳を行う機能である。今回のアップデートで実現した日本語⇔韓国語、日本語⇔ベトナム語の双方向通訳により、日本人とベトナム人、または日本人と韓国人が、それぞれの母国語で会話できるようになった。

【参考リンク】

CoeFont公式サイト(外部)
AI音声プラットフォーム「CoeFont」の公式サイト。Text-To-Speech、Voice Changer、リアルタイム通訳など多様な音声サービスを提供

CoeFont通訳サービスページ(外部)
AIライブ翻訳サービス「CoeFont通訳」の詳細ページ。対応言語や利用方法、料金プランなどの情報を掲載

CoeFont通訳 iOS版(外部)
App Storeでダウンロード可能なCoeFont通訳のiOSアプリ。スマートフォンやタブレットで手軽に利用できる

【参考記事】

AI in Language Translation Market Size | CAGR of 22.3%(外部)
AI言語翻訳市場は2023年の18億ドルから2033年には135億ドルに成長すると予測される

AI Speech Translation in 2025 & Beyond: Data & Trends – KUDO(外部)
2025年にAI音声翻訳市場が18億ドルに達すると予測。音声クローニング市場は42%の成長率で拡大

韓国企業、ベトナムに根付く | ジェトロ(外部)
ベトナムには韓国企業約9,000社が進出し、韓国はベトナムへの外国直接投資累計額で第1位

第三国での日韓産業協力を探る(2)ベトナムにおける日韓産業協力 | ジェトロ(外部)
ベトナムにおける日韓企業の産業協力事例を紹介。サムスン電子やLG電子が大規模な生産拠点を運営

How AI Is Changing the Translation Service Industry in 2025(外部)
AI翻訳市場は2025年に29.4億ドルに達すると予測。リアルタイムAI翻訳が標準機能となっている

【編集部後記】

言語の壁が、ビジネスの可能性を狭めていると感じたことはありませんか。韓国やベトナムとの協業機会が目の前にあるのに、通訳コストや手配の煩雑さから躊躇してしまう。そんな経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

AI翻訳技術の進化は、私たちに新しい選択肢を与えてくれています。完璧ではないかもしれませんが、日常的なコミュニケーションのハードルを大きく下げてくれるツールとして、試してみる価値は十分にあるでしょう。みなさんのビジネスシーンで、どのような場面でAI翻訳が活躍できそうでしょうか。一緒に、その可能性を探っていきたいですね。

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Satsuki
テクノロジーと民主主義、自由、人権の交差点で記事を執筆しています。 データドリブンな分析が信条。具体的な数字と事実で、技術の影響を可視化します。 しかし、データだけでは語りません。技術開発者の倫理的ジレンマ、被害者の痛み、政策決定者の責任——それぞれの立場への想像力を持ちながら、常に「人間の尊厳」を軸に据えて執筆しています。 日々勉強中です。謙虚に学び続けながら、あなたと一緒に、テクノロジーと人間の共進化の道を探っていきたいと思います。

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