AIVy株式会社は、Web対話接客AIアバター「ピタリー」に、2025年9月に「FAQ自動生成機能」、10月に「ボイスモード」を搭載した。
同社は東京都港区に所在し、代表取締役は村上卓斗である。これらの新機能は、コールセンターの夜間対応や長時間待機、カスタマーハラスメント対応といった課題の解決を支援する。FAQ自動生成機能は、ユーザーとの対話を自動的に蓄積・整理してFAQを生成し、コールセンタースタッフが管理画面から過去の回答や関連情報を検索・入力できる。ボイスモードは音声での対話に対応し、夜間や混雑時にAIが一次対応することで待ち時間削減と顧客体験向上を実現する。
想定利用シーンは、契約・手続き・注文・配送・予約などのよくある質問への自動回答である。15万円以上のプランでは標準機能として利用可能となる。
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アバター付きAIチャット『ピタリー』がFAQ自動生成機能とボイスモードを提供開始
【編集部解説】
今回のピタリーの機能拡張は、単なる製品アップデートではなく、日本社会が直面する深刻な課題への応答として捉える必要があります。カスタマーハラスメント、いわゆる「カスハラ」は2025年4月に東京都でカスハラ防止条例が施行されたことからもわかるように、もはや個別企業だけでは解決できない社会問題となっています。電話代行サービス企業の調査では、オペレーターの98%が大声や暴言を経験し、約9割が精神的ストレスを感じているという実態が明らかになっています。
こうした環境で注目すべきは、AIVyが選択した「音声対話」という方向性です。日本のチャットボット市場は2024年に4億1400万ドル規模に達し、2033年までに20億ドルを超えると予測されていますが、従来のテキストベースのチャットボットには限界がありました。AIVy社が開発背景として挙げるように、特に30代以上の顧客層からは「声で話したい」「入力は面倒」という要望が根強く、テキスト入力に不慣れな層や、複雑な問い合わせに対しては音声の方が圧倒的に効率的だからです。

技術的観点から見ると、FAQ自動生成機能は単なる対話履歴の保存ではなく、ナレッジベースの自律的な構築を意味します。これまで人間が手動で整理していたFAQが、対話を通じて自動的に蓄積・更新される仕組みは、企業の学習曲線を劇的に短縮するでしょう。コールセンタースタッフが管理画面から過去の回答を瞬時に検索できる機能は、ベテランと新人の知識格差を埋める効果も期待できます。

一方で、AIによる一次対応の普及には慎重な視点も必要です。音声解析技術を用いたカスハラ検知システムについて、導入企業の65.7%が「効果的」と回答している一方、感情分析の精度や文化的なニュアンスの理解には依然として課題が残ります。日本特有の「おもてなし」文化とAIの効率性をどう両立させるか、これは技術的な問題というより、社会が新しい顧客体験をどう定義するかという問いでもあります。
長期的には、この技術は労働市場にも影響を与えるでしょう。音声AIによって定型的な問い合わせ対応が自動化されれば、オペレーターは複雑な案件や感情的なケアが必要な対応に集中できるようになります。音声AI導入事例では通話処理時間が35%短縮され、顧客満足度が30%向上したケースも報告されています。これはAIが人間の仕事を奪うのではなく、人間がより人間らしい業務に専念できる環境を作る、という可能性を示唆しています。
15万円以上のプランで標準機能として提供されるという価格設定も興味深い点です。中小企業にとってはまだハードルが高いかもしれませんが、大規模コンタクトセンターを運営する企業にとっては、人件費や離職率の削減効果を考えれば十分にROIが見込める水準でしょう。
【用語解説】
カスタマーハラスメント(カスハラ)
顧客が従業員に対して行う、理不尽な要求や過度なクレーム、暴言などの迷惑行為を指す。コールセンターや接客業の現場で深刻な社会問題となっており、2025年4月には東京都でカスハラ防止条例が施行された。
自然言語処理(NLP)
人間が日常的に使う言葉をコンピュータに理解・処理させる技術である。FAQ自動生成では、問い合わせ内容の意図を解析し、適切な回答を生成するために活用される。
【参考リンク】
AIVy株式会社 公式サイト(外部)
「AIで個々の『世界』を広げる」をミッションに各種AIサービスを展開。東京都港区に本社を置く企業の公式ウェブサイト。
ピタリー(PITALIy)サービスページ(外部)
問い合わせ対応とリード獲得を同時に行うAIアバターサービスの公式ページ。24時間365日の自動対応機能などの詳細を確認できる。
【参考動画】
【参考記事】
Call Centers Using AI to Address Customer Harassment(外部)
日本のコールセンターにおけるカスハラ対策としてAI技術がどのように活用されているかを報じる記事。
30+ Voice AI Stats for 2025(外部)
音声AI技術に関する2025年の統計データを収録。通話処理時間が35%短縮された事例などが紹介されている。
コールセンターのカスハラ対策、その実態は?(外部)
オペレーターの98%が大声や暴言を経験し、約9割が精神的ストレスを感じているという実態調査結果。
Japan Chatbot Market Insights 2025(外部)
日本のチャットボット市場が2024年に4億1400万ドル規模に達し、2033年までに20億ドル超と予測。
【編集部後記】
カスハラという言葉が社会に広がり、実際に条例が施行される時代になりました。私自身、親として、また一人の消費者として考えるのは、AIと人間がどう協働すべきかという問いです。
皆さんの職場では、もしくは顧客として企業に問い合わせる時、どんな体験を望みますか?効率化は必要ですが、それでも人間らしい温かさは失いたくない。この微妙なバランスをどう実現するか、テクノロジーの進化と共に、私たちも一緒に考えていけたらと思います。























