Googleは2025年10月29日、NotebookLMに複数のアップグレードを実施したと発表した。
最大の変更点は、ユーザーがチャット機能に対して特定の役割、声、目標を設定できるカスタマイズ機能の追加である。ユーザーはチャット機能の設定アイコンから、チャットボットの振る舞いを指定できる。例として、博士課程の学生として扱い掘り下げた質問をするよう依頼したり、3つの異なる視点から情報を分析させたりすることが可能だ。設定は会話の間保持される。

また、処理能力も拡張され、Geminiの100万トークンのコンテキストウィンドウがすべてのプランで利用可能になった。マルチターン会話の容量は以前の6倍以上に向上した。さらに、チャット履歴の保存機能も追加され、セッションを閉じても履歴を保持できる。共有ノートブックでは各ユーザーのチャット履歴は本人のみが閲覧可能である。
これらの機能はサブスクリプションに関係なく、来週から全ユーザーに展開される。
From:
You can now give NotebookLM more instructions – here’s why that’s a game changer
【編集部解説】
今回のNotebookLMアップデートは、GoogleのAI研究ツールが単なる情報整理ツールから、ユーザーと長期的な対話を重ねる「思考のパートナー」へと進化したことを示しています。
最も注目すべきは、コンテキストウィンドウの拡張です。一部報道では従来比8倍とされる100万トークンは約75万語に相当し、長編小説や大規模なプロジェクト資料を一度に読み込んで分析できる容量となります。この技術的進化により、ChatGPTやClaudeといった汎用AIチャットボットとは異なる、文献に基づいた信頼性の高い研究支援という独自のポジションを確立しつつあります。
カスタマイズ機能「Goals」の導入は、AIとの対話における新たな可能性を開きました。従来のNotebookLMは有用ながらも画一的な応答スタイルで、ユーザーの意図に沿わない冗長な回答が課題でした。新機能では、博士課程の指導教員として厳しく問いかける役割や、マーケティング戦略家として即座に行動計画を提示する役割など、ユーザーが求める文脈に応じてAIの振る舞いを定義できます。
技術面では、マルチターン会話の容量が6倍以上に向上したことで、長時間の議論でも文脈を保持し続けられるようになりました。これは研究者や戦略コンサルタントなど、複雑な思考プロセスを伴う作業において重要な改善です。Googleの内部テストでは、大規模なソースからの応答に対するユーザー満足度が50%向上したとされています。
チャット履歴の自動保存機能も見逃せません。以前はセッションを閉じると会話が消えてしまい、長期プロジェクトでの継続利用に支障がありました。新機能では会話が自動保存され、共有ノートブックでも各ユーザーの履歴はプライベートに保たれます。
これらの機能が無料プランを含むすべてのユーザーに提供される点は特筆に値します。企業向けのNotebookLM Plusでは、今後さらに高度な機能の追加が予定されていますが、基本的な強化は全ユーザーが享受できます。
一方で、AIが特定の役割を演じることで生じる潜在的なリスクにも注意が必要です。ユーザーが設定した役割に過度に適合しようとするあまり、客観性を欠いた応答や、確証バイアスを強化する可能性があります。研究ツールとして使用する際は、批判的思考を保持し、複数の視点から検証する姿勢が求められます。
【用語解説】
NotebookLM
Googleが開発したAI搭載の研究・ノート作成ツールである。大規模言語モデルGeminiを基盤とし、ユーザーがアップロードした文書をもとに要約、分析、質疑応答を行う。
マルチターン会話
ユーザーとAIが複数回にわたってやり取りを重ねる形式の対話である。前の発言内容を記憶し、文脈を保持しながら継続的に会話できる能力を指す。
【参考リンク】
NotebookLM公式サイト(外部)
Googleが提供するAI搭載研究・ノート作成ツールの公式サイト。Googleアカウントで無料利用可能
Google Labs公式ブログ – NotebookLMアップデート告知(外部)
2025年10月28日公開の公式ブログ。チャットカスタマイズ機能など今回のアップデート内容を詳説
NotebookLM Enterprise(企業向け)(外部)
Google Cloudの企業向けNotebookLM情報ページ。セキュリティやチーム共同作業機能を紹介
Google Gemini公式サイト(外部)
NotebookLMの基盤技術Gemini AIの公式サイト。各種モデル情報やAPI、開発者ツールへアクセス可能
【参考動画】
【参考記事】
Chat in NotebookLM: A powerful, goal-focused AI research partner(外部)
Google Labs公式ブログによる今回のアップデート詳細記事。ユーザー満足度50%向上などの内部テスト結果を報告
Google Supercharges NotebookLM with 8x Context Window & Custom Chat Goals(外部)
コンテキストウィンドウ8倍拡張を中心に解説。マルチターン会話容量の6倍以上向上についても詳述
NotebookLM just got a major chat upgrade with 8x more context, better memory and smarter responses(外部)
TechRadarによる技術分析。100万トークンが約75万語に相当することなど具体的な数値を提示
Google NotebookLM adds custom chat roles and 1M token upgrade(外部)
カスタムチャット機能と100万トークンアップグレードに焦点。無料プランでの機能提供についても報告
【編集部後記】
NotebookLMは無料で始められるツールです。研究論文の整理、会議資料の要約、学習ノートの作成など、皆さんそれぞれの使い方があるはずです。今回のアップデートで、チャットに「博士課程の指導教員のように厳しく問いかけて」と指示すれば、自分の論理の穴を見つけてくれるパートナーになります。
あるいは「3つの異なる視点で分析して」と依頼すれば、思いもよらない切り口が得られるかもしれません。皆さんなら、このカスタマイズ機能をどんな場面で活用したいですか?新しいAIとの対話の可能性を、一緒に探っていけたら嬉しいです。
























