Last Updated on 2024-09-29 08:46 by admin
マカオ政府観光局、世界観光デーに合わせてAIチャットボットを発表
マカオ政府観光局(MGTO)は、2024年9月27日に世界観光デーを記念して一連のイベントを開催しました。主なイベントは以下の通りです:
- マカオ国際空港でインドネシア出身のサミトン・パンゲラ氏とその家族を「今年のラッキー観光客」として歓迎しました。
- 「マカオ特別行政区2024年世界観光デー設立25周年トレイレース」を開催。34軒のホテルやレストランから225人が参加し、スタジオ シティ ホテルのウー カイユアン氏が男子部門で、ザ ロンドナー マカオのデン リンジー氏が女子部門で優勝しました。
- 18体のマスコットが参加する「マスコットファンラン」を初開催。MGTOのマスコット「MAK MAK」が優勝しました。
- マカオ観光AIチャットボットを発表。CTMとBaiduと共同開発し、BaiduのErnie言語モデルを使用。英語、中国語、韓国語、タイ語に対応し、MGTOのウェブサイトとモバイルアプリ「Experience Macao」で利用可能です。
- マカオの観光案内所で来訪者に記念品を配布しました。
これらのイベントは、マカオ特別行政区設立25周年と世界観光デーのテーマ「観光と平和」を祝福するものでした。
【編集部解説】
マカオ政府観光局(MGTO)が世界観光デーに合わせて発表したAIチャットボットは、観光産業におけるテクノロジー活用の新たな一歩として注目に値します。このAIチャットボットは、中国のIT大手Baiduの大規模言語モデル「Ernie」を基盤としており、最新のAI技術を観光分野に応用した事例といえるでしょう。
このチャットボットの特筆すべき点は、多言語対応と幅広い情報提供能力です。英語、中国語(繁体字・簡体字)、韓国語、タイ語に対応し、今後さらに言語を拡大する予定とのことです。これにより、より多くの国際観光客に対してきめ細かいサービスを提供できるようになります。
提供される情報の範囲も広く、マカオの歴史や文化、観光スポット、エンターテイメント、ショッピング、ホテル、レストラン、天気、観光ルート、入出国情報など多岐にわたります。これは、単なる観光案内にとどまらず、マカオの総合的な情報ハブとしての機能を果たすことを意味しています。
AIチャットボットの導入は、マカオの観光産業にいくつかの重要な影響をもたらすと考えられます。まず、24時間365日対応可能なAIによって、観光客の利便性が大幅に向上するでしょう。時差や言語の壁を越えて、いつでも必要な情報にアクセスできるようになります。
また、このシステムは観光客の行動パターンや興味関心を分析することで、マカオの観光政策立案にも貢献する可能性があります。収集されたデータを適切に分析することで、より効果的なマーケティング戦略や観光資源の開発につながるかもしれません。
一方で、AIの活用には潜在的なリスクも存在します。個人情報の取り扱いや、AIが提供する情報の正確性の担保などは、常に注意を払う必要があるでしょう。また、AIへの過度の依存は、人間のガイドやスタッフとの直接的なコミュニケーションの機会を減少させる可能性もあります。
長期的な視点では、このようなAI技術の導入は、観光産業全体のデジタル化を加速させる可能性があります。マカオのような先進的な取り組みは、他の観光地にも波及し、グローバルな観光のあり方を変える可能性を秘めています。
今後は、AIと人間のスタッフがどのように協働し、より質の高い観光体験を提供できるかが重要なポイントとなるでしょう。テクノロジーの進化と人間ならではのホスピタリティのバランスを取ることが、これからの観光産業の課題となりそうです。
【用語解説】
【Baiduの「Ernie」について編集部解説】
Baiduの「Ernie」(Enhanced Representation through Knowledge Integration)は、中国の検索大手Baiduが開発した大規模言語モデルおよびAIチャットボットサービスです。2019年から開発が進められ、2023年3月に初めて一般向けにリリースされました。
最新版のErnie 4.0は2023年10月に発表され、Baiduの李彦宏CEOは「全ての点でOpenAIのGPT-4に匹敵する性能を持つ」と主張しています。Ernie 4.0では、理解・生成・推論・記憶の4つの能力が大幅に向上し、複雑な質問への回答、画像生成、基本的な算術処理などの機能が改善されました。
Ernieの特徴として、中国語の処理能力に優れていることが挙げられます。また、Baiduの検索エンジンと連携した「Baidu Search」プラグインや、長文要約とQ&Aを可能にする「ChatFile」プラグインなど、独自の機能拡張も行われています。
Baiduは2023年11月からErnie 4.0を利用した有料サービスを開始し、月額59.9元(約1200円)で提供しています。一方、Ernie 3.5は引き続き無料で利用可能です。
Ernieは中国政府の厳格な規制下にあり、センシティブな話題に関する質問には回答を拒否するなど、一定の制限が設けられています。しかし、2024年6月時点で3億人のユーザーを獲得するなど、中国国内での普及は着実に進んでいます。
Ernieの開発は、中国のAI技術力の向上を示すとともに、グローバルなAI開発競争における中国の存在感を高めています。今後、さらなる機能拡張や多言語対応の強化が期待されています。