ITコミュニティのSpiceworksが北米および欧州の500を超える組織を対象に実施した調査によると、回答者の4人に1人がクラウドストレージのセキュリティに確信を持てないと答えた。
クラウドストレージサービスの使用状況では、OneDriveが51%で最も高く、Google DriveとDropboxがともに34%、Apple iCloud Driveが13%、Boxが6%だった。
企業規模別では大企業のOneDrive使用率が59%に対し、Google Driveが29%、Dropboxが25%となった。中小企業ではOneDriveが47%、Google Driveが39%、Dropboxが34%だった。
購入プロセスにおいて97%がセキュリティを重要もしくは極めて重要と回答し、信頼性が96%、コストが93%、使いやすさが93%、ベンダーの評判が89%と続いた。
一方で25%がクラウド上のデータが全くもしくはやや安全ではないと回答した。57%の組織が従業員にクラウドストレージやファイル共有サービスの使用のみを許可し、自由使用を認めるのは19%だった。
シャドーITについては2016年の78%から現在54%に減少している。GoogleはGoogle Oneで月額9.99ドルで2TBを提供し、Microsoftの同価格1TBを下回る価格設定を行った。
From: Concern over cloud storage security remains says Spiceworks
【編集部解説】
今回のSpiceworks調査が示すのは、クラウドストレージ市場における興味深い矛盾です。利用者の97%がセキュリティを重要視しながらも、4人に1人が実際のセキュリティに不安を感じているという現実は、テクノロジー業界全体が直面する「利便性と安全性のジレンマ」を浮き彫りにしています。
注目すべきは、OneDriveが51%という圧倒的なシェアを獲得している背景です。この数値は単なる製品力の差ではなく、Microsoftのエコシステム戦略の成果と言えるでしょう。Office 365との統合により、企業は追加コストを抑えながらクラウドストレージを導入できる構造が、市場を大きく変えました。
一方で、GoogleがGoogle Oneで展開している価格戦略も見逃せません。月額9.99ドルで2TBを提供する姿勢は、Microsoftの同価格1TBに対する明確な挑戦状です。ただし、価格競争だけでは勝負が決まらないことを、OneDriveの市場シェア拡大が証明しています。
シャドーITの減少傾向(2016年の78%から現在54%へ)も重要な変化です。これは企業のガバナンス強化の表れですが、完全な統制には程遠い状況も浮き彫りになります。従業員の54%が依然として未承認でDropboxを使用している現実は、IT部門にとって継続的な課題となっています。
このトレンドが示すのは、独立系プロバイダーの苦境です。DropboxやBoxといった先駆者たちは、Microsoft、Googleという巨人のバンドル戦略に対抗するため、ニッチ市場での差別化やイノベーションを迫られています。特に企業市場では、統合性とコストパフォーマンスを重視する傾向が強まり、単体サービスでの競争は厳しさを増しています。
長期的な視点で見ると、この調査結果はクラウドインフラ全体の成熟度を反映しています。セキュリティへの懸念は残るものの、企業のクラウドファーストな姿勢は不可逆的な流れとなっており、今後は「どのクラウドを選ぶか」から「どう安全に活用するか」へと議論の軸が移行していくでしょう。
【用語解説】
シャドーIT:企業のIT部門の承認や管理を受けずに従業員が個人的に使用するクラウドサービスやアプリケーションのこと。セキュリティリスクやコンプライアンス違反の原因となる可能性がある。
エコシステム戦略:単体サービスではなく、関連する複数のサービスを連携させることで顧客囲い込みを図るビジネス戦略。MicrosoftのOffice 365とOneDriveの統合が代表例である。
【参考リンク】
Microsoft OneDrive(外部)
Office 365との統合により企業向け市場で高いシェアを占めるMicrosoftのクラウドストレージサービス
Google One(外部)
Googleのプレミアムクラウドストレージサービス。AI機能やファミリー共有機能を提供
Spiceworks(外部)
IT管理者向けのコミュニティプラットフォームとヘルプデスクソリューションを提供
【参考記事】
Cloud Storage Market Size, Insights, Industry Growth(外部)
OneDriveが51%のシェアを獲得し、クラウドストレージ市場が2033年に1,503億ドル成長見込みと報告
Microsoft OneDrive Most Commonly Used Cloud Storage(外部)
Spiceworks調査でOneDrive51%、Google Drive・Dropbox34%のシェアを確認
Shadow IT Statistics: Key Facts to Learn in 2025(外部)
企業アプリケーションの42%がシャドーIT、Fortune 1000企業の67%の従業員が未承認SaaSを使用
【編集部後記】
クラウドストレージのセキュリティ課題について、皆さんの組織ではどのような対策を講じているでしょうか。今回の調査結果では、OneDriveが優位に立つ一方で、4人に1人がセキュリティに不安を感じているという興味深い現実が浮き彫りになりました。
実際に、クラウド上のデータ侵害の40%がストレージに関連しているという報告もあり、この統計は見過ごせない重要な指標だと感じています。私自身はGoogle Cloudを利用していますが、転送中と保存中の暗号化機能やIAM Conditionsなどのセキュリティ機能を活用している身として、今回のSpiceworks調査でGoogle Driveが34%のシェアにとどまっている現状は興味深いものでした。
皆さんの職場では、従業員によるシャドーITの実態はいかがですか?また、OneDriveのOffice 365統合効果とGoogle Oneの価格戦略という対照的なアプローチについてはどのように捉えていらっしゃるでしょうか。ぜひ皆さんの体験や考えをお聞かせください。