Microsoft 365とOutlookが北米全域で障害発生 – データベース不安定化による通信遮断

[更新]2025年9月13日18:17

Microsoft 365とOutlookが北米全域で障害発生 - データベース不安定化による通信遮断 - innovaTopia - (イノベトピア)

マイクロソフトは2025年9月11日、北米全域でMicrosoft OutlookとExchange Onlineに障害が発生したことを認めた。

同社は現地時間午前9時36分(UTC16時36分)に公式発表を行い、ユーザーがExchange Onlineのいずれの接続方法でもメールボックスにアクセスできない状態だと発表した。

障害は9月11日木曜日の早朝から始まり、Outlook、Teams、Hotmailに影響を与えた。OneDriveへの影響も未確認ながら報告されている。Downdetectorでは、OutlookオンラインとMicrosoft 365ユーザーからの問題報告が急増している。マイクロソフトの公式サポートページでは「マイクロソフトコンシューマー製品のサービス品質低下」と表示された。同社は段階的な変更によりサービスが改善されたと発表し、影響を受けたインフラの監視を継続している。

この障害は約14時間後に大部分のインフラが復旧したとされている。

From: 文献リンクOutlook outage over North America, Microsoft scrambles to respond

【編集部解説】

今回のMicrosoft Outlookの大規模障害は、クラウドサービスへの依存が進む現代社会における脆弱性を改めて浮き彫りにしました。北米全域で約14時間にわたって続いたこの障害は、単なる技術的問題を超えて、現代のデジタルワークフローがいかに単一のサービスプロバイダーに依存しているかを示しています。

特に注目すべきは、この障害がExchange Onlineのインフラ層で発生した点です。Exchange Onlineは世界中の数多くの企業で利用されているマイクロソフトの中核サービスであり、OutlookだけでなくTeamsOneDriveなどの他のMicrosoft 365サービスとも密接に連携しています。そのため、一つのインフラに問題が生じることで、企業の業務プロセス全体が停止するリスクがあることを示しました。

この障害の技術的背景を理解するには、クラウドメールサービスの仕組みを知る必要があります。マイクロソフトの公式発表によると、今回の障害は「特定のソフトウェアビルドバージョンが繰り返しデータベースの断続とフェイルオーバーを引き起こし、これによりCPU使用率が上昇し、メッセージキューのバックアップが発生した」ことが根本原因でした。

マイクロソフトの対応についても検証が必要です。同社は障害発生から約2時間後に詳細な状況報告を行い、段階的な復旧作業を実施しました。設定変更を通じてインフラの最適化を図り、約14時間後に大部分のサービスを復旧させることができました。

企業にとって最も重要なのは、このような障害に対するリスク管理戦略です。メール通信の完全停止は、顧客対応、内部連絡、業務承認プロセスなど、あらゆる業務に影響を与えます。特に金融医療製造業など、時間に敏感な業界では、数時間の通信遮断でも大きな損失につながる可能性があります。

今後の対策として、企業は単一障害点を避けるためのハイブリッド戦略や、複数のクラウドプロバイダーを組み合わせたマルチクラウド戦略の検討が必要でしょう。また、緊急時の代替通信手段の確保や、業務継続計画の見直しも急務となっています。

【用語解説】

Exchange Online
マイクロソフトが提供するクラウドベースのメールサービス。オンプレミス版のExchange Serverのクラウド版で、メール送受信、カレンダー、連絡先管理などの機能を提供する。

Microsoft 365
旧Office 365。マイクロソフトが提供するクラウドベースの生産性向上サービス群。Word、Excel、PowerPoint、Teams、OutlookなどのアプリケーションとExchange Online、SharePoint Onlineなどのクラウドサービスが含まれる。

OneDrive
マイクロソフトが提供するクラウドストレージサービス。ファイルの保存、同期、共有機能を提供し、Microsoft 365との統合により業務効率化を図る。

CPU使用率
コンピューターの中央処理装置(CPU)がどの程度の処理負荷を抱えているかを示す指標。使用率が異常に高くなると、システム全体の動作が不安定になる。

UTC
協定世界時(Coordinated Universal Time)。世界共通の標準時刻で、タイムゾーンに関係なく時刻を表現する際に使用される。

【参考リンク】

Microsoft Exchange Online(外部)
マイクロソフトが提供するクラウドベースのメールサービスの公式ページ。サービス概要、機能、料金プランを掲載

Microsoft 365 Service Health(外部)
Microsoft 365サービスの稼働状況をリアルタイムで確認できる公式ステータスページ

Downdetector(外部)
ウェブサイトやオンラインサービスの障害情報を収集・配信するプラットフォーム

【参考動画】

【参考記事】

Microsoft fixes Exchange Online outage affecting users worldwide(外部)
北米でのExchange Online障害について、根本原因となったCPU使用率の異常上昇を詳述

Microsoft 365 Outage: A Breakdown of the September 2025 Email Blackout(外部)
2025年9月の障害について時系列での経緯と24時間以内での復旧プロセスを分析

Microsoft 365 Outage: Impact and Mitigation Strategies(外部)
Microsoft 365障害が企業に与える影響とリスク軽減戦略、代替ソリューションの必要性を解説

【編集部後記】

今回のマイクロソフト障害は、私たちの日常業務がクラウドサービスにどれだけ依存しているかを改めて実感させられる出来事でした。皆さんの組織では、このような障害に対する備えはいかがでしょうか。

メールが使えない14時間をどう乗り切るか、想像してみてください。重要な商談の連絡や、緊急の業務指示、顧客対応など、代替手段は用意されていますか?単一のクラウドプロバイダーに依存するリスクについて、この機会に一度チーム内で話し合ってみることをお勧めします。完璧な対策は難しいかもしれませんが、リスクを認識することから始めることが大切だと感じています。

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TaTsu
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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