Windows 11アップデート問題の現状 – Microsoft公式否定とユーザー報告の狭間で

[更新]2025年8月31日16:43

 - innovaTopia - (イノベトピア)

前回報じたWindows 11アップデートKB5063878によるSSD認識問題について、新たな展開がありました。Microsoft社とSSDコントローラー大手のPhison社が、いずれも「問題との関連は確認されていない」とする公式見解を発表した一方で、ユーザーコミュニティからは依然として不具合の報告が相次いでいます。公式見解と現場の声が対立するなか、事態は複雑さを増しています。

今回の続報では、Microsoft社が8月下旬に公表した包括的な調査結果を軸に、否定的な公式見解とユーザーから寄せられる継続的な報告の双方を整理し、現状を検証します。

From: Microsoft says recent Windows update didn’t kill your SSD

双方の主張を検証する

Microsoft社の公式見解

Microsoft社は8月28日、BleepingComputerに対して調査結果を発表し、「徹底的な調査の結果、2025年8月のWindowsセキュリティアップデートとソーシャルメディアで報告されているハードドライブ障害の種類との間に関連性は発見されなかった」と表明しています。

同社の調査における重要なポイント

  • 全世界のWindows 11環境からのテレメトリーデータでディスク障害の増加は確認されなかった
  • ストレージデバイスパートナーとの協力調査でも問題の再現には至らなかった
  • カスタマーサポートチームも関連する顧客報告を受けていないとしている

Phison社による大規模検証

SSDコントローラー大手のPhison Electronics社も独立した検証を実施し、累計4,500時間以上のテスト時間と2,200回を超えるテストサイクルを経て、一度も問題の再現に至らなかったと発表している。

同社は以下の条件を意図的に再現して検証:

  • SSD使用率60%以上での50GB以上の大容量ファイル転送
  • 長時間の連続書き込み負荷テスト
  • 報告されているコントローラー(Phison E16、E31T)での集中テスト

Microsoft Learn コミュニティでの技術的分析

一方、Microsoft Learn コミュニティでは、技術者による詳細な現象分析が投稿されています。

報告されている症状パターン

「Windows 11 24H2でKB5063878を最近インストールし、大容量ファイル転送(50GB以上)を60%以上使用されているドライブで行った際に問題が発生している」

技術的メカニズムの推測

「Windows 11 KB5063878がOSサイドのキャッシュまたはバッファリング障害を作成し、長時間の連続書き込み時にOSがバッファ領域に過剰なデータを保持。カーネルがflush/FUA順序を誤処理し、I/Oキューが膨張することで、SSDのFTL(Flash Translation Layer)が過負荷状態となりコントローラーがリセットまたは応答停止状態に陥る」

ユーザーコミュニティでの実際の報告

Reddit /r/Windows11での大規模調査

Redditの/r/Windows11コミュニティでは、ユーザー主導の検証プロジェクトが展開されています。

システム管理者からの報告

「現在982台の24H2マシンでこのアップデートを運用しているが、これまでに故障は発生していない」

個人ユーザーからの報告

「3日間にわたってSSDが『消失』する問題をトラブルシューティングした。データ損失は発生しなかったが、アクセス不能状態が継続した」

日本のユーザーからの具体的報告

日本のユーザー@Nagy_MM03さんによるX投稿

「身内のPCのSSDが恐らく最近のWin11アプデの不具合で死んだんですけど、同じ事象にあって解決した人とかいますか?」

技術者Necoru_catさんの検証では、21台のSSDでテストを実施し、12台が一時的にアクセス不可能となったことが報告されています。

Microsoft Learn での技術者コメント

Independent Advisorの AceRobertT氏(評価ポイント13,710)による分析

「Microsoft は Windows 11 アップデート KB5063878 に関連するシナリオを認識し、バグを確認している。60%以上使用されている特定のSSDで大容量ファイルやファイル群を転送する際の読み書き操作に問題があり、読み取り不可能なパーティション、RAW(存在しない)ファイルシステム、アクセス不可能なSSDなどの症状が報告されており、特にPhison NANDコントローラーを使用するSSDで顕著だが、それに限定されない可能性がある」

影響を受けるとされるSSD一覧

Windows Centralの調査によると、以下のSSDモデルで問題が報告されています:

確認されているモデル

  • Corsair Force MP600
  • Western Digital Blue SA510(完全回復不能事例あり)
  • SanDisk Extreme Pro 3D
  • KIOXIA EXCERIA PLUS G4 / KIOXIA M.2
  • Fikwot FN955
  • Maxio製SSD各種

コントローラー別分類

  • Phison PS5012-E12コントローラー搭載SSD
  • InnoGritコントローラー搭載SSD
  • Maxioコントローラー搭載SSD

問題の地理的分布と統計的考察

日本中心の報告パターン

Microsoft Learn コミュニティの分析では、「報告の大部分が日本から発生している」という地理的偏在が確認されています。この現象について、以下の仮説が検討されています:

環境要因仮説

  • 日本の高温多湿環境とSSD冷却不足の組み合わせ
  • 夏期の高温環境での長時間PC使用パターン

使用パターン仮説

  • ゲームアップデートや動画編集など大容量処理の頻度
  • 日本特有のソフトウェア使用パターン

統計的偶然仮説

  • 数百万のユーザー中で発生する自然な故障の時期的重複
  • ソーシャルメディア報告文化による見かけ上の集中

技術的対策と回避方法

推奨される予防措置

Microsoft公式推奨

  1. 使用率管理:SSDの使用率を60%以下に維持
  2. 大容量ファイル操作の注意:50GB以上のファイル転送時の慎重な監視
  3. Windows Updateの一時停止:重要システムでのアップデート延期検討

Phison社推奨

  1. SSD用ヒートシンクの使用:M.2 SSDでの適切な冷却措置
  2. ファームウェア最新化:SSDとコントローラードライバーの更新

コミュニティで共有されている技術的対策

HMBレジストリ調整(DRAM非搭載SSD向け)

HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\CurrentControlSet\Control\StorPort
HmbAllocationPolicy を 0(無効)または 2(64MB)に設定

フィードバック報告の推奨手順

  1. Windows + F でFeedback Hubを起動
  2. 「Problem」→「Files, Folders, and Online Storage」→「Disks and Storage」を選択
  3. SSDモデル、使用率、実行処理の詳細を記載

検証の困難性と今後の課題

再現性の問題

この問題の最大の特徴は極めて低い再現性です

  • 企業レベルでの大規模検証では一度も再現されていない
  • ユーザー環境では特定の条件下で散発的に発生
  • 同一環境でも必ずしも再現しない場合がある

情報の信頼性評価

企業側の検証

  • 4,500時間の大規模テストによる客観性
  • 全世界のテレメトリーデータによる統計的裏付け
  • 複数企業による独立検証の一致

ユーザー側の報告

  • 具体的な症状と条件の詳細な記録
  • 複数地域での類似現象の報告
  • 技術者による詳細な分析投稿

現在の推奨対応

予防的措置

  1. データバックアップの徹底:重要データの定期的な外部保存
  2. SSD使用率の監視:60%以下での使用を心がける
  3. 大容量処理時の注意:50GB以上のファイル操作時の慎重な監視
  4. 冷却環境の整備:M.2 SSD用ヒートシンクの設置

問題発生時の対応

  1. 即座の作業停止:大容量ファイル操作の中断
  2. システム再起動:一時的な回復の試行
  3. 公式報告:Microsoft Feedback Hubへの詳細報告
  4. 専門家相談:回復不能な場合の技術サポート利用

【用語解説】

テレメトリーデータ
オペレーティングシステムが使用状況や性能データを自動収集し、障害の早期検出や改善に活用するシステム。プライバシーに配慮した匿名化処理が行われている。

Flash Translation Layer(FTL)
SSD内部でNANDフラッシュメモリの物理アドレスと論理アドレスの変換を行うソフトウェア層。データの配置最適化や寿命延長を担う重要な機能。

Host Memory Buffer(HMB)
DRAM非搭載SSDがシステムRAMの一部をキャッシュとして活用する技術。コスト削減とパフォーマンス向上を両立するが、OS変更の影響を受けやすい特性がある。

SMART機能
Self-Monitoring, Analysis and Reporting Technologyの略で、ストレージデバイスの健康状態を自己監視する機能。故障予兆の検出により、データ損失の予防に寄与する。

【参考リンク】

Microsoft Learn Community(外部)
Microsoft社の技術者とグローバルIT専門家による技術情報交換プラットフォーム

BleepingComputer(外部)
サイバーセキュリティとテクノロジーニュース分野で権威性の高い技術メディア

Windows Latest(外部)
Microsoft Windows に特化した最新技術情報を提供する専門メディア

参考記事

Microsoft says recent Windows update didn’t kill your SSD(外部)
Microsoft社の公式調査結果と包括的検証プロセスの詳細レポート

Microsoft is investigating Windows 11 KB5063878 SSD data corruption failure issue(外部)
Windows Latest による Microsoft社直接取材とSSD障害メカニズムの技術分析

Potential SSD Detection Bug in Windows 11 24H2 Following Update KB5063878(外部)
Microsoft Learn コミュニティでの技術専門家による現象分析と対策議論

【編集部後記】

今回の問題は、現代のIT環境における検証の複雑さを示す興味深い事例となりました。Microsoft社とPhison社による徹底した検証と、実際のユーザー体験報告の間に生じる乖離は、技術的真実の探求がいかに困難であるかを物語っています。

特に注目すべきは、企業レベルでは再現できない問題が、特定の環境条件下で散発的に発生しているという点です。これは、現代のハードウェアとソフトウェアの組み合わせが生み出す予期しない相互作用の複雑さを示しているのかもしれません。

皆さんの環境では、大容量ファイルの処理を行われた際、何か異常は感じられましたでしょうか。また、企業の公式見解とユーザーコミュニティでの実体験報告が食い違うような状況に遭遇された経験はございますか。私たちinnovaTopia編集部としては、今後もこのような技術的課題について、多角的な視点から客観的な分析を続け、皆さんと一緒に真実を追求していきたいと思います。この問題の最終的な解明がどのような形で行われるのか、引き続き注視してまいります。

投稿者アバター
TaTsu
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

読み込み中…
advertisements
読み込み中…