Windows 11「KB5063878」SSD問題を継続否定、中国・台湾技術コミュニティがエンジニアリングファームウェア原因説で反論

[更新]2025年9月8日14:39

Microsoft「KB5063878」SSD問題を継続否定、中国・台湾技術コミュニティがエンジニアリングファームウェア原因説で反論 - innovaTopia - (イノベトピア)

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2025年9月4日に報じたWindows 11「KB5063878」問題の新展開について、その後の重要な動向をお伝えします。Microsoft社の継続的な否定見解、X上での技術議論の活発化に続き、9月上旬には「エンジニアリングファームウェア」が真の原因とする新説が浮上しました。この発見により、企業側の「再現不可能」という主張と実際のユーザー被害報告の整合性に新たな光が当たっています。SNS時代の技術情報検証がさらに複雑な局面を迎える中、問題の真相解明は新たな段階に入りました。

From: 文献リンクEngineering Firmware Identified As Root Cause For Windows 11 SSD Failures

【エンジニアリングファームウェア原因説の衝撃】

中国DIYコミュニティによる画期的発見

9月5日、中国のPC DIY愛好家グループがFacebook上で、KB5063878問題の真の原因を特定したと発表しました。Lowyat.netの報道によると、影響を受けたSSDは最終的な製品版ではなく、プレリリース版の「エンジニアリングファームウェア」で動作していたことが判明しました。

この発見の重要性は、以下の点にあります

  • 企業検証との整合性確保:製品版ファームウェアでは問題が発生しないため、Microsoft・Phison両社の「再現不可能」という結果と矛盾しない
  • 特定ユーザーでの問題発生を説明:エンジニアリング版ファームウェアを搭載したSSDでのみ問題が発生
  • 地理的偏在の合理的説明:日本市場で評価用ユニットや初期出荷品が多く流通していた可能性

Phison社エンジニアによる検証確認

DIY愛好家グループの管理者であるRose Lee氏によると、同社Phison社エンジニアが研究室でこの発見を検証し、公式の製品版ファームウェアでは同様の異常が発生しないことを確認。小売チャネル経由で出荷された消費者向けドライブは最終ファームウェアでフラッシュされているため、大多数のユーザーには影響しないと説明しています。

台湾PCDIY!による詳細検証

Reddit上では、台湾のハードウェア・レビューサイト「PCDIY!」が同様の結論に達したという情報が共有されています:

PCDIY!の調査結果

  • レビューサンプルの問題:プレプロダクション(製品化前)ファームウェアを使用したレビューサンプルが原因
  • 一般消費者への影響なし:小売店で購入された消費者向けドライブは影響を受けない
  • 問題の特定:「工程版ファームウェア」搭載ドライブでのみ発生

検証対象となったSSD

  • Corsair FORCE SERIES MP600 1TB(Phison PS5016-E16コントローラー)
  • Silicon Power US70 2TB(Phison PS5018-E18コントローラー)

【Microsoft社の最新公式声明(9月3日)】

継続的な否定姿勢と監視体制

Microsoft社は9月3日、Windows Latestに対して改めて公式声明を発表:

「徹底的な調査の結果、2025年8月のアップデートとソーシャルメディアで報告されているハードドライブ障害の種類との間に関連性は発見されなかった」

一方で注目すべきは、以下の継続的監視姿勢の表明です:
「いつものように、すべてのアップデートリリース後のフィードバックを監視し続け、今後の報告を調査する」

この表現は、完全な問題解決宣言ではなく、継続的な注意深い観察を示唆するものと解釈できます。

【サイレント修正説の海外検証】

ドイツ技術ブログによる詳細分析

ドイツの技術ブログBornCityは9月6日、日本で流布している「サイレント修正」説について詳細な検証を実施しました。

日本発の仮説内容
「1バイト環境(英語版)用のファイルシステムが誤って配信され、その後8月29日のプレビューアップデートKB5064081で2バイト環境用ファイルシステムがサイレント配信された」

BornCityの分析結果

  • 論理的整合性:仮説として筋は通る
  • 実証的課題:実際のSSD問題の観察事実とは一致しない部分がある
  • 技術的矛盾:NTFSファイルシステムの基本仕様との不整合

【深刻化するユーザー報告】

システム全体への影響拡大

Microsoft Learn Communityに投稿されたユーザー報告では、KB5063878による影響がSSD認識問題を超えて拡大していることが判明:

報告内容

  • 8月中旬以降:アプリ・ゲームのランダムクラッシュ開始
  • 日々悪化:最終的にコンピューター正常使用不可能
  • アンインストール試行:Windows 11起動不能に陥る
  • クリーンインストール:USB作成ツールもクラッシュで失敗
  • SSD完全消去後:再インストール一時成功も、自動再適用で再発

この報告は、問題がSSD認識に留まらないシステム全体の安定性問題である可能性を示唆しています。

【現在の推奨対応(2025年9月8日現在)】

エンジニアリングファームウェア対策

SSDファームウェア確認方法

  1. 製造元サイトでの最新ファームウェア確認
  2. SSD管理ツールでのバージョン確認
  3. 評価版表示の有無確認

リスク軽減策

  • 重要データの事前バックアップ(必須)
  • 大容量ファイル転送前のSSD使用率確認(60%以下推奨)
  • ファームウェア更新の慎重な実行

継続監視の重要性

エンジニアリングファームウェア説により問題の一部が説明されましたが、以下の点で継続的な注意が必要です:

  • 全ての問題事例が説明されるわけではない
  • 新たな報告パターンの可能性
  • Microsoft社の継続調査結果待ち

【用語解説】

エンジニアリングファームウェア
製品化前の開発段階で使用される評価用ファームウェア。最終製品版とは異なる動作特性を持ち、OS更新などの外部要因に対して予期しない動作をする可能性がある。

プレプロダクション版
正式な製品化前に配布される評価・レビュー用のハードウェア。技術仕様は製品版と同等だが、ファームウェアやドライバーが最終版でない場合がある。

KB5063878
2025年8月12日にリリースされたWindows 11のセキュリティ更新プログラム。正式名称は「KB5063878(OS ビルド26100.4946)」で、セキュリティ強化を目的としていたが、SSD認識問題の発生源として疑われている。

Flush/Trimストーム
SSDで正常な頻度を超えてFlush(データ強制書き込み)やTrim(不要データ領域整理)コマンドが大量発行される異常状態。SSDコントローラーに過負荷をかけ、認識不能や故障の原因となる可能性がある。

Flash Translation Layer(FTL)
SSD内部でNANDフラッシュメモリの物理アドレスと論理アドレス変換を行うソフトウェア層。データ配置最適化、摩耗均一化、エラー訂正などSSDの動作を制御する中核機能である。

NTFSファイルシステム
Windows標準のファイルシステム。1993年から一貫してUTF-16エンコーディングを採用しており、言語版による仕様の違いは存在しない。大容量ファイルの管理や高度なセキュリティ機能を提供する。

SMART機能
Self-Monitoring, Analysis and Reporting Technologyの略。ストレージデバイスの健康状態を監視し、温度、エラー回数、書き込み回数などを記録してユーザーに異常を警告する予防診断システム。

Host Memory Buffer(HMB)
DRAM非搭載SSDがシステムRAMの一部をキャッシュとして活用する技術。コスト削減とパフォーマンス向上を実現するが、OSの変更によって動作に影響を受けやすい特性がある。

テレメトリーデータ
オペレーティングシステムが自動収集する使用状況や性能データ。Microsoft社は世界中のWindows環境からこのデータを収集し、障害の早期発見やシステム改善に活用している。

【参考リンク】

Phison Electronics(外部)
台湾に本社を置くNANDフラッシュメモリコントローラーの世界最大手メーカー

Corsair(外部)
アメリカのゲーミング向けPC部品メーカー、Force MP600シリーズなどの高性能SSDを製造

SanDisk(外部)
Western Digitalの子会社でフラッシュメモリ製品の老舗ブランド

Windows Central(外部)
Microsoft Windows専門の技術情報サイト

Microsoft Learn Community(外部)
Microsoft公式の技術者コミュニティプラットフォーム

BornCity(外部)
ドイツの権威ある技術ブログ、Windows関連の技術問題について詳細な検証と分析記事を提供

Lowyat.net(外部)
マレーシアの大手テクノロジーニュースサイト

Windows Latest(外部)
Microsoft Windows専門の技術情報サイト、企業公式声明の独占取材を行っている

【参考動画】

【参考記事】

Engineering Firmware Identified As Root Cause For Windows 11 SSD Failures(外部)
中国のPC DIYコミュニティがエンジニアリングファームウェアを真因として特定したことを報道

Microsoft issues a fresh statement on Windows 11 update SSD corruption reports(外部)
Microsoft社の9月3日改めて公式声明発表と継続的監視姿勢について詳細報道

Windows 11 24H2: Silent fix for (Japanese) SSD problems?(外部)
ドイツ技術ブログによる日本発「サイレント修正」説の詳細検証と技術的矛盾の分析

Massive problems after the KB5063878 update(外部)
KB5063878の影響がシステム全体の安定性に及ぶ深刻な状況のユーザー報告

PCDIY, claimed that they had found the root cause of a few specific SSD failures(外部)
台湾PCDIY!による詳細検証結果とプレプロダクションファームウェア問題の確認

【編集部後記】

Windows 11 KB5063878問題は、エンジニアリングファームウェア原因説の浮上により新たな局面を迎えました。この発見は、企業の「再現不可能」という主張と実際のユーザー被害の両方を合理的に説明する重要な手がかりとなっています。

特に興味深いのは、中国、台湾、ドイツ、日本の技術コミュニティが、それぞれ独立して調査を進めた結果、同じような結論に辿り着いたことです。これは意図的な連携ではなく、むしろ問題の本質的な部分が共通していたからこそ、自然に類似の分析結果が生まれたのでしょう。こうした現象は、現代のグローバルな技術検証文化における興味深い側面を示しています。

一方で、問題の完全解決には至っておらず、Microsoft社も継続的な監視を表明している状況です。現代のハードウェア・ソフトウェア連携における品質管理の複雑さと、SNS時代の技術情報検証プロセスの進化を示す貴重な事例として、引き続き注意深い観察が必要です。

読者の皆様におかれましては、エンジニアリングファームウェア搭載SSDをお使いの可能性がある場合は、重要データのバックアップを最優先に、製造元の最新情報を確認することをお勧めいたします。また、大容量ファイル処理時は従来以上の慎重な監視をお願いします。

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TaTsu
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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