Nature発表の衝撃研究|高齢者の朝食時間が寿命を左右する理由とは?遺伝子解析で判明

[更新]2025年9月17日08:16

Nature発表の衝撃研究|高齢者の朝食時間が寿命を左右する理由とは?遺伝子解析で判明 - innovaTopia - (イノベトピア)

マンチェスター大学の研究チームが、高齢者の食事タイミングと健康・死亡率の関連を調査した縦断研究の結果を2025年9月4日にNature Communications Medicineで発表した。

1983年から2017年にかけて、英国ニューカッスルとマンチェスターの地域在住高齢者2,945名を追跡した。参加者は42-94歳で、平均64歳、女性71.5%、無職83.3%だった。典型的な食事時間は朝食午前8時22分、昼食午後12時38分、夕食午後5時51分だった。

研究では線形混合効果モデル、潜在クラス分析、Cox回帰を用いて分析した。10歳の加齢ごとに朝食時間が2.89分から7.94分遅くなることが判明した。朝食タイミングが1時間遅れるごとに死亡リスクが8-11%増加した。潜在クラス分析により早食群と遅食群に分類され、10年生存率は早食群89.5%、遅食群86.7%だった。疲労、口腔健康問題、抑うつ、不安、多疾患併存が朝食時間の遅延と関連していた。

夜型クロノタイプの遺伝的プロファイルも食事時間遅延と関連したが、肥満の遺伝的プロファイルは関連しなかった。

From: 文献リンクMeal timing trajectories in older adults and their associations with morbidity, genetic profiles, and mortality

【編集部解説】

今回発表された研究は、単なる食事タイミングの調査を超えて、クロノニュートリション(時間栄養学)という新しい医学分野の重要性を浮き彫りにしています。この分野は1970年代から注目され始めましたが、近年のデジタルヘルス技術の進歩により、より精密な研究が可能になりました。

本研究の最大の特徴は、最大34年間という超長期にわたる追跡調査を実施した点にあります。これまでの多くの研究が横断的(一時点での比較)だったのに対し、同一個人の生活パターンを長期間観察することで、加齢による変化を正確に捉えることができました。

注目すべきは、朝食タイミングの1時間の遅れが8-11%の死亡リスク増加と関連している点です。これは統計学的に非常に強い関連性を示しており、生活習慣病の予防における食事タイミングの重要性を科学的に裏付けています。

遺伝的要因の解析も革新的な要素です。夜型の遺伝的傾向(イブニングクロノタイプ)を持つ人ほど食事時間が遅くなることが判明し、個人の体内時計と食事パターンの関係が遺伝レベルで証明されました。興味深いことに、肥満の遺伝的要因は食事タイミングと関連せず、体重管理とは異なるメカニズムが働いていることが示唆されています。

この研究結果は、パーソナライズド栄養学の発展にも大きな影響を与えるでしょう。将来的には、個人の遺伝的プロファイルに基づいて最適な食事タイミングを提案するアプリケーションや、体内時計に合わせた食事配達サービスなどの展開が期待されます。

一方で、社会的課題も浮上します。夜勤労働者や要介護高齢者など、理想的な食事タイミングの維持が困難な人々への対策が急務となります。また、食事タイミングという新たな健康格差を生み出さないよう、公衆衛生政策の見直しも必要でしょう。

【用語解説】

クロノニュートリション(時間栄養学)
食事を摂取するタイミングが健康に与える影響を研究する学問分野。体内時計(概日リズム)と栄養摂取の関係を科学的に解明し、最適な食事時間を探求する。

線形混合効果モデル
同一個体から複数回測定されたデータを解析する統計手法。個体差を考慮しながら、時間経過による変化を正確に分析できる。

潜在クラス分析
観察されたデータから背後にある潜在的なグループを統計学的に特定する分析手法。本研究では食事パターンによる早食群と遅食群を識別した。

Cox回帰
生存時間分析に用いられる統計手法。死亡や疾患発症などのイベント発生までの時間とリスク要因の関係を分析し、ハザード比として結果を表示する。

イブニングクロノタイプ
遺伝的に夜型の生活リズムを持つ人の特性。夜遅くまで活動し、朝の活動開始が遅い傾向がある体内時計の個人差。

多疾患併存(マルチモビディティ)
一人の患者が複数の慢性疾患を同時に患っている状態。高齢者に多く見られ、治療や管理が複雑になる。

【参考リンク】

Nature Communications Medicine(外部)
Nature系列のオープンアクセス医学ジャーナル。高品質な研究論文を発表

【参考記事】

How Meal Timing Impacts Health and Longevity in Older Adults(外部)
朝食タイミングが1時間遅れるごとに死亡リスクが8-11%増加する詳細データ

Early breakfast could help you live longer(外部)
ハーバード大学による研究解説。10年生存率の差を含む統計データを提供

Meal Timing in Later Life May Matter for Health and Longevity(外部)
マサチューセッツ総合病院の公式プレスリリース。研究手法の詳細情報

【編集部後記】

朝食時間と健康寿命の関係について、皆さんはどう感じられましたか?この研究が示すように、私たちの体内時計は想像以上に精密で、食事のタイミングによって遺伝子レベルでの反応が変わります。「いつ食べるか」が「何を食べるか」と同じくらい重要だという視点は、これまでの栄養学に新しい次元を加えています。

もしかすると、毎朝のスケジュールを少し見直すだけで、長期的な健康状態が変わる可能性があるのかもしれません。皆さんの朝食タイミングはいかがでしょうか?また、ご家族や職場での食事時間について、新しい発見はありますか?時間栄養学という分野が今後どのような健康管理ツールを生み出していくのか、一緒に注目していきたいと思います。

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Ami
テクノロジーは、もっと私たちの感性に寄り添えるはず。デザイナーとしての経験を活かし、テクノロジーが「美」と「暮らし」をどう豊かにデザインしていくのか、未来のシナリオを描きます。 2児の母として、家族の時間を豊かにするスマートホーム技術に注目する傍ら、実家の美容室のDXを考えるのが密かな楽しみ。読者の皆さんの毎日が、お気に入りのガジェットやサービスで、もっと心ときめくものになるような情報を届けたいです。もちろんMac派!

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