Rhagobot開発成功!ラゴベリアアメンボの扇状脚を模倣した1ミリグラム超小型ロボット

Rhagobot開発成功!ラゴベリアアメンボの扇状脚を模倣した1ミリグラム超小型ロボット - innovaTopia - (イノベトピア)

カリフォルニア大学バークレー校、ジョージア工科大学、韓国の亜州大学の共同研究チームは、ラゴベリアアメンボ(リップルバグ)を模倣した昆虫サイズのロボット「Rhagobot」を開発した。

研究チームはまず、ラゴベリアアメンボの独特な扇状推進器の仕組みを解明した。この扇状構造は筋肉ではなく、表面張力と弾性力により受動的に開閉し、その速度は瞬きの10倍である。またラゴベリアアメンボは50ミリ秒でシャープターンを実行し、毎秒120体長の速度で移動する。

研究の主著者であるビクター・オルテガ=ヒメネス氏は現在カリフォルニア大学バークレー校の統合生物学者である。亜州大学のキム・ドンジン博士とコ・ジェソン教授が走査型電子顕微鏡でファンの高解像度画像を撮影し、平らなリボン状の微細構造を発見した。

開発されたロボットは1ミリグラムのエラストキャピラリーファンを搭載し、水面力と柔軟な幾何学のみを使用して自己変形する。

From: 文献リンクScientists unlock nature’s secret to superfast mini robots | ScienceDaily

【編集部解説】

この研究の画期的な点は、従来の常識を覆した発見にあります。ラゴベリアアメンボの扇状構造が筋肉で制御されているという長年の定説を覆し、実際には表面張力と材料の弾性特性のみで駆動される受動的システムであることを実証しました。

最も注目すべきは、生物が進化の過程で獲得した「機械的埋め込みインテリジェンス」という概念です。これは外部からのエネルギー供給や複雑な制御システムなしに、材料自体の物理特性だけで最適な動作を実現する仕組みを指しています。

この発見が小型ロボット工学に与えるインパクトは計り知れません。従来の小型ロボットでは、センサー、コンピューター、アクチュエーターの小型化に限界があり、特に水中での機動性には課題がありました。

Rhagobotの1ミリグラムのファンと0.23グラムの総重量は、既存の小型水中ロボットと比較して圧倒的な軽量化を実現しています。この軽量性により、96度の全身ターンを50ミリ秒で実行する驚異的な機動性を獲得しました。

実用化への道筋として、環境モニタリング分野での活用が最も有望とされています。河川や海洋の水質調査、生態系監視において、従来の大型機器では不可能だった高精度なデータ収集が期待されます。

一方で、この技術には潜在的なリスクも存在します。極めて小型で高機動性を持つロボットが大量に投入された場合、生態系への影響や回収の困難さが懸念されます。また、軍事利用や監視システムへの転用可能性についても慎重な議論が必要でしょう。

規制面では、これまでドローンに適用されてきた飛行規制とは異なる、水上・水中ロボット特有のルール整備が求められます。特に生物模倣技術の急速な発展により、従来の機械と生物の境界が曖昧になりつつある現状を踏まえた新たな枠組みが必要です。

長期的視点では、この研究は「スマートマテリアル」分野の発展を加速させる可能性があります。材料自体に知能を埋め込むアプローチは、ロボット工学だけでなく、建築や医療機器分野でも革新をもたらすでしょう。

【用語解説】

ラゴベリアアメンボ(リップルバグ)
水面を素早く移動する昆虫で、中脚に扇状構造を持つことが特徴。一般的な水黽(ゲリダエ科)とは異なり、急速な旋回と爆発的な加速が可能である。

エラストキャピラリー
弾性体と毛細管現象の組み合わせを指す。材料の弾性特性と液体の表面張力が相互作用して、自動的な形状変化を実現する仕組み。

生体模倣工学(バイオミメティクス)
生物の構造や機能を模倣して技術開発を行う工学分野。自然界で最適化された仕組みを人工的に再現し、新たな技術革新につなげる。

【参考リンク】

カリフォルニア大学バークレー校(外部)
1868年設立の州立研究大学。ノーベル賞受賞者を多数輩出する全米トップレベルの研究機関

ジョージア工科大学(外部)
1885年設立の州立工科大学。工学とコンピューティング分野で全米トップクラスの評価

亜州大学(外部)
1973年設立の韓国の私立研究大学。AI、未来自動車、分子科学技術分野で先進的研究

Science誌(外部)
アメリカ科学振興協会が発行する世界最高峰の科学学術誌。1880年創刊で革新的研究成果を掲載

【参考動画】

【参考記事】

Self-morphing, wing-like feet enhance surface maneuverability(外部)
Tech Xploreによる技術詳細記事。1ミリグラムのファン構造と0.23グラムのロボット総重量について詳述

Hermes of the bug world inspires robot that skates on water(外部)
Cosmos Magazineによる包括的な研究解説。96度ターンを50ミリ秒で実行する技術的詳細を報告

Korean and American researchers create water-walking robot(外部)
韓国メディアによる詳細レポート。コ・ジェソン教授の15年間にわたる研究経緯と技術的背景を説明

【編集部後記】

この研究を見ていて、改めて自然界の設計の精巧さに驚かされます。筋肉を使わずに表面張力だけで最適な動作を実現するなんて、エンジニアリングの常識を覆すような発想ですよね。

皆さんも身近な生き物を観察していて「なぜこんな動きができるのだろう?」と疑問に思ったことはありませんか?もしかするとそこには、まだ人類が気づいていない革新的な技術のヒントが隠れているかもしれません。

今回のRhagobotのような超小型ロボットが実用化されたら、どんな場面で活躍してほしいと思いますか?災害時の捜索活動から環境調査まで、可能性は無限大に広がりそうです。

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TaTsu
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