SpaceX Falcon 9、ヴァンデンバーグから24基Starlink衛星を打ち上げ – 8,400基超の低軌道コンステレーション構築

[更新]2025年9月14日15:30

SpaceX Falcon 9、ヴァンデンバーグから24基Starlink衛星を打ち上げ - 8,400基超の低軌道コンステレーション構築 - innovaTopia - (イノベトピア)

SpaceXは9月13日、ヴァンデンバーグ宇宙軍基地のスペースローンチコンプレックス4イーストからFalcon 9ロケットでStarlink 17-10ミッションを実施した。

太平洋夏時間午前10時55分(東部夏時間午後1時55分)に打ち上げられ、24基のブロードバンドインターネット衛星を低軌道に展開した。

軌道追跡専門家のジョナサン・マクドウェルによると、この展開によりSpaceXの低軌道衛星数は8,400基以上となる。

使用されたFalcon 9第1段ブースターB1071は28回目の飛行で、これまでに16回のStarlink衛星バッチ、国家偵察局向け5回のミッション、4回のライドシェアミッションを実施している。

ブースターは打ち上げから約8.5分後にドローン船「Of Course I Still Love You」への着陸に成功し、この船舶での151回目の回収、通算504回目のブースター着陸となった。

これは2025年にSpaceXがカリフォルニアから実施した42回目の打ち上げである。SpaceXは午後3時30分EDTに衛星展開の成功を確認した。

From: 文献リンクSpaceX launches 24 Starlink satellites on Falcon 9 rocket from Vandenberg SFB

【編集部解説】

今回のStarlink 17-10ミッションは、単なる衛星打ち上げを超えた複数の重要な技術的マイルストーンを示しています。

最も注目すべきは、B1071ブースターが28回目の飛行を達成したことです。これは現在のSpaceXブースター再利用記録に並ぶ数字で、同社が目指している40回の飛行認証に向けた重要な実証となります。このブースターは2021年から稼働し、国家偵察局のミッションからStarlinkまで幅広い任務を担ってきました。

8,400基を超える衛星コンステレーションの規模も見逃せません。これは全天の平方度数に匹敵する数であり、地球を取り囲む通信インフラの密度がいかに高まっているかを物語ります。低軌道での高速通信を実現する一方で、天文観測への影響も深刻化しており、第2世代Starlink衛星は従来の32倍の電波漏洩を起こしているという研究結果も出ています。

SpaceXの2025年115回目のFalcon 9打ち上げペースも驚異的です。そのうち70%以上がStarlinkミッションとなっています。カリフォルニアからだけでも42回の打ち上げという数字は、宇宙アクセスの商業化がいかに急速に進んでいるかを示しています。

技術的成功の裏で、宇宙debris問題への懸念も高まっています。専門家は、Starlinkが関与する衛星間接近事例が週に約1,600件発生しており、全体の50%を占めると指摘しています。完全展開時には90%に達する可能性もあり、ケスラー症候群のリスクが現実味を帯びています。

この打ち上げが示すのは、民間宇宙企業が宇宙インフラの主導権を握りつつある現実です。従来は政府機関が担っていた宇宙開発が、SpaceXのような民間企業によって日常的な商業活動へと変貌を遂げています。

【用語解説】

Falcon 9: SpaceXが開発した再使用可能な2段式ロケット。第1段ブースターは垂直着陸技術により回収・再利用される。

ブースター再利用: ロケットの第1段を回収して複数回使用する技術。打ち上げコストの大幅削減を実現している。

低軌道コンステレーション: 高度200-2,000km程度の軌道に展開される多数の衛星群。地上との通信遅延が少ないのが特徴である。

ドローン船: 海上でロケットブースターを回収するための自律航行プラットフォーム。SpaceXは複数隻を運用している。

国家偵察局(NRO): アメリカの軍事諜報機関で、偵察衛星の運用を担当する組織である。

ライドシェアミッション: 複数の小型衛星を同時に打ち上げるサービス。打ち上げコストの分散が可能になる。

ケスラー症候群: 宇宙debris同士の衝突が連鎖的に発生し、宇宙空間が利用不可能になる現象。

【参考リンク】

SpaceX公式サイト(外部)
イーロン・マスクが設立した宇宙企業。Falcon 9ロケットやStarlink衛星インターネットサービスを展開している。

Starlink公式サイト(外部)
SpaceXが運営する衛星インターネットサービス。低軌道衛星コンステレーションを利用して高速通信を提供している。

Spaceflight Now(外部)
宇宙開発に関する最新情報を提供する専門メディア。ロケット打ち上げのライブ中継や詳細な技術解説を行っている。

【参考記事】

SpaceX launches 300th Starlink satellite-internet mission(外部)
Space.comによる報告。今回のミッションがSpaceXにとって300回目のStarlinkミッションであることを詳報。

SpaceX completes its 300th Starlink deployment mission(外部)
Yahoo Newsの記事。B1071ブースターの28回目の飛行と、Starlinkコンステレーションの規模拡大について詳述。

List of Falcon 9 first-stage boosters(外部)
Wikipediaのブースター一覧。B1071を含む各ブースターの飛行履歴と再利用記録を網羅的に記録。

Starlink satellites: Facts, tracking and impact on astronomy(外部)
Space.comによるStarlink詳細解説。8,400基を超える衛星コンステレーションの現状と天文学への影響を分析。

Second-Generation Starlink Satellites Leak 30 Times More Radio(外部)
オランダ電波天文学研究所(ASTRON)の研究報告。第2世代Starlink衛星の電波漏洩問題と天文観測への深刻な影響を指摘。

【編集部後記】

今回のStarlink 17-10ミッションで、夜空に浮かぶ8,400基を超える衛星コンステレーションが形成されていることに改めて驚かされました。私たちの日常生活を支える通信インフラが、こうして目には見えない形で宇宙に築かれているのです。皆さんも普段お使いのインターネットが、実は地上から400km上空の衛星経由になる日が来るかもしれません。

一方で、B1071ブースターの28回目という再利用記録も気になります。これほど頻繁に宇宙と地球を往復する技術が実現している今、私たちの宇宙に対する認識はどう変わっていくのでしょうか。皆さんはこの宇宙インフラの急速な発展をどのように感じられますか?

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TaTsu
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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