フィアット・グランデ・パンダが世界初の快挙|テトラパック連携で飲料カートンから自動車内装材を実現

[更新]2025年9月13日12:15

フィアット・グランデ・パンダが世界初の快挙|テトラパック連携で飲料カートンから自動車内装材を実現 - innovaTopia - (イノベトピア)

イタリアの自動車メーカーフィアットが、同社の新車種フィアット・グランデ・パンダにリサイクル飲料カートン材料を使用した世界初の取り組みを6月に発表した。

1台あたり飲料カートン140個分のポリエチレンとアルミニウム層をリサイクルした材料を採用している。

このリサイクル材料は車内装のセンターコンソール、ダッシュボード、フロントとリアのドアパネルに使用され、アルミニウムによる光沢効果を生み出している。テトラパックとイタリアの材料専門企業ラポ・コンパウンドがフィアットと共同でラポレン・エコテックという新材料コンパウンドを開発した。

テトラパックの回収・リサイクル担当副社長キンガ・シエラドゾンが、200を超えるリサイクルパートナーとの協力について説明している。フィアット・グランデ・パンダはヨーロッパのほとんどの国で既に販売されており、年末までにヨーロッパ以外でも販売予定である。

飲料カートンは通常70%の紙、25%のポリマー、5%のアルミニウムで構成される。

From: 文献リンクFrom cartons to cars: Finding new avenues for used packaging

【編集部解説】

この協業が注目される背景には、EUの新しい規制環境があります。2025年6月に採択された新ELV(End-of-Life Vehicles)規則では、新車プラスチックの25%をリサイクル材料にすることが義務付けられています。フィアットの取り組みは、この規制に先行して対応した戦略的な動きと言えるでしょう。

技術的な詳細を見ると、使用されているのはテトラパックの「ポリアル(polyAl)」という材料です。これは飲料カートンのリサイクル過程で生じるポリエチレンとアルミニウムの複合材料で、従来は商業的利用が困難とされていました。この材料をラポ・コンパウンド社が「ラポレン・エコテック」という新しいコンパウンドに加工し、フィアットの要求する青色と光沢効果を実現しています。

環境インパクトの観点から見ると、この取り組みは単なる「グリーンウォッシュ」を超えた実質的な成果を示しています。フィアット・グランデ・パンダは既にヨーロッパの多くの国で販売されており、年末までにヨーロッパ外でも展開予定です。これは実証段階を超えた商業規模での実装を意味します。

ただし、いくつかの課題も存在します。リサイクル材料の価格競争力については、バージンプラスチックとの比較で慎重な検討が必要とされています。また、テトラパック側も認めているように、顧客の認知度向上と教育が普及の鍵となります。

長期的な展望としては、ラポ・コンパウンドが屋外家具や工場床材への応用も検討しており、自動車以外の分野への波及効果も期待されます。テトラパック自体も世界200を超えるリサイクルパートナーとのネットワークを活用し、循環型経済のインフラ構築を進めています。

この事例は、異業種間の連携による新しいビジネスモデルの創出という点でも重要です。包装材メーカー、材料加工会社、自動車メーカーという異なる産業の協力により、従来は廃棄物だった材料を高付加価値製品に転換することに成功しました。

【用語解説】

ポリアル(polyAl)
テトラパックの飲料カートンに使用されるポリエチレンとアルミニウムの複合材料。従来はリサイクルが困難とされていたが、近年商業利用への道筋が開かれている。耐久性、安定性、均質性に優れ、着色や加工が可能である。

ELV(End-of-Life Vehicles)規則
EUが2025年6月に採択した自動車の循環型経済促進のための規制。新車プラスチックの25%をリサイクル材料にすることを義務付けており、2030年までにはより厳格な目標設定が予定されている。

ラポレン・エコテック
フィアット・グランデ・パンダに使用されるリサイクル材料の商品名。ラポ・コンパウンド社がポリアル材料を加工して開発したコンパウンドで、フィアットの要求する青色と光沢効果を実現している。

【参考リンク】

テトラパック 日本公式サイト(外部)
1951年にスウェーデンで創業した食品加工処理と容器包装ソリューションの世界的リーディング企業

フィアット 日本公式サイト(外部)
イタリアを代表するカーブランドの日本公式サイトでコンパクトカーのラインアップを紹介

Lapo Compound 公式サイト(外部)
2001年設立のイタリアのポリプロピレンコンパウンド専門メーカー

フィアット・グランデ・パンダ 公式ページ(イギリス)(外部)
フィアット・グランデ・パンダの電動車モデルに関する詳細情報を提供

【参考記事】

How Fiat, Tetra Pak & Lapo Turn Cartons into Car Interiors(外部)
フィアット・グランデ・パンダのリサイクル材料使用と3社連携による循環型経済実現を詳述

Fiat releases car made from recycled materials(外部)
自動車業界初の取り組みとテトラパックの200を超えるリサイクルパートナー協力体制を報告

New EU rules on design, reuse and recycling in the automotive sector(外部)
EUの新しい自動車セクター向け循環型経済規則と25%リサイクル材料義務化について解説

Fiat launches industry-first car using recycled material from used beverage cartons(外部)
フィアットとテトラパック協業の技術詳細とポリアル材料の自動車内装への応用可能性を報告

【編集部後記】

今回のフィアットとテトラパックの取り組みを見て、皆さんはどう感じられましたか。普段、何気なく手に取る豆乳や野菜ジュースのパックが、自動車の内装として第二の人生を歩むなんて想像できたでしょうか。私たちが日常的に廃棄している「ゴミ」が、実は全く別の産業で価値ある資源として生まれ変わる可能性を秘めています。

この事例から、皆さんはどんな異業種コラボレーションを思い浮かべますか。もしかすると、私たちの身の回りにある「使えないもの」が、まったく違う分野で革新的な材料になるヒントが隠れているかもしれませんね。循環型経済の実現には、こうした発想の転換と業界の垣根を超えた連携が不可欠です。

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Ami
テクノロジーは、もっと私たちの感性に寄り添えるはず。デザイナーとしての経験を活かし、テクノロジーが「美」と「暮らし」をどう豊かにデザインしていくのか、未来のシナリオを描きます。 2児の母として、家族の時間を豊かにするスマートホーム技術に注目する傍ら、実家の美容室のDXを考えるのが密かな楽しみ。読者の皆さんの毎日が、お気に入りのガジェットやサービスで、もっと心ときめくものになるような情報を届けたいです。もちろんMac派!

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