Oracle創業者ラリー・エリソン-Oracle株急騰で一時世界一の富豪へ | Stargate Project等AI契約が資産100億ドル押し上げ

[更新]2025年9月11日14:52

 - innovaTopia - (イノベトピア)

Oracle共同創業者ラリー・エリソンは、Oracle株の40%以上の急騰により一時的に世界一の富豪となった。エリソンの資産は1日で約1000億ドル増え、約3830億ドルに到達、イーロン・マスクの3840億ドルに迫った。株価上昇の背景には、AI需要拡大と、それによるOracleのクラウドサービスへの4500億ドル超の受注残、NvidiaやOpenAIとの大型取引がある。エリソン一家はParamount Globalの買収にも出資し、AI・メディア・政治領域にも積極展開。Oracleは今後も複数の数十億ドル規模の契約締結を見込むとし、データセンター需要の世界的拡大が資産急増の主因となった。

From: 文献リンクLarry Ellison briefly eclipses Elon Musk as world’s richest person, billionaires index says

【編集部解説】

エリソン氏の資産増大は、AI(人工知能)インフラへの急激な需要増によるものです。今回のニュースのような株価急騰は、同社がAI企業の重要なインフラパートナーとして確固たる地位を築いたことを示しています。受注残(remaining performance obligations、以下RPO)は、従来のクラウドサービスとは規模が桁違いです。

今回の動向で注目すべきは、マルチクラウド戦略の影響力です。Oracleは既存のクラウド大手(AWS、Azure、Google Cloud)への依存から脱却し、独自のデータベース技術とAI企業の特殊要件をマッチングさせています。特にOracleの収益がハイパースケーラー経由で1529%増加した背景には、AI訓練用データの効率的処理が不可欠となっている現実があります。

Stargateプロジェクトの規模は、これまでのIT投資を大幅に上回る5,000億ドル規模です。4.5ギガワットの電力容量は、200万個以上のチップを稼働させる規模であり、従来のデータセンターの概念を完全に変えます。これは単なるクラウドサービスではなく、国家レベルのインフラプロジェクトと言えます。

一方で、こうした急激な拡大には潜在的リスクも存在します。データセンターの過剰建設リスクや、AI需要の持続性に関する懸念がMoody’sなどから指摘されています。また、データ汚染攻撃のような新たなセキュリティ脅威も生まれています。

規制面では、米国のAI輸出管理規制が2025年から本格化し、大規模のデータセンターは厳格な監視下に置かれます。これにより、Oracleのような企業は技術的監視システムの導入や詳細なレポーティング義務を負うことになります。

エリソン一家のParamount Global買収は、メディア業界へのテクノロジー融合を加速させています。デイビッド氏は20億ドルの「コスト効率化とシナジー」を目標に掲げており、従来のハリウッド的経営手法からの転換を図っています。

長期的には、Oracleの成功がクラウド業界の構造変化を促す可能性があります。従来のハイパースケーラー(AWS、Azure、Google Cloud)による寡占状態に対し、専門特化型プロバイダーが台頭する転換点となるかもしれません。

【用語解説】

Oracle:1977年にLarry Ellisonが共同創設したアメリカの多国籍テクノロジー企業。データベースソフトウェアやクラウドコンピューティングサービスを提供し、時価総額で世界第4位のソフトウェア企業である。

Bloomberg Billionaires Index:2012年3月にBloombergが開始した世界の富豪500人の日々の純資産ランキング。ニューヨーク市場終了後に毎日更新され、各富豪のプロフィールと資産比較ツールを提供している。

Stargate Project:OpenAI、Oracle、SoftBankの共同投資プロジェクトで、4年間で5,000億ドルをアメリカのAIインフラ建設に投資する計画。4.5ギガワットのデータセンター建設を通じて数十万人の雇用創出を目指している。

受注残(RPO: Remaining Performance Obligations):企業が顧客から受注した契約のうち、まだサービス提供が完了していない部分の金額総額を指す。将来の売上見込みを示すもので、Oracleでは4,500億ドル超のクラウドサービス受注残があり、これは今後数年間で確実に売上となる契約を意味している。

ハイパースケーラー:大規模なクラウドインフラを提供する企業群の総称。AWS、Microsoft Azure、Google Cloudなどが代表例で、Oracleもこのカテゴリーに含まれる企業である。

Multicloud(マルチクラウド):複数のクラウドプロバイダーのサービスを組み合わせて利用する戦略。リスク分散、コスト最適化、特定機能の活用を目的として企業が採用している。

ギガワット:10億ワットに相当する電力単位。原子炉1基分の発電能力に相当し、約75万世帯の電力供給が可能な規模である。

Paramount Global:CBSやMTV、Nickelodeonなどを所有するアメリカの大手メディア・エンターテイメント企業。2025年8月にデイビッド・エリソン率いるSkydance Mediaとの80億ドルの合併を完了した。

【参考リンク】

Oracle Corporation(日本語)(外部)
オラクルの日本公式サイト。200以上のAIおよびクラウドサービス、データベース製品の情報、企業向けソリューションの詳細を提供している。

Bloomberg Billionaires Index(外部)
世界の富豪500人の純資産を日々追跡するBloombergの公式ランキングサイト。各富豪のプロフィール、資産推移、比較ツールを利用できる。

OpenAI Stargate Project発表ページ(外部)
OpenAIによるStargateプロジェクトの公式発表。5,000億ドルの投資計画、参加企業、アメリカのAI領域でのリーダーシップ確保の詳細を説明している。

Paramount Global(外部)
Paramount Globalの公式サイト。世界180ヶ国、7億人の視聴者にプレミアムエンターテイメントコンテンツを提供する企業概要を掲載している。

NVIDIA Corporation(日本語)(外部)
NVIDIAの日本公式サイト。GPU、AI、HPC、ゲーミング、クリエイティブデザイン、自動運転車、ロボティクス分野の最新テクノロジー情報を提供している。

【参考記事】

Oracle surges on AI cloud growth as customers race to secure computing capacity – Reuters(外部)
AI需要拡大によるOracleのクラウド事業急成長を詳細分析。顧客企業がコンピューティング能力確保に殺到している現状を報告。

Oracle stock soars as CEO says AI-fueled cloud revenue set to soar to $144 billion(外部)
Oracle CEOがAI駆動のクラウド売上が1,440億ドルに達するとの見通しを発表。株価急騰の背景となった業績予測の詳細を解説。

Oracle’s cloud backlog jumped 359% to $455 billion after signing massive AI deals(外部)
Oracleのクラウド受注残が4550億ドルに359%急増。大型AI契約締結後の財務状況と今後の成長戦略を分析。

Larry Ellison $100 billion richer after Oracle earnings – CNBC(外部)
Oracle決算発表後のLarry Ellisonの資産1000億ドル増加を詳細報告。株価急騰の要因と富豪ランキングへの影響を分析。

OpenAI Signs $300 Billion Data Center Pact With Tech Partners – NY Times(外部)
OpenAIとテクノロジーパートナーの3000億ドル規模データセンター契約の詳細。AI産業における大規模インフラ投資の意義を解説。

【編集部後記】

一日で1000億ドルという資産変動は、もはやAIの経済影響が個人資産レベルまで浸透している証拠でしょうか。4500億ドルの受注残は国家予算規模ですが、これがすべてAI需要によるものとは驚愕です。Stargateの5ギガワット電力は原子炉5基分に相当し、200万個のチップが稼働する規模の計算基盤とは一体何を実現するのでしょう。そして息子デイビッド氏によるParamount買収は、エンタメ業界へのAI浸透を意味するのか、それとも単なる投資多様化なのか。AIインフラが国家戦略と個人資産、そして文化産業まで同時に変えていく現象をどう捉えるべきでしょうか。

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乗杉 海
SF小説やゲームカルチャーをきっかけに、エンターテインメントとテクノロジーが交わる領域を探究しているライターです。 SF作品が描く未来社会や、ビデオゲームが生み出すメタフィクション的な世界観に刺激を受けてきました。現在は、AI生成コンテンツやVR/AR、インタラクティブメディアの進化といったテーマを幅広く取り上げています。 デジタルエンターテインメントの未来が、人の認知や感情にどのように働きかけるのかを分析しながら、テクノロジーが切り開く新しい可能性を追いかけています。 デジタルエンターテインメントの未来形がいかに人間の認知と感情に働きかけるかを分析し、テクノロジーが創造する新しい未来の可能性を追求しています。

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