ラクスルとCanvaが日本市場で戦略的パートナーシップを締結した。ラクスルは東京都港区に本社があり、代表取締役社長グループCEOは永見世央である。Canva社はオーストラリアのシドニーに本社があり、CEOはメラニー・パーキンスである。
本提携により、両社はデザイン制作から印刷、Web、販促、マーケティング領域まで包括的なサービスを展開する。
ラクスルは300万以上の顧客IDを有するBtoBプラットフォームであり、印刷からWebおよびデジタルマーケティングまでを支援する。
Canvaは世界190か国以上で利用されるビジュアルコミュニケーションとデザインのプラットフォームである。提携内容としては、Canva上で作成したデザインをラクスルの印刷サービスに直結させることと、ラクスル上からCanvaにシームレスに接続して印刷、ダイレクトメール、エリアマーケティング、HP制作、デジタルマーケティングなど幅広いサービスをワンストップで利用できるようにすることである。
Canvaで作成した名刺を編集画面からワンクリックでラクスルに入稿できる機能が実装された。Canvaは2013年創業である。


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PRTIMES ラクスル、Canvaと戦略的パートナーシップ契約を締結
【編集部解説】
2025年10月29日、日本の印刷プラットフォーム大手のラクスルが、世界規模のデザイン・クリエイティブツール「Canva」と日本市場での戦略的パートナーシップを締結しました。このニュースが注目される背景には、日本の中小企業が直面する「マーケティングの分業化による弊害」があります。
これまで日本の中小企業がマーケティング施策を展開する際、デザイン制作、印刷、Web制作、デジタルマーケティングは異なる企業に発注するのが一般的でした。その結果、多くの事業者がコスト、時間、ノウハウといった複数の壁に直面し、十分なマーケティング投資ができない状況が生じていました。本提携はこうした構造的な問題を一気に解決する可能性を秘めています。
ラクスルは現在、300万以上の顧客IDを保有する国内有数のBtoBプラットフォームとして、印刷事業から Web、デジタルマーケティング領域まで事業を拡張しています。一方、Canvaは世界190か国以上で利用されるビジュアルコミュニケーションプラットフォームであり、2024年から2025年にかけて日本市場での利用が大幅に拡大しています。日本国内での過去1年間の利用は倍増し、Canvaにおけるアジア地域での成長は加速度的に進行中です。
実装されたサービスの仕組みは、ユーザーが Canvaで制作した名刺を、編集画面からワンクリックでラクスルの印刷サービスに直結させるというもので、従来のダウンロード・再アップロードといった手間を大幅に削減します。今後は名刺から始まり、チラシ、冊子、ポスター、パンフレット、ノベルティ、アパレル製品など、多様な印刷ニーズに対応する予定です。
ポジティブな側面として、このパートナーシップは中小企業のデジタル化とマーケティング民主化を加速させる可能性があります。大企業にしかできなかったレベルの販促活動が、誰でも手軽に実行できるようになることで、日本経済全体の底上げに寄与する可能性は高いでしょう。特に、デザイン知識を持たない事業者でも直感的に高品質なクリエイティブを生成できる点は、生産性向上の観点から重要です。
一方、潜在的なリスクも存在します。第一に、テンプレートベースのデザインが普及することで、中小規模のデザイン制作会社の事業機会が縮小する可能性があります。第二に、オンプラットフォーム上での一括管理により、ユーザーデータが特定の企業に集中することになり、データセキュリティやプライバシー保護の重要性がより一層高まります。第三に、両プラットフォーム間の技術的な統合に伴うシステムトラブルが発生した場合、ユーザーの業務に直接的な悪影響を及ぼす懸念も考えられます。
規制面では、この動きは日本の印刷業界やデザイン業界の構造変化を促す可能性があり、今後業界団体や関連省庁がこうした変化に対応するガイドラインを策定する必要が生じてくるでしょう。特に、中小企業の競争力維持と雇用維持のバランスを取ることが政策課題となります。
長期的には、本提携が成功すれば、日本の中小企業がグローバルなデジタルマーケティング環境における競争力を強化する一つのモデルケースとなり得ます。デザインと商業活動を一体化させたプラットフォーム経済の展開は、今後のビジネスのあり方を大きく変える可能性を秘めています。
【用語解説】
End-to-End(エンド・ツー・エンド)
ビジネスプロセスの始まりから終わりまで、一連の業務全体をシームレスに統合する手法を指す。通常は複数の企業や部門に分散していた業務を、単一のプラットフォームで一体化させることを意味する。
ビジュアルコミュニケーション
文字情報だけでなく、画像、グラフィック、図表、動画などの視覚的要素を用いて、情報や意思をやり取りする通信手段。特にリモートワーク環境では、視覚的な情報伝達の重要性が高まっている。
ダイレクトメール(DM)
企業が直接消費者や企業のもとに郵送する広告・販促物。チラシやカタログ、パンフレットなどが含まれ、プリント産業と密接に関連している。
シームレス
継ぎ目がない、滑らかに統合された状態を指す。本提携では、デザイン作成から印刷発注まで、ユーザーが複数のシステムを切り替えることなく進められることを意味する。
UX(ユーザー・エクスペリエンス)
ユーザーが製品やサービスを使用する際に感じる経験や満足度を指す。使いやすさ、分かりやすさ、ストレスの少なさなどが評価される。
テンプレート
あらかじめ設計された枠組みやひな形。ユーザーは基本的な構成は変わらず、自分の内容に合わせてカスタマイズして利用できる。
ハイパーローカライゼーション
特定の地域や文化の細かなニーズに対応するため、サービスやコンテンツを極度に適応させるマーケティング戦略。
【参考リンク】
Canva公式サイト(外部)
ビジュアルコミュニケーションとコラボレーション機能を備えたプラットフォーム。世界190か国以上で利用され、初心者からプロまで直感的に高品質なクリエイティブを生成できる環境を提供する。
ラクスル公式サイト(外部)
日本の印刷・販促プラットフォーム企業。300万以上の顧客IDを保有し、名刺やチラシなど多様な印刷商品とデジタルマーケティングサービスを提供。
ラクスル公式YouTubeチャンネル(外部)
ラクスル株式会社の公式チャンネル。事業説明動画、サービスガイド、テレビCMなどを公開しており、企業の取り組みを詳しく知ることができる。
【参考記事】
Canva Raises $60 Million on a $6 Billion Valuation(外部)
Canvaは2020年に6000万ドル調達し評価額が60億ドルに。月間アクティブユーザー3000万人、190か国での利用を実現。
After Figma’s Massive IPO, Could Canva IPO at $200 Billion?(外部)
2025年6月時点でCanva評価額56億ドル。月間アクティブユーザー2億3000万人、年間経常収益3億ドルを達成している。
Global Printing Services Market Size, Share, and Trends(外部)
世界印刷市場は2024年216億7000万ドル、2032年461億1000万ドルへ。年間複合成長率9.9%で拡大予想。
Print Advertising Design Software(外部)
印刷広告デザインソフト市場は2025年に約25億ドルに。クラウドベース化とAI機能搭載が急速に進行中である。
ラクスル IRドキュメント:通期財務結果(外部)
ラクスルの顧客560万人、中小企業からの注文が全売上70%。日本中小企業2%のシェアで拡大余地が大きい。
【編集部後記】
あなたの事業で「デザイン」「印刷」「Web」といった異なるサービスを、複数の企業に発注していませんか?また、その際にコスト、納期、ノウハウの課題に直面した経験はありませんか?
ラクスルとCanvaのパートナーシップは、こうした日本の中小企業が長年直面してきた「分業の壁」を取り払う一つの試みです。大企業にしかできなかったマーケティング投資が、より身近になる時代へ。私たちとともに、その可能性を探ってみませんか。
























