シャープAQUOS sense10発表|ミドルレンジに本格AI機能、11月13日発売

シャープAQUOS sense10発表|ミドルレンジに本格AI機能、11月13日発売 - innovaTopia - (イノベトピア)

シャープは2025年10月31日、スタンダードモデルのスマートフォン「AQUOS sense10」をグローバルモデルとして商品化したと発表した。日本では11月13日に発売し、台湾、インドネシア、シンガポールでも順次販売を開始する。

本機はSoC「Snapdragon 7s Gen 3 Mobile Platform」を搭載し、従来機比でCPU性能が約20%、GPU性能が約40%、AI性能が約30%向上した。Pro IGZO OLEDディスプレイと5,000mAhバッテリーにより、1日10時間の利用で2日間使用可能である。

また、カメラはハイエンドモデル「AQUOS R10」のAI補正機能を搭載し、新たに「ショーケースモード」を追加した。通話品質向上のAI機能「Vocalist」も搭載する。カラーは全6色で、本体は約166g、MIL-STD-810Hの複数項目に準拠した防水・防塵性能と、MIL-STD-810G準拠の耐衝撃性能に対応する。

日本ではNTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイル、J:COMが取り扱うほか、SIMフリーモデルも発売する。

From: 文献リンクスマートフォン「AQUOS sense10」を商品化|ニュースリリース

【編集部解説】

シャープがAQUOS sense10で示したのは、ミドルレンジスマートフォン市場におけるAI機能の民主化です。従来、高度なAI処理はハイエンドモデルの特権でしたが、Snapdragon 7s Gen 3の搭載により、6万円台の価格帯でも本格的なAI体験が可能になりました。

この動きは2025年のスマートフォン市場全体のトレンドとも一致しています。調査によれば、300〜499ドルのミドルレンジ帯において、生成AI対応SoCの出荷台数が前年比3倍に増加すると予測されており、この価格帯での競争が激化しています。消費者にとっては、高価なフラッグシップモデルを購入せずとも、AI機能を活用できる選択肢が増えたことを意味します。

特に注目すべきは「Vocalist」機能です。自分の声を登録することで、通話時に周囲の雑音や他人の声をAIが識別してカットする技術は、リモートワークや公共空間での通話が日常化した現代において実用的な価値を持ちます。類似の音声分離技術は2025年に大きく進化しており、ディープニューラルネットワークを用いたリアルタイム処理が可能になっています。

カメラのAI補正機能、特に「ショーケースモード」も実用性の高い進化です。美術館や水族館、店舗でのガラス越し撮影は誰もが経験する課題ですが、これまでは撮影角度を工夫するか、後から手動で編集する必要がありました。AIが反射を自動軽減することで、撮影体験が大幅に向上します。

バッテリー性能については、5,000mAhと省電力のPro IGZO OLEDディスプレイの組み合わせにより、1日10時間使用で2日間持続するという仕様は、ミドルレンジスマートフォンの重要な差別化要因となっています。これは、高性能化と電池持ちの両立という、長年の課題に対する一つの解答です。

一方で、AI機能の拡充には処理能力の向上が不可欠であり、Snapdragon 7s Gen 3のAI性能が従来比30%向上したとはいえ、ハイエンドモデルとの性能差は依然として存在します。複雑な生成AI処理などはクラウド連携が前提となる可能性もあり、オンデバイスAIの限界を理解しておく必要があります。

シャープが台湾、インドネシア、シンガポールでも展開する点は、グローバル市場でのミドルレンジ需要の高まりを反映しています。日本国内では主要キャリア全社が取り扱うことから、5,000円相当のキャンペーンと合わせて、実質的な購入ハードルはさらに下がるでしょう。

【用語解説】

Snapdragon 7s Gen 3 Mobile Platform
Qualcommが2024年8月に発表したミドルレンジ向けSoC(System on Chip)である。4nmプロセスで製造され、最大2.5GHzのプライムコア1基、2.4GHzのパフォーマンスコア3基、1.8GHzの効率コア4基で構成されるオクタコア設計となっている。前世代の7s Gen 2と比較して、CPU性能が20%、GPU性能が40%、AI処理性能が30%向上し、消費電力は12%削減されている。

Pro IGZO OLED
シャープ独自の有機ELディスプレイ技術である。IGZOは酸化インジウム・ガリウム・亜鉛を用いた半導体材料で、従来のアモルファスシリコンより電子移動度が高く、高速駆動と低消費電力を両立する。Pro IGZO OLEDは自発光型のため完全な黒を表現でき、1~120Hzの可変駆動により状況に応じて最適なリフレッシュレートを自動調整することで省電力性能を実現している。

RAW+AI画像合成処理技術
通常のRAWデータを超える情報量で画像処理を行う技術である。複数枚の画像データをAIが解析・合成することで、ズームやナイトモードでの撮影時に失われがちなディテールや階調を忠実に再現する。この技術により、ミドルレンジモデルでもハイエンドモデルに匹敵する画質を実現している。

MIL-STD-810H/810G
米国国防総省が定める軍用機器の調達基準である。810Hは2019年に制定された最新規格で、防水、防塵、耐振動、高温・低温動作、温度衝撃など15項目の環境試験基準を含む。AQUOS sense10は耐衝撃(落下)試験のみ旧規格の810Gに準拠している。

【参考リンク】

AQUOS sense10 製品ページ(シャープ)(外部)
シャープの公式製品ページ。詳細なスペック、カラーバリエーション、取扱事業者情報、アクセサリー情報などを掲載。

Snapdragon 7s Gen 3製品概要(Qualcomm)(外部)
Qualcommの公式サイト。CPUアーキテクチャ、AI性能、カメラ機能、5G対応などの技術仕様を詳細に記載。

AQUOS sense10購入キャンペーン(外部)
「AQUOS sense10 私のセンス、新登場キャンペーン」の公式サイト。5,000円相当プレゼントの応募方法を掲載。

【参考動画】

【参考記事】

Qualcomm makes the Snapdragon 7s Gen 3 official(外部)
Qualcommが2024年8月にSnapdragon 7s Gen 3を正式発表した際の記事。前世代比の性能向上数値を詳細に報じている。

生成AIが追い風!2025年の高価格帯スマホSoC出荷が大幅増(外部)
2025年のスマートフォンSoC市場に関する調査記事。ミドルレンジ帯でのAI対応SoC出荷台数が前年比3倍増と予測。

2025年夏に急増した8~10万円台の新機種、AIがスマホ市場を変える(外部)
2025年のスマートフォン市場におけるAI機能の普及状況を分析。ミドルレンジでのAI機能搭載が市場トレンドに。

【編集部後記】

AQUOS sense10のVocalist機能を見て、「AI機能って本当に日常生活で使えるのかな?」と感じた方も多いのではないでしょうか。ミドルレンジスマートフォンでもここまでのAI体験ができる時代になりました。

みなさんはスマートフォンを選ぶ際、何を重視していますか?カメラの画質、バッテリーの持ち、それとも価格でしょうか。6万円台でハイエンドモデル譲りのAI機能が手に入るなら、次の買い替えの選択肢が広がるかもしれません。ぜひ、みなさんのスマートフォン選びの基準について考えてみてください。

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omote
デザイン、ライティング、Web制作を行っています。AI分野と、ワクワクするような進化を遂げるロボティクス分野について関心を持っています。AIについては私自身子を持つ親として、技術や芸術、または精神面におけるAIと人との共存について、読者の皆さんと共に学び、考えていけたらと思っています。

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