Appleは、Apple Vision Pro向けに初のライブスポーツコンテンツとなるロサンゼルス・レイカーズの試合を配信すると発表した。一部の試合がApple Immersive Videoフォーマットで視聴可能になる。
Appleによれば、ユーザーはコートサイドにいるかのような体験ができ、従来の放送では不可能な視点を楽しめるという。Vision Proにはこれまで、潜水艦内のショート作品、メタリカのコンサート、2024年NBAオールスターウィークエンドのショートフィルムなどのイマーシブコンテンツが提供されてきたが、ライブスポーツは今回が初となる。
最初のレイカーズ試合は2026年初頭にNBAアプリまたは新しいSpectrum SportsNetアプリで視聴可能になる。試合の完全なスケジュールは2025年秋後半に発表予定だ。視聴にはvisionOS 26が必要となる。
From: The Vision Pro is getting its first live ‘immersive’ sports
【編集部解説】
Apple Vision Proが空間コンピューティングの次なる段階に進もうとしています。今回発表されたレイカーズのライブ配信は、単なるコンテンツ追加以上の意味を持つでしょう。
これまでVision Pro向けのイマーシブコンテンツは、事前収録された映像が中心でした。潜水艦内のドラマやメタリカのコンサート映像は確かに没入感がありますが、あくまで過去の出来事です。ライブスポーツの配信は、リアルタイム性という新たな要素を加えることになります。
Apple Immersive Videoの技術的な特徴は、180度の視野角と8K解像度、空間オーディオの組み合わせにあります。従来のVRスポーツ配信との違いは、Appleが「従来の放送では不可能な視点」と表現している点に表れています。複数のカメラアングルを自由に切り替えられる可能性や、コート上の選手との距離感をより正確に再現できる技術が期待されます。
しかし課題も存在します。まず対象が「一部の試合」に限定されている点です。全試合ではなく厳選された試合のみの配信となるため、ファンにとっては見たい試合が必ずしも対象になるとは限りません。また、visionOS 26という新しいOSバージョンが必要となることで、ユーザー側にも一定のハードルが生じます。
レイカーズという特定チームでのスタート方式も注目に値します。NBAは30チームありますが、まずは人気チームで試験的に開始し、反応を見ながら拡大していく戦略と考えられます。配信プラットフォームがNBAアプリとSpectrum SportsNetアプリという複数のチャネルを用意している点も、視聴者の選択肢を広げる意図が読み取れます。
この取り組みは、スポーツ観戦体験の未来を占う試金石となるでしょう。成功すれば、他のスポーツリーグや他のチームへと拡大し、空間コンピューティングがエンターテインメント消費の標準的な選択肢の一つになる可能性があります。一方で、普及のためにはVision Pro本体の価格や装着の快適性といった根本的な課題も解決していく必要があります。
【用語解説】
Apple Immersive Video
Appleが開発した180度視野角の空間映像フォーマット。8K解像度と空間オーディオを組み合わせ、Vision Pro向けに最適化されており、視聴者の正面に焦点を当てた高品質な没入体験を提供する。
コートサイド
バスケットボールコートの最前列席を指す。NBAでは最も高額なチケットとなり、選手のプレーを至近距離で体験できる特等席として知られる。この視点を再現することが、イマーシブ体験の重要な価値提案となっている。
【参考リンク】
Apple Vision Pro 公式サイト(外部)
Appleの空間コンピューティングデバイス。拡張現実と仮想現実を融合させた体験を提供する。2024年2月に米国で発売された。
NBA 公式サイト(外部)
全米プロバスケットボール協会の公式サイト。試合情報、選手データ、動画コンテンツを提供している。
Los Angeles Lakers 公式サイト(外部)
NBAの名門チームであるロサンゼルス・レイカーズの公式サイト。チーム情報、試合スケジュールなどを提供。
Spectrum SportsNet(外部)
レイカーズの試合を放送する地域スポーツネットワーク。南カリフォルニア地域でのスポーツ中継を専門とする。
【参考記事】
Apple Vision Pro is getting immersive NBA Games – TechRadar(外部)
レイカーズの試合がApple Immersive形式でライブ配信されることを初報。Blackmagic URSA Cine Immersive Liveカメラの使用、visionOS 26の必要性、2026年初頭の配信開始について詳細に報道。
Apple Vision Pro to feature live immersive Lakers games – 9to5Mac(外部)
Charter Communicationsの公式プレスリリースを引用。Spectrum SportsNetアプリでの配信、最大150Mbpsのストリーミング、3日間のオンデマンド視聴について報道。
Lakers games are coming to Apple Immersive on Vision Pro – The Mac Observer(外部)
コートサイドとバスケット下のカメラ配置、地域制限、国際的な視聴可能地域について報道。日本を含む8カ国での視聴可能性に言及。
Lakers fans will get court-side seats with Apple Vision Pro – AppleInsider(外部)
AppleとSpectrumのパートナーシップを詳細に報道。2025-26シーズンの配信予定、レイカーズ地域内でのライブ配信と他地域での録画配信の違いを解説。
Immersive live NBA games coming to Vision Pro – Six Colors(外部)
Apple専門ジャーナリストJason Snell氏によるコメント付き報道。Blackmagic URSA Cine Immersive Liveカメラの技術的側面と2026年初頭の配信開始を報道。
【編集部後記】
スポーツ観戦の体験は、これからどこまで進化していくのでしょうか。コートサイドの臨場感を自宅で味わえる未来は、私たちの娯楽のあり方そのものを変えていくかもしれません。Vision Proをお持ちの方は、ぜひこの新しい視聴体験を試してみてください。スタジアムに足を運ぶ価値と、テクノロジーが創り出す新しい体験価値。両者の関係性は今後どう変化していくのでしょうか。