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Apple、ドラマ『セヴェランス』の架空端末─「Lumon Terminal Pro」をこっそり公式サイトに潜入させる

 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-03-28 15:56 by admin

2025年3月26日、米Appleの公式ウェブサイトのMacカテゴリに「Lumon Terminal Pro」という新製品が掲載された。このデバイスはレトロスタイルの端末で、シンプルな白いターミナル、小さなモノクロディスプレイ、ナビゲーション用のトラックボールを搭載している。

製品ページによると、Terminal Proは「集中的な生産性」と「気が散らない計算環境」のために設計され、インターネット接続なし、ファイル転送機能なし、プリインストールされた生産性アプリケーションのみ、生体認証ログイン、「職場統合」機能などの特徴を持つという独自OS「LumonOS」を搭載している。また「認知分割技術(Cognitive Partitioning Technology)」と呼ばれる機能も記載されており、ユーザーが「仕事の懸念と個人生活を分離する」のに役立つと説明されている。価格は1,999ドルで、発売日は2025年4月1日と「近日発売予定」と記載されていた。

テクノロジーアナリストのマヤ・ロドリゲス氏は「これはAppleのストリーミング番組の中で最も創造的なマーケティングタイアップかもしれません」と述べている。

「Severance(セヴェランス)」の第2シーズンは2025年4月にApple TV+でプレミア公開される予定である。

公式トレーラー

from The Lumon Terminal Pro computer pops up on Apple’s website

【編集部解説】

みなさん、今回のAppleの宣伝作戦、かなり面白いと思いませんか?ドラマ「セヴェランス」の世界を現実に持ち込むという遊び心満載の取り組みで、思わず「おっ」と声が出てしまうような仕掛けです。

「セヴェランス」というドラマは、仕事中の記憶とプライベートの記憶を完全に分けてしまう手術を受けた会社員たちの物語。「会社のことは家に持ち帰らない」を極端に突き詰めた設定で、現代の働き方を皮肉った内容になっています。

このドラマ、実はかなりの人気作品なんです。Business Insiderによると、今年2月にはApple TV+で最も視聴された作品として「テッド・ラッソ」を抜き、アメリカでは約6億分も視聴されています。大手映画評論サイトであるRotten Tomatoesでは95%という驚異的な高評価を獲得し、エミー賞にも多数ノミネートされた話題作です。

今回Appleは、このドラマに登場する架空の会社「ルーモン産業」のコンピューター「Lumon Terminal Pro」を、本物のMac製品と一緒に公式サイトに載せてしまいました。公式サイトのMacセクションに、実在するMacBook AirやiMacと並んで、「New」の赤いラベル付きで堂々と掲載されているのです。「え、これ本当に買えるの?」と思わせるような本格的な製品ページで、ドラマファンをニヤリとさせる仕掛けです。

この手法の面白いところは、ドラマの世界と現実世界の境目をわざとぼやかしている点。私たちは単に画面の向こう側の物語を見るだけでなく、その世界の一部になった気分を味わえます。まるで、好きな映画のセットに実際に足を踏み入れたような感覚です。

「セヴェランス」の魅力は、不思議な設定だけでなく、出演者の演技の素晴らしさにもあります。アダム・スコットやパトリシア・アークエットといった実力派俳優陣に加え、「ナイト ミュージアム」などで知られるベン・スティラーが監督を務めています。オフィスものとSFとサスペンスが混ざった独特の世界観は、一度見始めるとハマってしまうこと間違いなしです。

実はAppleのこの宣伝戦略、「Lumon Terminal Pro」の製品ページだけではありません。ドラマの架空企業「ルーモン産業」のLinkedInページを作成したり、ニューヨークのグランドセントラル駅でポップアップイベントを開催したり、ロンドンでもイベントを実施したりと、多角的な展開をしています。さらには、ドラマの編集者ジェフリー・リッチマン氏がMacを使用して作業する様子を紹介する短編映像も公開し、製品とコンテンツの自然な結びつきを演出しています。

マーケティング専門家によれば、このような「体験型マーケティング」は、特にテクノロジー企業にとって大きな効果があるとされています。複雑なテクノロジーを人間味のあるものにし、製品の価値を実感させ、ブランドとの感情的なつながりを作り出すことができるのです。Appleの「#ShotOniPhone」キャンペーンも同様の成功例で、Instagramでは2900万以上のタグが付けられるほどの人気を博しています。

テレビドラマの楽しみ方が、ただ見るだけから「体験する」方向に変わりつつある今、Appleのこの遊び心ある宣伝は、これからの映像作品の新しい楽しみ方を示しているのかもしれません。

編集部追記

記事を書いている内に筆者も気になってしまいました・・・、「セヴェランス」
SF要素が強く、制作にAppleが携わっていることもあり、ドラマの世界観のセンスもAppleの精神が強く反映されていることが予告からも分かります!!
最近はNetfrixとAmazon primevideoばかりを使っていたので、これを機にApple TV+もチェックしてみたいです!!皆さんも是非、観てみてください!!

【用語解説】

セヴェランス(Severance)
Apple TV+で配信されているドラマシリーズ。仕事中の記憶とプライベートの記憶を外科的に分離(セヴェランス)する手術を受けた会社員たちの物語である。ベン・スティラーが監督・製作総指揮を務め、2022年に第1シーズンが配信され、エミー賞に多数ノミネートされた話題作だ。

ルーモン産業(Lumon Industries)
「セヴェランス」に登場する架空の企業。従業員に記憶分離手術を施し、仕事中の記憶とプライベートの記憶を完全に分けている。

MDRターミナル
ドラマ「セヴェランス」内で、ルーモン産業の「マクロデータ精製(MDR)」部門の従業員が使用する特殊なコンピューター端末のこと。

【参考リンク】

Apple公式サイト(外部)Appleの製品、サービス、ニュースなどを提供する公式サイト。今回のLumon Terminal Proもここに掲載された。

Apple TV+(外部)Appleのサブスクリプション型動画ストリーミングサービス。「セヴェランス」などのオリジナルコンテンツを配信している。

セヴェランス公式ページ(外部)ドラマ「セヴェランス」の公式ページ。シリーズの情報やエピソードの視聴が可能。

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乗杉 海
新しいものが大好きなゲーマー系ライターです!
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