Last Updated on 2024-06-14 20:59 by 荒木 啓介
CleverCards、ダブリンに拠点を置くデジタル決済企業は、投資家から800万ユーロ(約8.6百万ドル)の資金を調達した。この資金調達には、従業員向けバウチャーや福利厚生プラットフォームであるPluxeeが含まれる。CleverCardsは2019年に設立され、デジタルプラットフォームと設定可能な経費カードを連携させ、企業が従業員の企業支払いカードの使用方法を管理できるようにしている。このシステムでは、特定の従業員のみが使用でき、不適切と見なされる取引をブロックできるプリペイドカードを企業が配布できる。
CleverCardsのCEO、Kealan Lennonは、このプラットフォームが企業の財務管理を目的としており、デジタル化により顧客がボタン一つで設定変更が可能になると述べた。CleverCardsは、新たな資金調達ラウンドでPluxeeを主要投資家として迎え、これまでに総額で2800万ユーロ以上を調達している。
CleverCardsは、eBay、PaddyPower、Betfair、Accenture、Microsoft、Appleなど、1万社以上のビジネス顧客を獲得している。また、公共セクターの組織とも協力している。2022年には、イギリス政府と提携し、直接デビットで支払いを行っているが、燃料価格の上昇により追加の財政支援を求めているスマートメーター利用者に社会福祉支払いを行うためのカードを提供した。これらのカードは、特定の公共事業者のウェブサイトでの請求書支払いにのみ使用できる。
CleverCardsは、受取人の身元確認チェックに人工知能を使用し、詐欺を防ぐことに貢献した。Lennonは、CleverCardsの資金調達が、フィンテック業界での取引や資金調達が困難な市場環境の中で行われたことを強調した。CleverCardsは、AdyenやStripeなどの決済技術大手からビジネスを奪取しているとも述べた。
新たな資金を使って、CleverCardsはビジネスの拡大、製品のスケールアップ、さらなる機会の探求を目指す。また、支払い技術における経験豊富な5人の非常勤取締役を取締役会に迎えた。
【ニュース解説】
CleverCardsは、企業が従業員の経費利用をより効果的に管理できるようにするデジタル決済プラットフォームです。このシステムを通じて、企業は特定の従業員にのみ使用を許可されたプリペイドカードを提供し、不適切な取引をブロックすることが可能になります。この技術は、従業員による経費の不正使用を防ぐことを目的としています。
このプラットフォームの導入により、企業は経費管理の精度を高めることができます。例えば、従業員が業務に関連しない商品やサービスの購入に企業のカードを使用することを防ぐことができます。これにより、企業の財務管理が強化され、不必要な支出を削減することが可能になります。
CleverCardsの技術は、特に経費報告の不正を防ぐためのものですが、この技術の応用範囲はそれに留まりません。例えば、公共セクターでの社会福祉支払いにおいても、特定の用途に限定して支払いを行うことができるため、資金の適切な使用を保証することができます。
しかし、このようなシステムの導入には、プライバシーや個人の自由に対する潜在的なリスクも伴います。従業員の購買行動を厳しく制限することは、信頼の欠如を示すことにもなりかねず、労働者と雇用者の間の関係に影響を与える可能性があります。
また、この技術の普及は、決済システムや経費管理ソフトウェアの市場における競争構造にも影響を与える可能性があります。CleverCardsがAdyenやStripeなどの既存の大手企業からビジネスを奪取していることは、市場における新たな競争の動向を示しています。これにより、決済技術の革新が促進され、企業や消費者にとってより良いサービスが提供される可能性があります。
長期的には、CleverCardsのようなプラットフォームが広く採用されることで、企業の経費管理がより透明で効率的になることが期待されます。しかし、その過程でプライバシー保護や個人の自由に対する配慮も重要な課題となるでしょう。また、規制当局は、このような新技術が消費者保護や市場の公正性に与える影響を慎重に評価し、適切な規制枠組みを整備する必要があります。
from This fintech configures expense cards to block misuse — and investors just backed it with millions.