スポーツストリーミングサービスDAZNは、アメリカのMeta Questユーザー向けに無料アプリ「DAZN: FIFA Club World Cup XR Experience」を提供すると発表した。
このアプリはQuest 3、Quest 3S、Quest Pro、Quest 2に対応し、FIFAクラブワールドカップの全試合を視聴できる。アプリは3Dテーブルトップビューを搭載し、選手の位置を追跡したジオラマスケールの仮想表現でライブ試合を再現する。準々決勝は7月4日に開始され、決勝は7月13日に開催される。準々決勝、準決勝、決勝は180度没入型ストリーミングでも配信される。この機能はNBAがApple Vision Pro向けに提供した3Dテーブルトップビューと類似している。アプリはMeta Horizon Storeで無料配布されるが、利用はアメリカ在住のQuestユーザーに限定される。
From:
DAZN Gives US Quest Owners A Free 3D Tabletop View Of FIFA Club World Cup Games For Free
【編集部解説】
今回のDAZNによるFIFAクラブワールドカップVR配信は、スポーツエンターテインメントの新たな転換点を示すマイルストーンと言えるでしょう。単なる新サービスの発表にとどまらず、VR技術がマスマーケットに本格参入する象徴的な出来事として捉える必要があります。
注目すべきは、DAZNが全試合を無料で提供する戦略です。これは従来の有料配信モデルとは大きく異なるアプローチで、VRスポーツ視聴体験の普及促進を狙った先行投資と考えられます。無料提供により、より多くのユーザーがVRスポーツ体験に触れる機会を創出し、将来的なユーザー基盤拡大への投資として位置づけられるでしょう。
技術的な観点では、3Dテーブルトップビューと180度没入型ストリーミングの組み合わせが興味深い選択です。NBAがApple Vision Pro向けに展開した同様の機能と比較すると、Meta Questプラットフォームでの実装は、より幅広いユーザーベースへのアクセスを可能にします。Apple Vision Proの高価格帯に対し、Quest製品群の相対的な手頃さは、VR技術の民主化において重要な要素となります。
地域制限の問題は、スポーツ配信業界の複雑なライセンス構造を浮き彫りにしています。元記事でも指摘されているように、サッカーへの関心が相対的に低いアメリカでのみサービスが提供される皮肉は、グローバルなデジタルサービス展開における法的・商業的障壁の現実を示しています。世界各地のQuestユーザーがこの体験から除外される状況は、今後のスポーツVR配信における課題を予見させるものです。
長期的には、このサービスが成功すれば、他のスポーツリーグや配信業者による類似サービスの展開が加速すると予想されます。特に、より大規模なスポーツイベントでのVR配信実装が現実味を帯びてくるでしょう。また、広告収益モデルの進化や、VR空間での新たなファンエンゲージメント手法の開発も期待されます。
一方で、技術的な課題も存在します。VRスポーツストリーミングには高い帯域幅要件があり、ユーザーのインターネット環境によっては体験品質が左右される可能性があります。また、長時間のVR視聴による疲労やVR酔いなど、ユーザビリティの課題も考慮する必要があります。
【用語解説】
3Dテーブルトップビュー
VRヘッドセット内で、実際のスポーツ試合をジオラマのような縮小版で表示する機能。選手の動きを追跡し、仮想空間内でミニチュアスケールの試合として再現する。
180度没入型ストリーミング
VRヘッドセットで視聴者の視界180度をカバーする映像配信方式。360度映像よりも帯域幅要件が少なく、より安定した配信が可能。
Horizon OS
Meta社がVRヘッドセット向けに開発したオペレーティングシステム。Quest シリーズで採用されており、VRアプリケーションの実行基盤となる。
【参考リンク】
DAZN公式サイト(外部)
世界最大級のスポーツストリーミングプラットフォーム。ボクシング、MMA、サッカーなど幅広いスポーツコンテンツを配信。
Meta Quest公式サイト(外部)
Meta社のVR・MRヘッドセット製品サイト。Quest製品情報とVRアプリストアへのアクセスが可能。
FIFA Club World Cup 2025公式サイト(外部)
2025年FIFAクラブワールドカップの公式サイト。出場32チーム、試合スケジュール、会場情報を掲載。
DAZN: FIFA Club World Cup XR Experience – Meta Store(外部)
今回発表されたVRアプリのMeta Horizon Store公式ページ。アプリのダウンロードと詳細情報を確認可能。
【参考動画】
【参考記事】
【編集部後記】
VRでスポーツ観戦する体験に興味はありませんか?私自身、従来のテレビ画面越しの観戦とは全く異なる没入感を想像すると胸が躍ります。ただ、アメリカ限定という制約や、日本での展開時期への疑問もありますね。皆さんは、もしこのようなVRスポーツ配信が日本でも利用可能になったら、どのスポーツを最初に体験してみたいでしょうか?また、VR観戦の普及にはどのような課題があると思われますか?テクノロジーがスポーツ体験をどう変えていくのか、一緒に考えていけたら嬉しいです。