Spatial PhoneでVR内でのiPhone・Android操作が実現、Meta Quest向け12ドルアプリが解決するVRの課題とは

 - innovaTopia - (イノベトピア)

開発者のGulzar Ahmed氏が開発したSpatial PhoneアプリがQuest向けに提供されている。このアプリは8.99ドルでMeta Horizon Storeで販売されており、VR環境内でiPhoneやAndroidの画面をマルチタスキングウィンドウとして表示できる。当初はAndroidサポートで開始され、現在はiPhoneにも対応している。

セットアップはQuestにアプリをインストールし、スマートフォン用コンパニオンアプリと短いコードでペアリングするだけで完了する。iPhoneから配信されるストリーミングには大幅な遅延があるが、メッセージ確認や通知チェックには十分な画質を提供する。最近のアップデートでiPhoneユーザー向けにBluetooth制御機能が追加され、iOSのアクセシビリティ設定でAssistiveTouchを使用することでVRコントローラーによるハンズフリー操作が可能になった。

Ahmed氏によるとApple Vision ProでのAndroidデバイスサポートもロードマップに含まれている。類似機能としてImmersedがアプリ内にスマートフォンストリーミングを追加し、モトローラが自社スマートフォン専用の画面ミラーリング機能をQuest向けにリリースしている。

From: 文献リンクSpatial Phone Lets You Use Your iPhone Or Android While Immersed On Quest

【編集部解説】

VRとスマートフォンの統合という課題に正面から取り組むSpatial Phoneアプリは、VR/XRエコシステムにおける重要な転換点を示すプロダクトです。このアプリが解決しようとしている問題の本質を理解するには、現在のVRユーザーが直面している根本的なジレンマを知る必要があります。

VRヘッドセットを装着した状態では、物理世界からの情報が完全に遮断されます。スマートフォンの通知確認や簡単な操作のためにヘッドセットを外すという行為は、没入体験の連続性を破る大きな障壁となっていました。Spatial Phoneは目立った遅延があるものの実用的な範囲でのスマートフォン画面をVR空間にストリーミングすることで、この問題に対する解決策を提示しています。

技術的な観点から見ると、このアプリはピアツーピア接続による暗号化通信を採用しており、プライバシー保護にも配慮した設計となっています。初期はAndroid専用でしたが、現在はiPhoneにも対応し、さらにApple Vision ProでのAndroidサポートも予定されています。

重要なのは、競合するソリューションと比較した際の立ち位置です。Immersedアプリも同様の機能を提供していますが、主にPCとの連携に特化しており、スマートフォン統合は限定的な機能として位置づけられています。一方、モトローラは自社スマートフォン専用の画面ミラーリング機能を提供していますが、デバイスメーカー固有の制約があります。

このアプリが示す未来のコンピューティングビジョンは、デバイス間の境界を溶かすというものです。Apple Vision Proの空間コンピューティングコンセプトと同様に、異なるデバイスが一つの連続した作業空間として機能する世界を予見させます。

ポジティブな側面として、VRの実用性向上に大きく貢献する可能性があります。ワークアウトやゲーム、作業中に外界との接続を維持できることで、VRの日常使用における最大の障壁の一つが取り除かれます。

長期的な視点では、このようなクロスプラットフォーム統合技術がXRエコシステム全体の成熟度を押し上げることになるでしょう。特に、MetaのQuestエコシステムとAppleのVision Proエコシステムが、それぞれ独自の空間コンピューティング体験を構築する中で、サードパーティ開発者による橋渡し的なソリューションの重要性は増していくと考えられます。

【用語解説】

AssistiveTouch – iOSのアクセシビリティ機能で、物理的なボタンやジェスチャーが困難なユーザー向けに、画面上に仮想ボタンを表示してデバイスを操作できるようにする機能である。

Bluetooth制御 – 近距離無線通信技術を使用してデバイス間で制御信号を送受信する技術。今回の場合はQuestヘッドセットからiPhoneを操作するために使用される。

マルチタスキングウィンドウ – VR環境内で複数のアプリケーションやコンテンツを同時に表示し、切り替えながら操作できるユーザーインターフェース機能である。

【参考リンク】

Meta Horizon Store – Spatial Phone(外部)
MetaのQuest向けアプリストア公式ページ。12ドルで販売中

App Store – Spatial Phone Mirror(外部)
iPhone・iPad用コンパニオンアプリ。iOS 14.0以降対応で無料

Apple Vision Pro公式サイト(外部)
Appleの空間コンピューティングデバイス技術仕様ページ

Google Play Store – Spatial Phone(外部)
Android用アプリ公式ページ。Android 8.0以降対応

【参考動画】

Spatial Phone: Mirror and Control – 実機デモンストレーション
実際のVRユーザーがReal VR Fishing中にSpatial Phoneを使用する様子を紹介。VR体験を中断することなくスマートフォンにアクセスする実用例を確認できる。

【参考記事】

Spatial Phone for Meta Quest 3 mirrors your smartphone into the VR headset(外部)
技術的詳細とセットアップ課題について詳述した記事

Spatial Phone – Mirror&Control – Google Play Store(外部)
公式アプリストアでの技術仕様とユーザーレビューを掲載

Immersed – Apps on Google Play(外部)
競合するVRアプリImmersedの公式情報ページ

【編集部後記】

VRとスマートフォンの境界が溶けていく未来を、皆さんはどう捉えられるでしょうか。Spatial Phoneのようなアプリが示すクロスデバイス体験は、私たちのデジタルライフをどう変化させていくのか、とても興味深いテーマだと感じています。現在VRヘッドセットをお使いの方は、どのような場面でスマートフォンとの連携に不便を感じられているでしょうか。また、まだVRに触れていない方にとって、このような統合機能があることでVR導入への心理的ハードルは下がるものでしょうか。ぜひ皆さんの率直な感想やご意見をお聞かせください。

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乗杉 海
新しいものが大好きなゲーマー系ライターです!

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