Meta、スマートグラス向けSDK「Wearables Device Access Toolkit」発表 開発者がカメラ・マイクにアクセス可能に

[更新]2025年9月19日18:43

 - innovaTopia - (イノベトピア)

MetaはWearables Device Access Toolkit(ウェアラブルデバイスアクセスツールキット)をリリースし、スマートフォンアプリがスマートグラスと連携できるようになると発表した。2025年後半にDeveloper Previewを開始し、2026年に一般公開を予定である。

初回リリースでは、現行のAIグラス製品ラインナップを対象に、開発者はカメラ、スピーカー、マイクアレイにアクセス可能である。開発者は一人称視点のライブストリーミング機能や、カメラ映像をアプリ経由でサードパーティのマルチモーダルAIモデルに処理させることも可能。

ただし、ローンチ時点ではMeta AIとの統合はサポートされず、ディスプレイHUDへの画像送信やニューラルバンドからのジェスチャーアクセスも対応しない。Twitch、Microsoft、Logitech Streamlabsなどの先行パートナーが既に実験を開始しており、18Birdiesはゴルフアプリでリアルタイム距離測定とクラブ推奨機能を開発している。

From: 文献リンクMeta’s New SDK Will Let Developers Build Apps For Its Smart Glasses

Meta Connect 2025で発表されたRay-Ban Display発表に関する記事です。

Meta Connect 2025で発表されたHorizon Studioに関する記事です。

【編集部解説】

MetaのWearables Device Access Toolkitは、スマートグラス業界における重要な転換点を示しています。これまでMetaのスマートグラスは同社のアプリケーションエコシステムに限定されていましたが、今回のSDK提供により、サードパーティ開発者による自由な機能拡張が可能になります。

このSDKが提供する機能範囲を理解するには、ハードウェアレベルでの制約を把握することが重要です。初期リリースではカメラ、スピーカー、マイクアレイのみがアクセス可能で、Meta AIとの直接統合は含まれませんが、将来対応する可能性が示されています。

ポジティブな側面として、開発者は独自のマルチモーダルAIモデルを活用することで、Meta AIでは実現できない特化型の機能を構築できるようになります。例えば、18Birdiesのゴルフアプリケーションは、リアルタイムでの距離測定とクラブ推奨を提供し、従来のスマートフォンベースのゴルフアプリでは不可能だった没入感のある体験を実現しています。

このSDKの提供はAR(拡張現実)エコシステムの基盤構築における重要なステップです。現在はディスプレイ非搭載グラスが対象ですが、将来的にはDisplay HUDやNeural Bandとの統合により、より高度なAR体験が可能になると発表されました。これにより、スマートグラスは単なる録画・撮影デバイスから、日常生活に深く統合された情報処理プラットフォームへと進化していくと予想されます。

【用語解説】

Wearables Device Access Toolkit:Metaが開発したスマートグラス向けのソフトウェア開発キット。サードパーティ開発者がMetaのスマートグラスの機能にアクセスできるAPI群を提供する。

マルチモーダルAIモデル:テキスト、画像、音声など複数のデータ形式を同時に処理・理解できる人工知能システム。視覚と聴覚情報を統合した高度な分析が可能。

Ray-Ban Meta:MetaとRay-Banが共同開発したスマートグラス製品シリーズ。カメラ、スピーカー、マイクを搭載し、Meta AIとの音声対話機能を備える。

Display HUD:ヘッドアップディスプレイの略。レンズ上に直接情報を表示する技術で、視線を逸らすことなく必要な情報を確認できる次世代スマートグラス機能。

Neural Band:Metaが開発中の手首装着型デバイス。神経信号を読み取り、ジェスチャーや意図をスマートグラスに伝達するインターフェース技術。

Seeing AI:Microsoftが開発した視覚障害者支援アプリケーション。カメラで撮影した画像を音声で説明し、テキスト読み上げや物体認識機能を提供する。

18Birdies:ゴルフ愛好家向けのモバイルアプリケーション。スコア管理、コース情報、距離測定機能を提供し、今回Metaのスマートグラスとの連携実験を実施している。

【参考リンク】

Meta for Developers – Wearables(外部)
Metaが提供するウェアラブルデバイス開発者向けの公式ドキュメント

Ray-Ban | Meta Smart Glasses(外部)
Ray-Ban Metaスマートグラスの公式製品ページ。機能紹介、技術仕様を掲載

Microsoft Seeing AI(外部)
Microsoftが開発した視覚障害者支援AIアプリの公式サイト

【参考記事】

Meta is opening up its smart glasses to developers(外部)
The VergeによるMeta Wearables Device Access Toolkitの詳細分析記事

Meta will let outside developers create AI-powered apps for its smart glasses(外部)
EngadgetによるSDK発表のニュース報道と先行パートナー企業の活用事例

Introducing the Meta Wearables Device Access Toolkit(外部)
Meta公式開発者ブログによるWearables Device Access Toolkitの技術仕様説明

Meta Smart Glasses Finally Open to Developers in 2025(外部)
VR業界専門メディアによるMeta SDKの戦略的意義の分析記事

【編集部後記】

Metaが開発者にスマートグラスのカメラとマイクへのアクセスを開放することで、どのようなアプリケーションが生まれるでしょうか。ゴルフでの距離測定から視覚障害者支援まで、既に興味深い実例が登場していますが、日常生活での実用性はどこまで広がるのでしょう。一方で常時録画機能への第三者アクセスは、プライバシー保護やバッテリー消費の課題も浮き彫りにします。また、Meta AIとの統合が制限される中、独自AIモデルを活用した開発コストと技術ハードルをクリアできる開発者はどれほど存在するのか気になるところです。

投稿者アバター
乗杉 海
SF小説やゲームカルチャーをきっかけに、エンターテインメントとテクノロジーが交わる領域を探究しているライターです。 SF作品が描く未来社会や、ビデオゲームが生み出すメタフィクション的な世界観に刺激を受けてきました。現在は、AI生成コンテンツやVR/AR、インタラクティブメディアの進化といったテーマを幅広く取り上げています。 デジタルエンターテインメントの未来が、人の認知や感情にどのように働きかけるのかを分析しながら、テクノロジーが切り開く新しい可能性を追いかけています。 デジタルエンターテインメントの未来形がいかに人間の認知と感情に働きかけるかを分析し、テクノロジーが創造する新しい未来の可能性を追求しています。

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