Amazon Web ServicesとStability AIが2025年9月18日、Amazon BedrockでStability AI Image Servicesの提供開始を発表した。
これらのサービスは、Amazon Bedrock API経由で提供される即座に使用可能なメディア編集機能である。既存のStable Diffusion 3.5モデル(SD3.5)とStable Image CoreおよびUltraモデルの機能を拡張し、9つのツールを2つのカテゴリーに分けて提供する。
編集カテゴリーには、オブジェクト消去ツール、背景除去ツール、検索・再配色ツール、検索・置換ツール、インペイントツールが含まれる。制御カテゴリーには、スケッチツール、構造ツール、スタイルガイドツール、スタイル転送ツールが含まれる。
これらのツールを利用するには、AWSアカウントと適切なIAM権限が必要。また、BedrockコンソールからStability AI Image Servicesモデルへのアクセスを有効化する必要がある。
なお、デモ手順を追う場合は、SageMakerノートブックインスタンスが前提環境として利用されているが、Bedrock自体の利用に必須ではない。
From: Scale visual production using Stability AI Image Services in Amazon Bedrock
【編集部解説】
Amazon BedrockにStability AI Image Servicesが統合されたことで、企業のクリエイティブワークフローが根本的に変わろうとしています。これまで複数のソフトウェアを駆使して行っていた画像編集作業が、単一のAPI経由で完結できるようになりました。
この発表の背景には、生成AI市場における激しい競争があります。OpenAIのDALL-E 3やMidjourneyといった競合サービスに対抗するため、AWSとStability AIは企業向けに特化したソリューションを提供する戦略を取っています。特に注目すべきは、9つの専門ツールを「Edit」と「Control」の2カテゴリーに体系化している点です。
技術的な観点から見ると、これらのツールはStable Diffusion 3.5モデル(SD3.5)やStable Image CoreおよびUltraモデルをベースにしており、従来の画像生成から一歩進んで画像編集・加工領域にまで範囲を拡大しています。例えば、オブジェクト消去ツールは背景の一貫性を保ちながら不要な要素を除去し、検索・再配色ツールは新たな撮影なしに製品の色バリエーションを生成できます。
企業にとって最も重要な変化は、コスト構造の改善でしょう。従来であれば、製品写真の背景除去や色変更のために専門のフォトグラファーやデザイナーを雇う必要がありましたが、これらの作業をAPI経由で自動化できるようになります。特にeコマース企業にとっては、商品カタログの制作効率が劇的に向上する可能性があります。
一方で、クリエイティブ業界への影響も考慮する必要があります。これらのツールが普及すれば、従来の画像編集業務の一部が自動化され、関連職種の雇用に影響を与える可能性もあります。ただし、より創造性の高い作業に人材をシフトできるという前向きな見方もできるでしょう。
セキュリティ面では、Amazon Bedrockのエンタープライズグレードインフラを活用することで、企業の機密情報を外部サービスに送信するリスクを回避できます。これは、ブランドイメージや製品情報の漏洩を懸念する企業にとって重要な要素となります。
将来的には、これらのツールがさらに高度化し、動画編集や3Dモデリングの領域にも拡張される可能性があります。現時点では静止画に限定されていますが、技術の進歩によって、より包括的なメディア制作プラットフォームへと発展していくことが予想されます。
【用語解説】
Amazon Bedrock
AWSが提供する生成AI向けのマネージドサービス。複数のAIモデルに統一されたAPI経由でアクセスでき、企業がセキュアな環境で生成AIを活用できる。
Stable Diffusion
Stability AIが開発したオープンソースの画像生成AIモデル。テキストプロンプトから高品質な画像を生成する拡散モデルの一種である。
API(Application Programming Interface)
異なるソフトウェア間でデータやサービスを連携させるための仕組み。開発者が外部サービスの機能を自社アプリケーションに組み込める。
インペイント(Inpaint)
画像の指定された領域を自動的に補完・修復する技術。マスクで指定した部分を周囲の画像情報から自然に復元する。
IAM(Identity and Access Management)
AWSのアクセス制御サービス。ユーザーやアプリケーションがAWSリソースにアクセスする権限を細かく管理できる。
【参考リンク】
Amazon Bedrock(外部)
AWSが提供する生成AI基盤サービスの公式ページ。複数のAIモデルにアクセス可能
Stability AI(外部)
Stable Diffusionなどの画像生成AIモデルを開発する企業の公式サイト
Amazon SageMaker(外部)
AWSの機械学習プラットフォーム。モデルの構築から学習、デプロイまで統合対応
AWS IAM(外部)
AWSのアクセス管理サービス。ユーザーやリソースへの詳細な権限設定が可能
【参考記事】
Stability AI Brings Image Services to Amazon Bedrock(外部)
Stability AI公式による発表記事。エンタープライズ向け画像編集サービスを正式発表
Stability AI’s best image generating models now in Amazon Bedrock(外部)
AWSブログによる発表記事。主要な画像生成モデルがBedrockで利用可能に
【編集部後記】
画像生成AIがここまで身近になってきた今、皆さんの業界ではどのような活用の可能性を感じていますか。Amazon BedrockのStability AI Image Servicesのような統合型プラットフォームが登場したことで、これまで専門知識が必要だった画像編集作業が大きく変わろうとしています。
ワークマンの子供服ブランドロゴが数千円で作成できたり、アサヒビールが従来数百万円かかっていたプロモーション制作を大幅に効率化したりと、すでに多くの企業が実用レベルで活用を始めています。もしかすると、皆さんの日常業務でも「これ、AIでできるかも」と思う場面があるのではないでしょうか。
私たちと一緒に、この技術革新がもたらす新しい可能性について考えてみませんか。