カナダの鉱業会社Aya Gold & Silverは、モロッコ東部ティンギール州のBoumediene プロジェクト西側に位置するAssiramサイトで金・銅鉱床を発見したと発表した。
同社の掘削作業により8キロメートルにわたる金含有帯が確認された。現場から採取された表面サンプルの分析結果では、最大で金12.2g/t、銅4.1%という報告であり、先月の報道にあった金3.34g/tを大幅に超える含有量である。
同社はこの発見を「質的な突破口」と表現している。同地域における近年で最大級の発見と目されている。モロッコはリン酸塩埋蔵量で知られているが、今回の発見により金・銅の潜在的可能性が注目されている。
電気自動車やクリーンエネルギー技術における銅の需要増加も背景にある。発見された鉱化帯の濃度は鉱山運営に必要な基準を上回っており、外国投資や雇用創出、インフラ整備への影響が期待される。
From: 12 Grams of Gold Per Ton? This Newly Found Deposit Holds Some of the World’s Most Valuable Ore
【編集部解説】
今回のAya Gold & Silverによる発見は、単なる鉱床発見以上の意味を持っています。1トンあたり12.2グラムという金濃度は、商業採掘可能な一般的な品位(通常1-3グラム/トン)を大幅に上回る高品位鉱石です。
特に注目すべきは、金と銅が同時に発見された点でしょう。銅の4.1%という含有率も商業採掘には十分な水準で、これは現在の電動化社会において極めて重要な意味を持ちます。
電気自動車1台には従来の内燃機関車の約4倍の銅が使用され、再生可能エネルギーシステムでも銅は不可欠な素材となっています。世界的な脱炭素化の流れの中で、銅需要は今後大幅に増加する見込みであり、このタイミングでの発見は極めて戦略的です。
一方で、モロッコという立地も重要な要素です。同国は政治的に安定しており、ヨーロッパからのアクセスも良好で、鉱業投資にとって魅力的な環境を提供しています。
ただし、8キロメートルという鉱化帯の規模から実際の採掘可能量を算出するには、さらなる詳細な地質調査が必要です。表面サンプルの結果が深部でも同様の品位を維持するかは今後の課題となります。
また、環境への影響や地域コミュニティとの関係構築、インフラ整備など、実際の商業生産までには多くのハードルが存在することも念頭に置く必要があります。
しかし、この発見がアフリカ大陸の鉱物資源ポテンシャルを改めて示すものであることは間違いありません。
【用語解説】
鉱化帯
鉱物が経済的に採掘可能な濃度で集積している地質構造のこと。今回発見された8キロメートルの範囲は、その規模の大きさを示している。
品位
鉱石中に含まれる有用金属の濃度を示す指標。金の場合は通常グラム/トンで表示され、商業採掘には一般的に1グラム/トン以上が必要とされる。
多金属鉱山
複数の金属を同時に採掘する鉱山のこと。金と銅のように異なる金属が同一鉱床に存在することで、採算性が向上する。
表面サンプル
地表近くの岩石や土壌から採取した試料。実際の鉱床評価には、より深部での掘削調査が必要となる。
【参考リンク】
Aya Gold & Silver(外部)
カナダに本社を置く銀の生産企業。モロッコでZgounder銀鉱山を操業する一方、主力探査プロジェクトとしてBoumediene多金属(金、銀、亜鉛、鉛)プロジェクトを推進している。
Azernews(外部)
アゼルバイジャンを拠点とする英語ニュースサイト。中東・中央アジア地域のニュースを配信。
【参考記事】
Morocco mining: Aya Gold & Silver discovers major gold-copper deposit(外部)
Aya Gold & Silverのモロッコでの金・銅鉱床発見について詳細に報じた記事。
Aya Gold & Silver Reports Strong Q2-2025 Results(外部)
Aya Gold & Silverの2025年第2四半期決算発表(2025年8月の内容)。Boumedineプロジェクトの西側許可区域での、地表サンプル採取から最大3.34g/tの金と4.0%の銅を含む鉱化構造を含む、複数の新たな鉱床ターゲットが特定された内容などが掲載されている。
【編集部後記】
この発見を見ていると、私たちが日常使っているスマートフォンや電気自動車の背景にある「資源」という存在について考えさせられます。テクノロジーの進歩と地球の鉱物資源は切っても切れない関係にありますが、皆さんは普段どのくらい意識されているでしょうか?
今回のモロッコでの発見は、アフリカが単なる資源供給地ではなく、グローバルテック産業のキープレーヤーになる可能性を示しています。電動化社会の実現には銅が不可欠ですが、その調達先の多様化は私たちの未来にどんな影響をもたらすのでしょう。
読者の皆さんは、こうした資源発見のニュースから、どのような技術的な可能性や社会変化を想像されますか?ぜひSNSでお聞かせください。