GoogleとFloが総額5600万ドルの和解金|フェムテックアプリの個人データ流用問題

[更新]2025年9月29日08:07

GoogleとFloが総額5600万ドルの和解金|フェムテックアプリの個人データ流用問題 - innovaTopia - (イノベトピア)

人気の生理追跡アプリFlo Healthが、2016年から2019年にかけて月経周期や妊娠情報などユーザーの機密健康データをGoogle、Meta、AppsFlyer、Flurryと共有していた問題で、GoogleとFlo Healthが和解金を支払うことが決まった。

GoogleとFlo Healthは7月に原告と和解に達し、今週サンフランシスコの連邦裁判所で条件が明らかになった。Googleが4,800万ドル、Flo Healthが800万ドルを支払い、2016年11月から2019年2月の間に月経や妊娠情報を入力したユーザーに補償する。共同被告のMetaは先の裁判でカリフォルニア州プライバシー侵害法違反で有責とされ、控訴予定である。

FTCは2021年にFlo Healthがデータプライバシー慣行についてユーザーを欺いていたと結論づけた。現在廃業したFlurryは3月に350万ドルで個別和解した。FloとGoogleは疑惑を否認している。

From: 文献リンクGoogle and Flo to pay $56 million after misusing users’ health data

【編集部解説】

今回のFlo HealthとGoogleによる和解は、ヘルステックアプリが抱える構造的な問題を浮き彫りにしています。生理追跡アプリという極めてセンシティブな個人情報を扱うサービスが、ユーザーの明確な同意なしに第三者へデータを提供していた事実は、デジタルヘルス分野全体への信頼を揺るがす出来事といえるでしょう。

特に注目すべきは、2016年から2019年という3年間にわたって継続的にデータ共有が行われていた点です。この期間は、GDPR施行(2018年5月)やカリフォルニア州消費者プライバシー法制定(2018年6月)など、世界的にプライバシー規制が強化された時期と重なります。にも関わらず、企業側の対応が後手に回っていたことが明らかになりました。

今回の和解金総額5,600万ドルという数字は、一見すると巨額に映りますが、GoogleやMetaのような巨大テック企業にとっては事業規模に対して軽微な負担とも考えられます。実際、記事中でも指摘されているように、こうした和解は「運営費の一部」として処理される可能性があり、根本的な行動変容につながるかは疑問視されています。

ヘルステックアプリの市場規模は急速に拡大しており、特に女性向けのフェムテック分野では数兆円規模の成長が見込まれています。しかし、今回のような事案が続けば、ユーザーの信頼失墜により市場成長に大きなブレーキがかかる恐れもあります。

長期的な視点では、この事案が他のヘルステック企業にとって重要な転換点となる可能性があります。プライバシー保護を競争優位の源泉とする企業と、従来通りのデータ活用モデルを維持する企業との間で、市場での明暗が分かれることも予想されます。

【用語解説】

FTC(Federal Trade Commission)
米国連邦取引委員会。消費者保護と競争促進を目的とする独立行政機関で、企業の不正な商慣行や独占的行為を取り締まる権限を持つ。

カリフォルニア州プライバシー侵害法(California Invasion of Privacy Act)
カリフォルニア州の個人情報保護法。企業が消費者の個人情報を無断で収集・使用することを禁止し、違反した場合の損害賠償を規定している。

フェムテック
女性の健康課題をテクノロジーで解決することを目指す分野。生理追跡、妊活支援、更年期ケアなどのアプリやデバイスが含まれる。

【参考リンク】

Flo Health(外部)
生理周期や妊娠期間を追跡する人気アプリ。全世界で数億人のユーザーを持つが、今回のプライバシー問題で注目を集めている。

Google(外部)
世界最大の検索エンジンを運営する米国のテクノロジー企業。広告事業が主力で、今回はFloアプリから取得したデータを広告配信に活用していたとされる。

Meta(外部)
Facebook、Instagram、WhatsAppなどを運営するソーシャルメディア大手。旧Facebook社で、今回の事案では既に有責判決を受けている。

Malwarebytes(外部)
サイバーセキュリティ企業。マルウェア対策ソフトウェアやVPNサービスを提供し、今回の記事も同社のブログで公開された。

【参考記事】

Period Tracker Data Privacy Litigation(外部)
Flo Health、Meta、Googleを相手取った集団訴訟の公式通知サイト。訴訟の概要、申し立て内容、和解によって影響を受けるユーザーへの案内など、一次情報源として最も正確な情報が掲載されている。

Google, Flo Health to pay $56 million in period-tracking app privacy case(外部)
ロイター通信による、GoogleとFlo Healthの和解に関する報道。和解金の詳細や、共犯とされたMeta社が裁判で争い、賠償責任の評決を受けた上で控訴する見込みであることなど、事件の全体像を客観的に報じている。

Meta found liable for using period-tracking data from Flo Health(外部)
和解を選んだ2社とは異なり、裁判で争ったMeta社が敗訴した件を深掘りした記事。専門家のコメントを交え、プライバシー保護のために消費者が行動を起こすという社会的な変化の側面からもこの事件を分析している。

【編集部後記】

今回のFlo Healthの事案を通じて、私たちが日常的に使っているヘルスケアアプリの裏側で何が起きているのかを垣間見ることができました。皆さんはスマートフォンでどのようなヘルスケアアプリを利用されていますか?また、アプリをダウンロードする際のプライバシーポリシーをどの程度読まれているでしょうか。

便利さと引き換えに、私たちは想像以上に多くの個人情報を提供しているのかもしれません。特に健康データは将来の保険加入や就職活動にも影響する可能性があります。この機会に、普段使用しているアプリのプライバシー設定を見直してみませんか?

投稿者アバター
omote
デザイン、ライティング、Web制作を行っています。AI分野と、ワクワクするような進化を遂げるロボティクス分野について関心を持っています。AIについては私自身子を持つ親として、技術や芸術、または精神面におけるAIと人との共存について、読者の皆さんと共に学び、考えていけたらと思っています。

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