韓国政府データセンター火災、647の行政サービスが大規模停止。デジタルインフラの脆弱性露呈

[更新]2025年9月30日08:32

韓国政府データセンター火災で647サービス停止、DJI米国敗訴とアジアIT動向 - innovaTopia - (イノベトピア)

韓国の国家情報資源サービス(NIRS)が運営するデータセンターで9月26日金曜夜に火災が発生し、647の政府オンラインサービスがオフラインになった。

技術者がリチウムイオンバッテリーを交換中に火災が発生し、234個のバッテリーに延焼した。日曜日深夜時点で30のサービスが復旧し、617のサービスが依然として停止中である。

From: 文献リンクDatacenter fire takes 647 South Korean government services offline

【編集部解説】

デジタル先進国として知られる韓国で、政府機能の中枢が物理的なインフラの障害によって麻痺するという事態は、私たちに多くの教訓を与えてくれます。今回の事件は、単なる火災事故ではなく、デジタル社会が抱える構造的な脆弱性を浮き彫りにしました。

最大の論点は、なぜ単一のデータセンターの火災がこれほど広範囲なサービス停止を引き起こしたのか、という点に尽きます。これは「単一障害点(Single Point of Failure)」として知られる、システム設計における致命的な問題です。

元記事ではNIRSが第2のデータセンターを運営している可能性に触れていますが、それが機能しなかったとすれば、災害復旧(DR)計画が不十分であったか、あるいはそもそも複数拠点でのリアルタイムな冗長化がなされていなかった可能性が考えられます。

また、火災原因がデータセンターの無停電電源装置(UPS)で広く利用されるリチウムイオンバッテリーであったことも見過ごせません。リチウムイオンバッテリーは高エネルギー密度を誇る一方で、「熱暴走」による火災リスクを内包しており、その取り扱いや防火システムには特別な配慮が求められます。今回の事件は、世界中のデータセンター事業者にとって、バッテリーの安全管理体制を再点検する警鐘となるでしょう。

私たちの社会は、ますますデジタルインフラへの依存を深めています。この事件は、サービスの利便性の裏で、それを支える物理的な基盤がいかに重要であるか、そしてそのレジリエンス(回復力)を確保することがいかに不可欠であるかを、改めて強く示唆しています。

【用語解説】

国家情報資源サービス(NIRS)
韓国の行政安全部に所属する機関。複数の政府統合データセンターを運営・管理し、中央省庁のITリソースを集約することで、電子政府サービスの基盤を支えています。

VMware Cloud Foundation
サーバー、ストレージ、ネットワークといったデータセンターの構成要素をすべてソフトウェアで仮想化し、統合的に管理するためのプラットフォーム。プライベートクラウドやハイブリッドクラウドの迅速な構築を可能にします。

単一障害点(Single Point of Failure)
システム全体の中で、その一箇所が故障すると、システム全体の機能が停止してしまうような要素のこと。高可用性が求められるシステムでは、これをなくすための冗長化設計が不可欠です。

【参考リンク】

VMware公式サイト(外部)
仮想化技術のリーディングカンパニー。VMware Cloud Foundationは統合プラットフォーム

【参考記事】

Government struggles to restore services after data center fire(外部)
韓国の主要英字新聞による、データセンター火災に関する詳細記事。

【編集部後記】

今回の韓国での大規模なサービス停止は、私たちにとっても決して他人事ではありません。日々利用している便利なオンラインサービスが、物理的なデータセンターのトラブル一つで使えなくなる可能性があることを示しています。

皆さんの生活や仕事に不可欠なデジタルサービスは、どのようなインフラに支えられているか、考えたことはありますか?この機会に、社会全体のデジタルレジリエンス(回復力)について一緒に考えていければ幸いです。

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TaTsu
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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