DoorDash、自律配達ロボット「Dot」発表――時速32kmで公道走行可能、フェニックスでテスト開始

DoorDash、自律配達ロボット「Dot」発表――時速32kmで公道走行可能、フェニックスでテスト開始 - innovaTopia - (イノベトピア)

DoorDashは2025年9月30日、配達ロボット「Dot」を発表した。Dotは最高時速20マイルで、道路、歩道、駐車場を走行し、6枚分のピザボックスまたは30ポンドまでの商品を運搬できる仕様である。

フェニックスでテスト運用中で、今後他の大都市圏にも展開予定である。Dotには8台のカメラと3つのLiDARセンサー、内部カメラが搭載されている。スタンリー・タンは、Dotが複雑な配達案件への対応策であり、地元店舗向けにも技術を開放できることを強調した。

DoorDashはCoco Roboticsと歩道配達で提携しており、Uberは今年Flytrexと提携した。SmartScaleも新機能として発表され、欠品クレームを最大30%削減したと同社は説明している。

From: 文献リンクDoorDash launches delivery robot in latest push into autonomous technology

【編集部解説】

DoorDashが自社開発したDotは、ラストワンマイル配送における自律走行技術の新しいアプローチを示しています。最高時速20マイル(約32km/h)という速度は、従来の歩道専用ロボットと比較して格段に速く、自転車レーンや一般道路での走行を前提とした設計になっています。

注目すべきは、DoorDashがこれまでのようにサードパーティの技術を導入するのではなく、自社でロボットを開発した点です。同社はCoco Roboticsと提携し、遠隔操作型の配達ロボットを運用してきましたが、Dotは完全自律走行を目指した独自の取り組みとなります。配達業務には混雑した駐車場、塞がれた自転車レーン、複雑な都市環境といった特殊性があり、既存の技術では対応しきれないという判断があったためです。

技術的な観点では、8台のカメラと3つのLiDARセンサーの組み合わせは、360度の視界確保と障害物検知に必要な構成です。内部カメラによる品質管理機能も興味深く、配送中の食品状態をモニタリングできる仕組みになっています。

SmartScaleの導入も見逃せません。注文内容と実際の重量を照合することで、欠品を事前に検知するこの機能は、人的ミスを削減する効果があります。DoorDashの内部データでは欠品クレームが最大30%減少したとされており、配達精度の向上が実証されています。

一方で、自律走行ロボットが公道を走行する際の安全性や、歩行者との共存については慎重な検証が必要です。フェニックスでのテスト展開は、規制環境が比較的柔軟な地域を選んだ戦略的判断と言えるでしょう。今後、他の都市圏に展開する際には、各地域の規制対応や住民の受容性が課題となります。

配達コストの削減という経済的側面も重要です。人件費の高騰が続く中、自律配達は事業者にとって魅力的な選択肢となりますが、配達員の雇用への影響も考慮する必要があります。DoorDashは「複雑な配達」への対応としてDotを位置づけており、人間の配達員との共存を前提としているようです。

【用語解説】

LiDAR(ライダー)
Light Detection and Rangingの略で、レーザー光を照射し、反射光から物体までの距離や形状を測定するセンサー技術である。自律走行車やロボットの環境認識に広く使用され、カメラでは捉えにくい暗所や悪天候下でも機能する。

ラストワンマイル配送
物流センターや店舗から最終目的地である顧客の手元まで届ける配送の最終区間を指す。配送コスト全体の中で最も高コストな部分であり、都市部では交通渋滞や駐車問題などの課題が多い。

自律走行(Autonomous)
人間の操作や介入なしに、センサーやAIによって環境を認識し、判断・制御を行う技術である。完全自律走行はレベル5と定義され、あらゆる環境下で人間の介入が不要な状態を指す。

DoorDash Labs
DoorDashの研究開発部門で、自動化技術やロボティクスの開発を担当する。共同創業者のスタンリー・タンが率いており、配達業務の効率化と革新を目指している。

【参考リンク】

DoorDash公式サイト(外部)
アメリカを中心に展開するフードデリバリーサービス。レストランからの配達だけでなく、食料品や日用品の配送も手がける北米最大級のプラットフォーム

Coco Robotics(外部)
遠隔操作型の配達ロボットを開発するスタートアップ企業。Sam Altmanが投資家として参加し、DoorDashと提携して歩道配送サービスを展開

Waymo(外部)
Googleの親会社Alphabetが所有する自動運転技術開発企業。完全自律走行車の商用サービスを提供し、UberやUber Eatsと提携している

【参考記事】

DoorDash Unveils Dot, the Delivery Robot Powered by its Autonomous Delivery Platform(外部)
DoorDash公式による発表記事。Dotの技術仕様やSmartScale機能の詳細、フェニックスでのテスト展開と今後の拡大計画が明示されている

DoorDash unveils Dot, its autonomous robot built to deliver your food(外部)
TechCrunchによる技術分析記事。Coco Roboticsとの提携経緯と独自開発に踏み切った理由、既存技術では対応できない複雑な配達環境について解説

DoorDash Dot: First Delivery Robot For Roads, Sidewalks And Bike Lanes(外部)
Forbesによる業界分析。従来の歩道専用ロボットとの違いや自転車レーン・一般道路走行の設計、競合他社との比較分析が含まれる

DoorDash unveils a new delivery robot and smart scale(外部)
Los Angeles TimesによるSmartScale機能の詳細記事。注文重量測定と欠品検知のメカニズム、欠品クレームが最大30%削減された具体的数値を報じている

【編集部後記】

配達ロボットが道路や歩道を走る光景は、もうすぐ日常の一部になるかもしれません。みなさんは街中でこうしたロボットに出会ったとき、どんな反応をするでしょうか。便利さへの期待と、安全性への不安が入り混じるのではないでしょうか。

DoorDashのDotは時速32kmで走行できる設計ですが、混雑した歩道で人とロボットが共存する未来について、一緒に考えてみませんか。配達コストの削減は魅力的ですが、配達員の仕事はどう変わっていくのか。テクノロジーが暮らしを豊かにする一方で、私たちが大切にすべきものは何か——そんな問いを持ちながら、この変化を見守っていきたいですね。

投稿者アバター
Ami
テクノロジーは、もっと私たちの感性に寄り添えるはず。デザイナーとしての経験を活かし、テクノロジーが「美」と「暮らし」をどう豊かにデザインしていくのか、未来のシナリオを描きます。 2児の母として、家族の時間を豊かにするスマートホーム技術に注目する傍ら、実家の美容室のDXを考えるのが密かな楽しみ。読者の皆さんの毎日が、お気に入りのガジェットやサービスで、もっと心ときめくものになるような情報を届けたいです。もちろんMac派!

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