Perplexity AIは2025年10月2日木曜日、AI搭載ウェブブラウザCometを世界中で無料提供すると発表した。Cometは7月にPerplexity Maxの登録者向けに月額200ドルでローンチされ、ウェイトリストは数百万人に達していた。
CometはWeb検索、タブ整理、メール下書き、買い物などを行うパーソナルアシスタントとして設計されている。この無料化はGoogle、OpenAI、Anthropicといった競合他社に対抗する戦略である。Googleは9月にChromeブラウザにGeminiを展開し、Anthropicは8月にブラウザベースのAIエージェントを発表、OpenAIは1月にOperatorを公開した。Perplexityは8月にGoogleのChromeブラウザに345億ドルの非公開買収提案を行った。
Perplexityは8月にComet Plusを導入し、9月30日にCNN、Condé Nast、The Washington Post、Los Angeles Times、Fortune、Le Monde、Le Figaroが初のパブリッシングパートナーであると発表した。
From: Perplexity AI rolls out Comet browser for free worldwide
【編集部解説】
AIブラウザ市場における競争が、2025年に入って急激に激化しています。Perplexityが月額200ドルという高額なサブスクリプションモデルからわずか3ヶ月で完全無料化に転じた背景には、テック大手による相次ぐ参入があります。
特に注目すべきは、GoogleがChromeブラウザにGeminiを搭載したことでしょう。世界シェアトップのブラウザにAI機能が標準搭載されたことで、市場のルールが一変しました。Anthropicのブラウザベースエージェントや、OpenAIのOperatorも加わり、ブラウザそのものがAIアシスタントになる時代が本格的に到来しています。
Cometの特徴は、単なる検索補助ではなく「パーソナルアシスタント」として機能する点です。タブの自動整理、メール下書き、買い物支援など、ブラウジング体験全体をAIが最適化します。今後実装予定のBackground Assistant機能では、複数タスクを非同期処理できるため、バックグラウンドで調査やデータ収集を進めながら、別の作業に集中できるようになります。
一方で、Perplexityは過去にメディア企業からコンテンツ盗用の指摘を受けた経緯があります。この問題に対処するため、同社は収益分配モデルを構築し、CNN、The Washington Post、Condé Nastなど大手メディアとパートナーシップを結びました。Comet Plusという有料サブスクリプションを通じて、信頼できる情報源へのアクセスを提供する仕組みは、AI時代における情報の信頼性確保の一つのモデルケースとなるかもしれません。
Perplexityが8月に行った345億ドルという一方的なChrome買収提案は、同社がブラウザ市場をいかに重要視しているかの表れです。検索エンジンとブラウザの境界が曖昧になりつつある今、ユーザーの「入り口」を制することが、AI時代のプラットフォーム競争の鍵を握ります。
ただし、AIがブラウジング行動を最適化することは、フィルターバブルの強化につながる懸念もあります。AIが「最適」と判断した情報だけに触れ続けることで、多様な視点や偶発的な発見の機会が失われる可能性には注意が必要でしょう。
【用語解説】
Perplexity Max
Perplexityが提供する有料サブスクリプションサービス。通常版より高度なAIモデルへのアクセスや、無制限の検索機能などが利用できる。Cometブラウザは当初、このMax会員向けに限定提供されていた。
Gemini
Googleが開発した大規模言語モデル(LLM)およびAIアシスタント。2025年9月にChromeブラウザに搭載され、ブラウジング中に直接AI支援を受けられるようになった。
Operator
OpenAIが2025年1月に発表したAIエージェント。ブラウザを操作してユーザーの代わりにタスクを実行できる機能を持つ。Webフォームの入力や情報収集などを自動化する。
Background Assistant
Perplexity Cometに実装予定の機能。複数のタスクを同時かつ非同期に処理できるため、バックグラウンドで作業を進めながら、ユーザーは別の操作を行える。
Comet Plus
2025年8月にPerplexityが導入した有料サブスクリプションサービス。CNN、The Washington Post、Condé Nastなど信頼できるパブリッシャーやジャーナリストからのコンテンツにアクセスできる。
【参考リンク】
Perplexity AI 公式サイト(外部)
AI検索エンジンとブラウザCometを提供するスタートアップ企業。質問に対して情報源を明示しながら回答を生成する検索サービスで知られる
Comet Browser 公式ページ(外部)
Perplexityが開発したAI搭載ブラウザの公式サイト。機能紹介やダウンロードリンクが掲載されている
OpenAI Operator(外部)
OpenAIが開発したブラウザ操作型AIエージェントの公式発表ページ。エージェント技術の詳細や使用例が紹介されている
Google Chrome(外部)
世界シェアトップのウェブブラウザ。2025年9月にGemini AIが搭載され、ブラウジング中にAI支援機能が利用可能になった
Anthropic(外部)
AIアシスタント「Claude」を開発する企業。2025年8月にブラウザベースのAIエージェント機能を発表した
【参考記事】
Perplexity’s Comet AI browser now free; Max users get new background assistant(外部)
TechCrunchによる報道。Cometの無料化に加え、Max会員向けの新機能Background Assistantについて詳述している
No more slop: Perplexity makes its $200 AI browser free(外部)
Business Insiderの記事。月額200ドルだったCometが完全無料化された背景とAI生成コンテンツの質の問題について報じている
The Internet is Better on Comet(外部)
Perplexity公式ブログ。Cometの世界展開と無料化を発表し、ブラウザの設計思想や今後のモバイル版開発計画について説明している
Perplexity Launches Comet Browser For Free Worldwide(外部)
Search Engine Journalの分析記事。GoogleやOpenAIとの競争激化の中で、Perplexityが無料化戦略を選択した市場環境について詳しく解説
Everyone can use Perplexity’s Comet AI browser now(外部)
ZDNETの分析記事。GoogleのChromeとAppleのSafariが長年支配してきたブラウザ市場に対するPerplexityの挑戦を解説している
【編集部後記】
AIブラウザが当たり前になりつつある今、皆さんは日々のブラウジング体験にどんな変化を感じていますか?Perplexityの大胆な無料化戦略を見ていると、ブラウザそのものの概念が根本から変わろうとしているのを実感します。単なる情報閲覧ツールから、私たちの代わりに考え、行動するパートナーへと進化していく過程を、今まさに目の当たりにしています。
一方で、AIによって最適化された情報だけに触れることで、偶然の発見や多様な視点に出会う機会が減るかもしれないという懸念もあります。皆さんは、効率性と偶発性のバランスをどう取りたいですか?このブラウザ戦争の行方と、私たちの情報体験の未来について、ぜひご意見をお聞かせください。