ChatGPT内で全て完結する時代へ、OpenAIが新SDK発表しアプリエコシステム構築

ChatGPT内で全て完結する時代へ、OpenAIが新SDK発表しアプリエコシステム構築 - innovaTopia - (イノベトピア)

OpenAIは10月6日(現地時間)、同社の開発者向けイベント「DevDay 2025」において、サードパーティ製アプリをChatGPT内に直接組み込むための新しいSDK(ソフトウェア開発キット)を発表しました。これにより、ユーザーはChatGPTとの対話から離れることなく、様々な外部サービスを利用可能になります。

CEOのサム・アルトマン氏は基調講演で、Spotify、Canva、Zillowといった大手サービスのアプリがチャットインターフェース内でシームレスに動作するデモを披露。本日から一部の開発者向けに新しいアプリSDKのプレビュー版が提供されます。

さらに、チャットボット内で直接決済まで完結する「エージェンティック・コマース・プロトコル」もアメリカ向けに提供し、その他地域にも間もなく提供する計画も明らかにしました。

今回の発表は、2024年1月にGPTストアをローンチ(当時300万以上のカスタムGPTが存在)したものの、大きなエコシステム形成には至らなかった過去の反省を踏まえた、新たなプラットフォーム戦略と見られています。

また、開発者向けツールとして、エージェント開発を容易にする「AgentKit」の開発も強調し、長らくベータ版だったコード生成モデル「Codex」の正式提供を開始したことも明らかにしました。

モデルに関しては、今年8月に発表したオープンソースモデル「GPT-OSS」に続き、今回のイベントで待望の新フラグシップモデル「GPT-5」のAPI提供を開始したと発表。インフラ面では、AMD製チップを搭載する次世代データセンター向けに、6ギガワット(GW)という膨大な電力容量を確保する契約を締結したことも同時に発表され、AIの計算需要増大への備えを強調しました。

From: 文献リンクOpenAI Wants ChatGPT to Be Your Future Operating System

【編集部解説】

今回OpenAIが発表したChatGPT内アプリ機能は、単なる新機能追加ではなく、プラットフォーム戦略の根本的な転換を示しています。これまでのウェブブラウザやモバイルアプリといったユーザー体験の枠組みを超えて、ChatGPTそのものを「対話型OS」として位置づける野心的な試みです。

注目すべきは、過去のGPTストアが300万以上のカスタムGPTを擁しながらも大きな成功を収められなかった点です。今回の戦略では、SpotifyやCanva、Zillowといった既存の大手サービスとの連携を前面に押し出し、開発者だけでなくエンドユーザーにとっても分かりやすい価値提案を行っています。

特に興味深いのは「エージェンティック・コマース・プロトコル」の導入予定です。これはChatGPT内で商品購入まで完結させる仕組みで、会話の流れから直接購買行動へ移行できることを意味します。デモで示された犬の散歩ビジネスの例は、この新しい体験を象徴しています。ポスター作成から資金調達用ピッチデック作成、拡大候補地の提案、物件検索まで、一連の流れがチャット内で完結する様子が披露されました。

一方で、プラットフォーム化には大きな課題も存在します。アプリ開発者にとっては新たな収益機会である反面、OpenAIという単一企業のエコシステムに依存するリスクがあります。また、ユーザーをChatGPT内に囲い込む戦略は、オープンなインターネットの理念とは対照的です。

技術面では、6ギガワット(GW)規模の電力供給を前提とした次世代データセンターへの大規模な投資が同時発表されました。これはAI計算需要の急激な増加を見越した動きですが、生成AIの経済的持続可能性への疑問も指摘されている状況での大型投資となります。

競合環境も激化しています。GoogleやAnthropicは独自の開発者向けツールを強化し、MetaやDeepSeekはオープンソースモデルで対抗しています。OpenAIはGPT-5やCodexの正式提供、AgentKitなどの新ツール群で応戦していますが、開発者コミュニティの支持を継続的に獲得できるかが今後の鍵となるでしょう。

【用語解説】

SDK(Software Development Kit)
ソフトウェア開発キットの略称。開発者がアプリケーションを効率的に構築するために必要なツール、ライブラリ、ドキュメント、サンプルコードなどを一式にまとめたパッケージである。

API(Application Programming Interface)
異なるソフトウェア間でデータをやり取りするための仕組み。開発者はAPIを通じてOpenAIのモデルにアクセスし、自社サービスに組み込むことができる。

エージェント(AI Agent)
ユーザーに代わって自律的にタスクを実行するAIシステム。指示を受けて複数のステップを自動的に処理し、目的を達成する。

ファインチューニング
事前学習済みのAIモデルを特定の用途やデータセットに合わせて再調整する技術。企業やサービス固有のニーズに最適化できる。

オープンソースモデル
ソースコードが公開され、誰でも自由に利用・改変・配布できるAIモデル。企業は独自にカスタマイズして利用できる。

【参考リンク】

OpenAI公式サイト(外部)
ChatGPTをはじめ各種AIモデルやAPI、開発者向けドキュメントを提供。企業情報や最新ニュースも掲載している公式ウェブサイト。

ChatGPT(外部)
OpenAIの対話型AIサービス公式サイト。無料版からPlusプラン、Enterpriseプランまで用意され、ブラウザやアプリから利用可能。

Canva(外部)
ポスターやプレゼン資料、SNS画像などを直感的に作成できるオンラインデザインプラットフォーム。ChatGPT内アプリとして統合。

Zillow(外部)
米国最大級の不動産情報サイト。住宅の売買・賃貸情報、物件価格推定、住宅ローン情報などを提供。地図ベースの物件検索が特徴。

Spotify(外部)
世界最大級の音楽ストリーミングサービス。数億曲の楽曲やポッドキャストを配信。ChatGPT統合により音楽検索や再生がチャット内で可能に。

Anthropic(外部)
AI安全性研究を重視するAI企業。対話型AIモデル「Claude」を開発し、OpenAIの主要競合として開発者向けサービスを展開。

AMD公式サイト(外部)
CPU、GPUを製造する半導体メーカー。データセンター向けチップでも存在感を増しており、OpenAIとの大規模契約が発表された。

【参考記事】

AI Arms Race Latest: ChatGPT Now Lets Users Connect With Third-Party Apps Like Spotify And Zillow (外部)
ForbesOpenAIの「DevDay」イベントでの発表を、AI業界の競争という文脈で報じています。ChatGPT内でSpotifyやZillowなどのサードパーティアプリに直接アクセスできる新機能「App SDK」を紹介。xAI、Google、Anthropicといった競合他社との開発競争が激化している状況を伝えています。

OpenAI announces Apps SDK allowing ChatGPT to launch and run third party apps like Zillow, Canva, Spotify (外部)
VentureBeatCEOサム・アルトマンが発表した新しい「Apps SDK」に焦点を当てた記事です。このSDKにより、開発者はChatGPT内で直接動作するアプリケーションを構築できるだけでなく、OpenAIが新たに発表した「Agentic Commerce Protocol (ACP)」を通じて収益化も可能になると解説しています。

OpenAI launches apps inside of ChatGPT (外部)
TechCrunch開発者がChatGPTの対話内に直接表示されるアプリケーションを構築するための新しい方法をOpenAIが発表したと報じています。ユーザーが異なるプラットフォームやウェブサイトを切り替えることなく、ChatGPT内でプレイリスト作成やデザイン、住宅検索などのタスクを実行できる点を強調しています。

OpenAI DevDay 2025 発表まとめ (外部)
Zennサンフランシスコで開催されたOpenAI DevDay 2025の発表内容をまとめた日本語の技術記事です。ChatGPT上で使えるApps SDKのプレビュー版公開、AIエージェントのワークフローを構築するためのAgentKit、ノーコードで操作できるAgent Builder、Codexの正式リリースなどが要点として挙げられています。

Introducing apps in ChatGPT and the new Apps SDK (外部)
OpenAI Official BlogOpenAIの公式ブログによる発表です。開発者がChatGPT内でアプリを構築するための「Apps SDK」をプレビュー版として公開したことを伝えています。このSDKが、外部ツールやデータに接続するためのオープンスタンダード「Model Context Protocol (MCP)」を基に構築されていることや、安全性とプライバシーに関する方針についても説明されています。

【編集部追記】

今回のOpenAIの発表をより深く理解するために、いくつかの技術的な背景と、それがもたらす変化について補足します。

今回のアプリ統合の根幹には、「Model Context Protocol (MCP)」というオープンスタンダードな技術仕様があります。これは、AIモデルが外部のアプリやデータと安全かつ標準化された方法で通信するための共通ルールのようなものです。開発者はこのルールに従うことで、自社のサービスを簡単にChatGPTと連携させることができるようになります。

また、開発者向けには「AgentKit」という強力なツール群が提供されます。これには、プログラミング知識がなくても視覚的にAIの動きを設計できる「Agent Builder」などが含まれており、これまで一部の専門家のものであったAI開発のハードルが劇的に下がり、より多くの人がAIエージェント作りに参加できるようになるでしょう。

もちろん、プラットフォーム化を進める上で、OpenAIはセキュリティとプライバシー保護を最重要課題としています。データは厳重に暗号化され、誰がどの情報にアクセスできるか、細かく管理される仕組みが導入されます。

こうした一連の発表は、GoogleやMetaといった巨大企業との激しいAI開発競争の中で行われました。OpenAIが目指すのは、単なるチャットボットではなく、あらゆるサービスが連携する「対話型OS」としての地位を確立することです。今回の発表は、その未来に向けた大きな一歩と言えるでしょう。

【編集部後記】

ChatGPTが「対話する場所」から、「あらゆるデジタルサービスへの統一された入口」へと進化を遂げようとしています。朝起きてChatGPTを開き、音楽を流しながらデザイン作業をし、そのまま物件探しまで完結する——そんな未来が、今回の発表で一気に現実味を帯びてきました。

みなさんは、こうした「すべてが一つのチャット画面で完結する世界」に魅力を感じますか?それとも、用途ごとに専用アプリを使い分ける今のスタイルの方が心地よいでしょうか。

今回の発表の裏側には、開発者がAIを簡単に扱えるようにする「AgentKit」のようなツール群や、アプリ同士を安全につなぐ「MCP」という共通ルールがあります。技術の壁が低くなり、誰もがAIの作り手になれる時代がすぐそこまで来ています。

便利さの裏側にあるプラットフォームへの依存という課題も踏まえつつ、この大きな変化をどう捉えるか。OpenAIが描く未来図は、私たちの日常や働き方をどう変えていくのか、ぜひご自身の視点で想像してみてください。

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TaTsu
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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