EOS社「Apollo」レーザー兵器が実用段階に──無制限射撃でドローンスウォーム戦術に対抗

[更新]2025年10月10日08:28

EOS社「Apollo」レーザー兵器が実用段階に──無制限射撃でドローンスウォーム戦術に対抗 - innovaTopia - (イノベトピア)

オーストラリアのElectro Optic Systems(EOS)社は2025年9月上旬、100kWクラスの高エネルギーレーザー兵器(HELW)に「Apollo」という名称を付けました。

この対ドローンレーザー兵器は360度の射撃範囲を持ち、ドローンのセンサーを無力化できます。外部電源使用時は無制限、接続していない場合でも200回以上の射撃が可能です。車両への搭載もできます。

レーザーの破壊射程は最大3kmで、長距離から光学センサーを無力化する能力も持ちます。EOSグループCEOのアンドレアス・シュヴェア博士は、Apolloが国際武器取引規則(ITAR)の対象外であると述べました。

Apolloは、すでに契約を締結した非公開のNATO加盟国へ、今後3年以内に納入される予定です。ロシア、中国、英国、ドイツ、米国もレーザーベースの防空システムを開発しています。

From: 文献リンクThis High-Energy Apollo Laser Can Take Down 200 Drones

【編集部解説】

このニュースで注目すべきは、レーザー兵器が「実用段階」に入ったという事実です。SF映画の中だけの存在だったレーザー兵器が、今や現実の戦場で配備されようとしています。

Apolloの最大の特徴は、外部電源に接続すれば「無制限」に発射できる点でしょう。従来のミサイル防衛システムは1発あたり数百万ドルのコストがかかりますが、レーザーは電力さえあれば継続的に使用可能です。数百機、数千機の安価なドローンで飽和攻撃を仕掛ける「ドローンスウォーム戦術」に対して、コスト面で対抗できる初めての防衛手段といえます。

技術的な観点から見ると、100kWという出力は現時点での高エネルギーレーザー兵器としては標準的な数値です。しかし重要なのは、最大3km先のドローンを物理的に破壊できる能力と、それより長距離からセンサーを無力化できる能力を併せ持つ点にあります。これにより多層的な防御が可能になります。

一方で懸念材料もあります。EOS社がITAR(国際武器取引規則)の対象外であることを強調している点は、技術拡散のリスクを示唆しています。レーザー兵器技術が広く流通すれば、攻撃側も同様の技術を入手できる可能性があります。

また、ウクライナ戦争を契機に各国が一斉にレーザー防空システムの開発に乗り出している現状は、新たな軍拡競争の始まりを意味するかもしれません。テクノロジーの進化が、必ずしも平和をもたらすとは限らないという現実を、私たちは冷静に見つめる必要があるでしょう。

【用語解説】

HELW(High Energy Laser Weapon)
高エネルギーレーザー兵器の略称。数十kW以上の出力を持つレーザーを用いて、ドローンやミサイルなどの飛翔体を物理的に破壊、または電子機器を無効化する兵器システムである。従来の弾薬を使用しないため、電力供給が続く限り継続的な運用が可能という特徴を持つ。

ドローンスウォーム戦術
多数の小型ドローンを群れのように協調させて攻撃する戦術。個々のドローンは安価だが、数百機単位で同時攻撃することで高価な防空システムを飽和させ、突破を図る。ウクライナ戦争やイスラエル・ガザ紛争で実戦使用が確認されている。

ITAR(International Traffic in Arms Regulations)
国際武器取引規則。米国の武器輸出管理制度で、軍事技術や防衛関連製品の輸出を厳格に規制する。ITAR対象品は第三国への移転が制限されるため、オーストラリア製のApolloがITAR対象外であることは、NATO加盟国間での柔軟な配備を可能にする。

NATO(North Atlantic Treaty Organization)
北大西洋条約機構。1949年に設立された集団防衛を目的とする軍事同盟で、現在32カ国が加盟している。ロシアのウクライナ侵攻を受けて、加盟国の防衛力強化と東欧地域への配備増強を進めている。

【参考リンク】

Electro Optic Systems (EOS) 公式サイト(外部)
オーストラリアの防衛・宇宙技術企業。40年近い光学追跡技術の実績を持ち、Apollo高エネルギーレーザー兵器を開発した企業の公式サイト。

NATO 公式サイト(外部)
北大西洋条約機構の公式ウェブサイト。加盟国の防衛協力、軍事演習、政策声明などの情報を提供している。

【参考記事】

Australia’s 100kW-Class Laser Weapon Takes Aim at Drones(外部)
Defense One(2025年9月)。EOSが100kWクラスのApolloレーザー兵器を発表し、ITAR規制対象外が国際展開の鍵となると分析。

【編集部後記】

レーザー兵器が現実のものになりつつある今、私たちはどんな未来を望むのでしょうか。技術の進化は常に「防御」と「攻撃」の両面を持ちます。Apolloのようなシステムが民間人を守る盾となる一方で、新たな軍拡競争の引き金にもなり得ます。

テクノロジーが人間の進化に寄与するためには、私たち一人ひとりがその使い道について考え続けることが大切だと感じています。みなさんは、こうした防衛技術の発展をどう捉えていますか?

投稿者アバター
Ami
テクノロジーは、もっと私たちの感性に寄り添えるはず。デザイナーとしての経験を活かし、テクノロジーが「美」と「暮らし」をどう豊かにデザインしていくのか、未来のシナリオを描きます。 2児の母として、家族の時間を豊かにするスマートホーム技術に注目する傍ら、実家の美容室のDXを考えるのが密かな楽しみ。読者の皆さんの毎日が、お気に入りのガジェットやサービスで、もっと心ときめくものになるような情報を届けたいです。もちろんMac派!

読み込み中…
advertisements
読み込み中…