Samsungが2nm Gate-All-Around(GAA)プロセスを用いてSnapdragon 8 Elite Gen 5チップセットの2nmバージョンを開発し、評価用サンプルをQualcommに送付した。
現行のSnapdragon 8 Elite Gen 5はTSMCのN3P技術で製造されている。Samsungの2nm版は現行バージョンより高性能かつ高効率となり、iPhone 17 ProのA19 Proを上回る可能性がある。Qualcommがサンプルを承認すれば、Samsung製2nmチップはGalaxy Z Flip 8に搭載される見込みで、2026年後半の登場が予想される。現行のGalaxy Z Flip 7はSamsungの3nm技術ベースのExynos 2500チップを使用している。
2nm製造技術の利点にはバッテリー寿命の向上、パフォーマンス強化、冷却性能の改善が含まれる。Samsung社内生産によりコスト削減と競争力のある価格設定が可能になるが、Qualcommへのライセンス料と使用料の支払いは必要となる。
From: Samsung steps up to fix Qualcomm’s top chip and dethrone the iPhone 17 Pro
【編集部解説】
今回のニュースは、半導体業界における勢力図の大きな転換点を示唆しています。SamsungがQualcommのフラッグシップチップを2nmプロセスで製造するという動きは、単なる技術的な進歩以上の意味を持ちます。
これまでSamsungのファウンドリ事業は、歩留まり率や熱管理の問題で苦戦してきました。特にGalaxy S24シリーズでは、Exynos 2400チップの発熱問題が報告され、ユーザーからの不満が相次いでいた経緯があります。Qualcommが今回Samsungのサンプルを評価対象としているという事実は、これらの課題改善に自信を示していると見て取れます。
2nm Gate-All-Around(GAA)プロセスは、従来のFinFET構造と比べてトランジスタを四方から包み込む設計により、電力効率とパフォーマンスを同時に向上させる技術です。これにより、折りたたみスマートフォンのような薄型デバイスにおける発熱と電力消費という二つの大きな課題を解決できる可能性があります。
iPhone 17 ProのA19 Proチップとの比較が言及されている点も注目に値します。Appleは自社設計チップで常に業界をリードしてきましたが、Android陣営がこれに追いつき、さらには上回る可能性が出てきたということです。特にGalaxy Z Flip 8が2026年後半に登場する頃には、折りたたみスマートフォン市場における技術的優位性がさらに明確になるでしょう。
ただし、懸念材料もあります。Samsungが自社デバイスに搭載するチップを自社ファウンドリで製造することで、競合他社への供給能力やスケジュールに影響が出る可能性があります。また、TSMCからの完全な移行は現実的ではなく、当面はデュアルソーシング戦略が続くと見られています。
長期的には、この動きが半導体サプライチェーンの多様化を促進し、TSMC一極集中のリスクを軽減する効果が期待されます。地政学的リスクが高まる中、複数の製造拠点を持つことは業界全体の安定性にとって重要な意味を持つでしょう。
【用語解説】
Snapdragon 8 Elite Gen 5
Qualcommが開発するスマートフォン向けフラッグシップチップセット。Android端末における最高性能プロセッサの一つで、AI処理能力や省電力性能が特徴である。
2nm Gate-All-Around(GAA)プロセス
次世代半導体製造技術。トランジスタを四方から包み込む構造により、従来のFinFET技術と比較して電力効率とパフォーマンスを向上させる。Samsung独自の製造プロセスである。
N3P技術
TSMCが開発した3nmプロセス技術。高性能と省電力性を両立した半導体製造技術で、現行のSnapdragon 8 Elite Gen 5の製造に使用されている。
ファウンドリ
半導体の受託製造を専門とする企業または事業部門。設計は他社が行い、製造のみを請け負うビジネスモデルである。
A19 Pro
Appleが開発するiPhone 17 Pro向けのカスタムチップ。高性能と電力効率を両立したプロセッサとして設計されている。
Exynos 2500
Samsungが自社開発するスマートフォン向けプロセッサ。3nm製造技術を採用し、Galaxy Z Flip 7に搭載されている。
【参考リンク】
Qualcomm公式サイト(外部)
米国の半導体メーカーで、モバイルプロセッサのSnapdragonシリーズを開発。5G通信技術やAI処理技術において業界をリードする企業である。
Samsung Semiconductor(外部)
Samsungの半導体事業部門。メモリチップからファウンドリサービスまで幅広く展開し、2nm GAA技術などの先端プロセス開発を進めている。
TSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)(外部)
世界最大の半導体受託製造企業。AppleやQualcommをはじめとする多くの企業向けに先端チップを製造し、業界で圧倒的なシェアを持つ。
Samsung Galaxy Z Flip(外部)
Samsungが展開する縦折りタイプの折りたたみスマートフォンシリーズ。コンパクトなデザインと先進的な技術を組み合わせた製品ラインである。
【参考記事】
Samsung making 2nm Snapdragon 8 Elite Gen 5 chip samples for Qualcomm(外部)
Samsungが2nm製造プロセスを用いてSnapdragon 8 Elite Gen 5のサンプルチップをQualcommに提供したという報道内容を詳細に解説した記事。
Qualcomm Launches Snapdragon 8 Elite Gen 5, May Plan Samsung Galaxy Exclusive Version(外部)
QualcommがSnapdragon 8 Elite Gen 5を発表し、Samsung Galaxy専用バージョンの計画がある可能性について報じた業界分析記事。
Galaxy Z Flip 8、Samsung製2nm Snapdragonチップを搭載か(外部)
Galaxy Z Flip 8がSamsung製の2nm Snapdragon 8 Elite Gen 5を搭載する可能性について報じた日本語記事で2026年後半の発売予測を含む。
【編集部後記】
半導体製造技術の進化は、私たちが日常的に使うスマートフォンの体験を根本から変えていきます。特に折りたたみスマートフォンは、薄型化と高性能化の両立が課題でしたが、2nm世代のチップがそれをどう解決していくのか、注目していきたいと思います。
SamsungとQualcommのこの取り組みが、2026年以降のモバイル体験にどのような変化をもたらすのか。皆さんは次のスマートフォンを選ぶ際、どのような技術的な進化を期待されていますか?innovaTopiaでは、これからもこうした技術の進展を追い続け、皆さんと一緒に未来を見つめていきたいと思います。