ワシントン・ポストがCl0pランサムウェア集団によるOracle E-Business Suiteプラットフォームのゼロデイ攻撃で被害を受けたと発表した。
Cl0pはロシア系とされ、2019年から活動し、MOVEitやFortra GoAnywhere、Cleoなどのファイル転送プログラムでも大規模攻撃を行ってきた。EBSソフトウェアのゼロデイ脆弱性は10月2日にOracleが発表し、Googleは7月から追跡していた。
Oracleは10月2日にゼロデイ脆弱性を報告し、顧客に最新のパッチ適用を推奨した。被害組織にはハーバード大学、Envoy Air、DXCテクノロジー、シカゴ公立学校などが含まれる。
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Washington Post is latest victim of Cl0p’s Oracle hacking campaign
【編集部解説】
本件は、数百の企業や団体に利用されている業務システムであるOracle EBSを標的に、2025年夏から大規模なサイバー攻撃が行われたことが特徴です。Cl0pはロシア語圏で活動し、過去にもMOVEitなど複数のグローバルITインフラを標的にしてきた集団で、今回はワシントン・ポストやハーバード大学、Envoy Air、DXCテクノロジーなど、米国の有名組織が実際に被害に遭っています。
Oracle EBS攻撃では、ゼロデイ(CVE-2025-61882)が7月ごろから悪用されており、攻撃者は認証なしでリモートコード実行を行い、システムデータの窃取および、身代金要求へと発展しました。パッチの提供が遅れ、緊急パッチも初回には効果が限定的で、多くの企業が知らぬ間に侵害を受けたことが被害拡大を招いています。
ランサムウェア集団による業務システムを狙った攻撃の最大のリスクは、その被害の波及範囲の広さにあります。EBSのような基幹システムは顧客データやサプライチェーンなど、社会基盤を支える情報が格納されているため、1件のゼロデイが国家・企業を問わず多大な影響を与えます。今後、類似手法で他の業務アプリも狙われる懸念があります。
さらに注目されるのは、攻撃者が被害者の知名度をも利用し、ダークウェブ上で警告メッセージやデータ公開を行う新たな脅迫手法を使った点です。これは金銭要求だけでなく、ブランド価値や社会的信頼の喪失をも巧みに突いた社会的エンジニアリングの一環です。
日本企業もOracle EBSや他の基幹業務ソフトを多用しており、この事案は決して対岸の火事ではありません。単なるシステム保守だけでなく、脆弱性情報の早期把握、ゼロデイ対応、インシデント発生時の危機管理フローの実装といった多層的な備えが求められる時代です。
【用語解説】
Oracle E-Business Suite(EBS)
企業の会計、在庫管理、購買、人事など業務を統合管理できるアプリケーション群
ゼロデイ脆弱性
ベンダー・利用者が認識せず修正も未提供なセキュリティの穴。攻撃が始まってから明るみに出ることが多い
ランサムウェア
データやシステムを暗号化し、復旧のため身代金を要求するマルウェア。企業・組織を標的に被害が拡大
リモートコード実行(RCE)
遠隔からコンピュータ上で任意のコードを実行できる脆弱性または攻撃手法
ダークウェブ
特定ソフトや設定がなければアクセスできない匿名性の高いネット空間
【参考リンク】
Oracle(外部)
企業向け基幹システムやEBSを含む業務アプリケーションなどをワールドワイドで展開している米国IT大手
Washington Post(外部)
米国ワシントンD.C.を拠点に国際報道や調査報道に定評のある大手新聞社。信頼度が高い
Harvard University(外部)
マサチューセッツ州ケンブリッジに本部を置く世界トップレベルの大学。国際性も高い
DXC Technology(外部)
DX推進やシステム運用サービスに定評のあるグローバルIT企業。業務系ソリューションで強み
Envoy Air(外部)
American Airlinesグループ所属・米国内の近距離航空路線を中心にサービス提供している航空会社
Chicago Public Schools(外部)
イリノイ州シカゴの公立学区であり、米国有数の規模を持ち歴史も長い
【参考記事】
Oracle E-Business Suite Zero-Day Exploitation(外部)
2025年7月頃から観測されたEBSゼロデイ脆弱性の技術的な解説や被害拡大の状況を紹介している。
CL0P hackers exploited Oracle EBS zero-day for data extortion(外部)
Cl0pによるOracle EBSゼロデイ悪用キャンペーンの概要と攻撃経路および国際的影響を報じている。
Washington Post says it is among victims of cyber breach tied to Oracle software(外部)
ワシントン・ポストがOracle製品の重大な脆弱性を悪用したランサム被害に遭った経緯をまとめている。
【編集部後記】
今回の一件を通して、私自身も「自分の利用している業務システムやデジタルサービスが、実は根深いリスクを抱えていないか?」と考え直すきっかけになりました。
業務や暮らしを支えるテクノロジーの価値とその守り方、もしよろしければ皆さんの気付きや実体験もぜひ教えてください。一緒に次のアクションを考えていければうれしいです。
























