Even Realities G2発表、Metaに対抗するカメラなしスマートグラスの戦略とは

[更新]2025年11月10日16:33

 - innovaTopia - (イノベトピア)

Even G2は11月12日に発売される新型スマートグラスで、外見は普通のメガネだが、装着することで体験が一変するというメッセージが発信された。公式ポストでは「未来を身につける準備をしよう」「新たな驚異のパワーが間もなく解き放たれる」と強調されている。詳細な仕様や機能は予告段階で明かされていないが、従来モデルEven G1ではディスプレイ表示やAIアシスタント機能が特徴だった。今回もユニークな体験と新機能に注目が集まっている。

From: 文献リンクEven Realities X(旧Twitter)公式アカウント投稿

【編集部解説】

Even Realitiesが打ち出す最大の差別化要素は、カメラとスピーカーを搭載しないという設計思想です。MetaのRay-Banスマートグラスなど競合製品の多くがカメラ機能を標準搭載する中、同社は意図的にプライバシー保護を優先しています。これにより、周囲の人々が無断で撮影されるリスクがなく、公共空間での着用に対する心理的抵抗を大幅に軽減できます。

スマートグラス市場では、プライバシー侵害への懸念が普及の大きな障壁となってきました。欧州データ保護監督機関は、利用者および非利用者のデータ管理の欠如、侵入的な行動分析、適切な保護措置のない機密データ処理などの問題点を指摘しており、規制当局や一般市民からの監視が強まっています。Even G2はこうした課題に正面から応える製品として位置づけられるでしょう。

技術面では、モノクロディスプレイを採用することで軽量性とバッテリー持続時間のバランスを取っています。フルカラーディスプレイを搭載したMetaのRay-Ban Displayと比較すると視覚的なインパクトは劣りますが、カレンダー通知、音声アシスタントEven AI、翻訳機能、ナビゲーション機能といった日常的な情報表示には十分な性能を持ちます。

前モデルG1で採用されたHolistic Adaptive Optical System(HAOS、ホリスティック適応光学システム)は、マイクロLED光学エンジンを用いて640×200ピクセルの解像度でテキスト情報を投影します。この表示は装着者が意識的に頭を約20度傾けた時のみ表示されるため、視界を常時遮ることがなく、日常生活との両立が可能です。

産業分野ではAIとリアルタイムデータ可視化の統合が進んでおり、米国防総省は戦場での状況認識向上のためAR対応ウェアラブルを導入し、医療分野では手術中の画像データやバイタル情報へのハンズフリーアクセスが実現されています。Even G2のようなプライバシー重視型デバイスは、こうした専門分野だけでなく、一般消費者市場への橋渡し役となる可能性があります。

一方で懸念もあります。カメラ非搭載という選択は、拡張現実体験の幅を制限する側面もあり、将来的なAR機能の拡張余地が限定される可能性があります。また、軽量化を優先したことでバッテリー容量が制約され、G1では充電ケースの動作が不安定だったという報告もあることから、G2でこの点が改善されているかが注目されます。

【用語解説】

HAOS
Holistic Adaptive Optical Systemの略。Even Realitiesが独自開発したマイクロLED光学エンジン技術で、640×200ピクセルの解像度で視界にテキスト情報を投影する。

Even AI(イーブン エーアイ)
Even G1に搭載された音声アシスタント機能。ChatGPTやPerplexityなどの生成AIと連携し、ハンズフリーで情報取得や操作が可能。

Ray-Ban Display(レイバン ディスプレイ)
Metaが開発するフルカラーディスプレイ搭載のスマートグラス。カメラとスピーカーを標準装備し、Even G2の主要な競合製品となる。

マイクロLED
超小型のLED素子を用いたディスプレイ技術。高輝度、低消費電力、高速応答が特徴で、スマートグラスの小型化に貢献する。

プライバシー・バイ・デザイン
製品設計段階からプライバシー保護を組み込む開発思想。Even Realitiesはカメラ非搭載という選択でこの原則を実践している。

【参考リンク】

Even Realities公式サイト(外部)
Even G1およびG2の製品情報、HAOS技術の詳細、購入オプションなどを提供。日本への直販も対応。

Even Realities YouTube公式チャンネル(外部)
製品デモ動画、技術解説、ユーザーレビューなどを公開。G2のローンチイベントも配信予定。

【参考記事】

新型スマートグラス「Even G2」11月12日に発売決定 – Mogura VR(外部)
Even G2の発売日と基本情報を日本語で報じる記事。前モデルG1の特徴やモノクロディスプレイ採用の背景についても言及。

【編集部後記】

カメラのないスマートグラスという選択は、プライバシー保護と機能性のどちらを優先すべきかという問いを私たちに突きつけます。MetaのRay-Ban Displayがフルカラー画面とカメラを搭載する一方、Even G2はモノクロ表示とプライバシー重視設計を選びました。公共空間で堂々と着用できる安心感と、AR体験の豊かさ。あなたならどちらを選びますか?そして、カメラ非搭載という制約が、逆に新しい使い方を生み出す可能性はあるでしょうか。

投稿者アバター
乗杉 海
SF小説やゲームカルチャーをきっかけに、エンターテインメントとテクノロジーが交わる領域を探究しているライターです。 SF作品が描く未来社会や、ビデオゲームが生み出すメタフィクション的な世界観に刺激を受けてきました。現在は、AI生成コンテンツやVR/AR、インタラクティブメディアの進化といったテーマを幅広く取り上げています。 デジタルエンターテインメントの未来が、人の認知や感情にどのように働きかけるのかを分析しながら、テクノロジーが切り開く新しい可能性を追いかけています。 デジタルエンターテインメントの未来形がいかに人間の認知と感情に働きかけるかを分析し、テクノロジーが創造する新しい未来の可能性を追求しています。

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