中国は中国宇宙ステーション望遠鏡(CSST)、別名巡天宇宙望遠鏡の科学データシミュレーションで進展を遂げた。中国の科学者たちは望遠鏡の主光学系とすべての観測端末に対する包括的なエンドツーエンドのシミュレーションスイートを開発し、観測データの高品質でピクセルレベルのシミュレーションを達成した。
この研究は2026年1月8日、学術誌Research in Astronomy and Astrophysicsの特別号にオンラインで公開された。研究を主導したのは中国科学院国家天文台(NAOC)である。CSSTは2メートル口径の主鏡を持ち、中国の有人宇宙プログラムの主要な宇宙天文学施設だ。打ち上げ後は宇宙ステーションと同じ軌道上で独立して運用され、補給、メンテナンス、アップグレードのためにステーションとドッキングできる。紫金山天文台の研究者である季江徽氏と清華大学天文学部の李程教授がコメントを発表している。
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China’s space telescope achieves key breakthrough in advanced scientific simulation
【編集部解説】
中国の巡天宇宙望遠鏡プロジェクトが示すのは、宇宙開発における「失敗の許されなさ」への真摯な向き合い方です。一度打ち上げてしまえば、地上のように簡単に修理や調整はできません。だからこそ、打ち上げ前に徹底的なシミュレーションを行い、あらゆる状況を想定しておく必要があります。
今回発表されたシミュレーションスイートは、望遠鏡の光学系から観測端末まで、すべてをピクセルレベルで再現できる精度を達成しました。これは単なる技術的成果ではなく、科学的発見の「リハーサル」を可能にする基盤です。どの天体をどう観測すれば最も価値ある発見が得られるのか、事前に検証できるということは、限られた観測時間を最大限に活用できることを意味します。
巡天宇宙望遠鏡は2メートル口径の主鏡を持ち、ハッブル宇宙望遠鏡と同等の解像度でありながら300倍の視野を誇ります。中国宇宙ステーションと同じ軌道を飛行し、必要に応じてドッキングしてメンテナンスを受けられる設計も画期的です。この「修理可能性」という思想が、長期運用を前提とした設計につながっています。
宇宙開発競争が新たな段階に入る中、中国は独自の道を着実に歩んでいます。この技術的達成が人類の宇宙理解をどう深めていくのか、引き続き注視していきます。
【用語解説】
エンドツーエンド
データの入力から出力までの全工程を包括的にカバーするシステム設計のアプローチ。本記事では、望遠鏡の観測から最終的なデータ処理までの全プロセスをシミュレートすることを指す。
シミュレーションスイート
複数のシミュレーションプログラムやツールを統合した一連のソフトウエア群。異なる機能を持つシミュレーションツールを組み合わせて、複雑なシステム全体の挙動を再現する。
ピクセルレベル
画像を構成する最小単位である1ピクセル(画素)単位での精密なデータ処理や解析を行うこと。本記事では、観測データを1画素レベルまで高精度に再現できたことを意味する。
口径
望遠鏡の主鏡(光を集める鏡)の直径。口径が大きいほど多くの光を集められ、より暗い天体を観測できる。巡天宇宙望遠鏡は2メートル口径の主鏡を持つ。
有人宇宙プログラム
人間を宇宙に送り込むための宇宙開発計画。中国は独自の宇宙ステーション「天宮」を運用しており、巡天宇宙望遠鏡はこのプログラムの一環として開発されている。
【参考リンク】
中国科学院国家天文台(NAOC)(外部)
中国の天文学研究の中核機関。FASTやLAMOSTなど大型観測設備を運営する。
Research in Astronomy and Astrophysics(RAA)(外部)
中国科学院国家天文台と中国天文学会が発行する国際学術誌。月刊査読付き。
中国科学院紫金山天文台(外部)
1928年設立の中国初の現代天文学研究機関。季江徽研究員が所属する。
清華大学(外部)
1911年創立の中国を代表する総合大学。李程教授が天文学部に所属する。
【参考記事】
China Reports Progress On Xuntian Telescope Data Simulations(外部)
独立系宇宙ニュース専門メディアによる技術解説記事です。エンドツーエンド・シミュレーションの意義や、天宮宇宙ステーションとのドッキング能力について、中立的な視点から詳しく報じています。
China’s Revolutionary Space Telescope Set to Unveil Secrets of the Universe in 2026(外部
科学コミュニケーション専門メディアによる記事です。「デジタルリハーサル」としてのシミュレーションの役割や、系外惑星直接撮影能力など、CSSTの天文学的意義に焦点を当てた内容となっています。
【編集部後記】
宇宙望遠鏡を打ち上げる前に、まず「デジタル空間で完璧に動かしてみる」。この発想に、皆さんはどのような可能性を感じますか。巡天宇宙望遠鏡のシミュレーション研究は、実機を宇宙に送る前にあらゆる状況を想定し、最適な観測戦略を練る試みです。
失敗のコストが極めて高いプロジェクトほど、事前のシミュレーションが重要になる。そんな当たり前のようで奥深い原則を、改めて考える機会になれば幸いです。
































