Last Updated on 2024-09-12 06:05 by 門倉 朋宏
Red Hatは、デンバー、コロラドで開催されたRed Hat Summit 2024において、企業向けの生成AIの力を活用するための新たな取り組みを発表しました。主要な発表には、オープンソース言語モデルの開発と実行のための基盤モデルプラットフォームであるRed Hat Enterprise Linux AI(RHEL AI)と、ドメイン専門家が自身の知識でAIモデルを強化できるコミュニティプロジェクトInstructLabが含まれます。
Red Hat CEOのMatt Hicksによると、RHEL AIはオープンソースとハイブリッドアプローチに焦点を当て、異なるハードウェアスタックでのパフォーマンス最適化の長い実績を持ち、顧客が自身のIPを保持できる点で競合他社と差別化されます。
RHEL AIは、IBM Researchによって開発されたGraniteファミリーのモデルなどのオープンソース言語モデルと、InstructLabプロジェクトからのツールを組み合わせて、モデルのカスタマイズと強化を可能にします。これにより、ハードウェアアクセラレーションサポートとRed Hatからのエンタープライズ技術サポートを備えた最適化されたRHELオペレーティングシステムイメージが提供されます。
InstructLabプロジェクトは、データサイエンスのスキルを持たないドメイン専門家が、自らの知識を活用して言語モデルを強化できるようにすることを目的としています。これは、少数の例から高品質の合成トレーニングデータを生成するIBM Researchによって開発されたLAB(Large-scale Alignment for chatBots)という新しい方法を使用します。
OpenShift AIはバージョン2.9にアップグレードされ、予測モデルと生成モデルの両方を提供するための新機能と拡張されたパートナーエコシステムが導入されました。Red Hatは、開発者がInstructLabコミュニティプロジェクトを使用してすぐに開始でき、RHEL AIを開発者プレビューとして提供し、OpenShift AIの最新アップデートを一般提供しています。
Red Hatは、RHEL AIとInstructLabを通じて、LinuxとKubernetesに対して行ったように、強力な技術を広範なコミュニティにオープンソースを通じてアクセス可能にすることを目指しています。これにより、ドメイン専門家が知識を活用してモデルを強化し、信頼とサポートを持って本番環境にデプロイできるようになることで、企業における生成AIの採用が加速される可能性があります。
【ニュース解説】
Red Hatがデンバー、コロラドで開催されたRed Hat Summit 2024において、企業向けの生成AI(人工知能)の活用を促進するための新たな取り組みを発表しました。この取り組みの中心となるのは、オープンソース言語モデルの開発と実行を支援する基盤モデルプラットフォーム「Red Hat Enterprise Linux AI(RHEL AI)」と、ドメイン専門家が自身の知識をAIモデルに反映させることを可能にするコミュニティプロジェクト「InstructLab」です。
RHEL AIは、オープンソースとハイブリッドアプローチに重点を置き、異なるハードウェアスタックでのパフォーマンスを最適化することに長けています。また、顧客が自身の知的財産(IP)を保持できる点で、他の競合他社と差別化されています。これにより、企業は自社のAIモデルを柔軟に、かつ効率的に開発・運用することが可能になります。
InstructLabプロジェクトは、データサイエンスの専門知識がないドメイン専門家でも、自らの知識を活用して言語モデルを強化できるようにすることを目的としています。これは、少数の例から高品質の合成トレーニングデータを生成することで、AIモデルの学習を効率化する新しい方法を提供します。このプロセスにより、コミュニティは継続的にモデルを改善し、より精度の高いAIを低コストで実現できるようになります。
このような取り組みは、企業が生成AIをより簡単に、かつ信頼性高く本番環境に導入できるようにすることを目指しています。特に、オープンソースのアプローチを取ることで、広範なコミュニティの知識と力を結集し、AI技術の進化と普及を加速させることが期待されます。
しかし、このような技術の進展には、セキュリティやプライバシーの保護、知的財産の管理など、様々な課題も伴います。オープンソースモデルの採用は、コードの透明性を高め、広範な検証を可能にする一方で、企業が自身のIPを保護するための戦略も重要になります。
また、AIモデルのトレーニングに合成データを使用することは、データの多様性と品質を確保する上で有効な手段ですが、合成データの生成過程でのバイアスの排除や、実世界のデータを反映したモデルの構築には注意が必要です。
長期的には、Red Hatのこのような取り組みが、企業におけるAIの活用を促進し、新たなビジネスモデルやサービスの創出に貢献することが期待されます。同時に、技術の進化に伴う社会的、倫理的な課題への対応も、引き続き重要なテーマとなるでしょう。
from Red Hat unveils RHEL AI and InstructLab to democratize enterprise AI.