Last Updated on 2024-05-13 07:42 by TaTsu
Scale AIのAI Readiness Reportによると、昨年、企業の19%が生成AI(generative AI)の導入計画がなかったが、今年はその数が4%に減少した。また、生成AIを実際に運用している企業は昨年21%から今年は38%に増加している。生成AIの導入における最大の障壁はセキュリティとガバナンスである。
生成AIの使用事例には、内部顧客向け、外部顧客向け、既存アプリケーションへの組み込みの3つの方法がある。
内部顧客向けの使用はリスクが低く、報酬が高いとされ、データの改善や従業員のパフォーマンス向上などが目的である。例えば、Twilioは生成AIを使用して、顧客サポート担当者が回答を早く見つけたり、通話の要約を行ったりするのに役立てている。
外部顧客向けでは、顧客サポートのためのチャットボットや、Wayfair Decorifyのようにリビングルームの写真をアップロードし、関連するWayfairの在庫を提案する「コンテキスト内の生成AI」が考えられる。
既存アプリケーションへの生成AIの組み込みは、ERP、HCM、CRMアプリケーションなど、特定のユースケースに依存する場合に特に強力である。データの幅や大きさはそれほどではないかもしれないが、その価値と機密性は非常に高いため、これらのユースケースの選択基準は異なる可能性がある。
【編集者追記】用語解説
- Scale AI:AIモデル開発に必要な高品質なトレーニングデータを提供するスタートアップ企業。自動運転車やロボティクスなどの分野で、データ中心のエンドツーエンドソリューションを提供し、AI開発を加速させることを目指す。
- ERP:企業の経営資源を統合的に管理するためのソフトウェアやシステム。会計、販売、在庫、生産、人事など、部門ごとに独立していた基幹システムを一元化し、情報共有と業務効率化を図る。
- HCM:従業員を「資本」と捉え、人材情報を総合的に管理・活用するための考え方とシステム。人事管理、タレントマネジメント、就業管理などの機能を通じて、従業員のエンゲージメントと生産性の向上を目指す。
- CRMアプリケーション:顧客との関係を管理・深化させるためのITツール。顧客情報の一元管理、営業支援、マーケティング支援、カスタマーサポートなどの機能を持ち、顧客満足度の向上と売上拡大につなげる。
【参考リンク】
Scale AIオフィシャルサイト(外部)
Twilioオフィシャルサイト(外部)
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【ニュース解説】
生成AI(Generative Artificial Intelligence)の導入と活用に関する動向が、Scale AIのAI Readiness Reportによって明らかにされました。このレポートは、企業が生成AIをどのように受け入れ、利用しているか、そしてその過程で直面する課題についての洞察を提供しています。
昨年、企業の約19%が生成AIの導入に関して計画がないと回答していましたが、今年に入ってその数はわずか4%にまで減少しました。これは、生成AIに対する関心と受容が急速に高まっていることを示しています。さらに、実際に生成AIを運用している企業の割合も、昨年の21%から今年は38%に増加しており、多くの企業がこの技術の実用化に向けて動き出していることがわかります。
しかし、生成AIの導入にあたっては、セキュリティとガバナンスが最大の障壁となっています。これは、生成AIが生み出すデータやコンテンツの管理、保護、および適切な利用を確保する必要があるためです。企業は、これらの技術を安全に、かつ倫理的に利用するためのガイドラインやフレームワークの構築に努める必要があります。
生成AIの使用事例には大きく分けて三つのカテゴリーがあります。まず、内部顧客向けの使用では、データの質の向上や従業員のパフォーマンスの向上など、企業内部の効率化が目的とされます。例えば、顧客サポートの担当者がより迅速に情報を得られるようにするために生成AIを活用するケースがあります。
外部顧客向けの使用では、顧客サポートのチャットボットや、特定の商品やサービスを提案するためのアプリケーションなど、顧客とのインタラクションを強化する目的で生成AIが利用されます。これにより、顧客体験の向上が期待されます。
最後に、既存アプリケーションへの組み込みでは、ERP(Enterprise Resource Planning)、HCM(Human Capital Management)、CRM(Customer Relationship Management)などのアプリケーションに生成AIを統合することで、これらのシステムの機能を強化し、より高度なデータ分析や意思決定支援を実現します。この場合、データの機密性や価値が高いため、選択基準やセキュリティ対策が特に重要になります。
生成AIの導入が進むにつれて、企業は新たなビジネスチャンスを掴むとともに、セキュリティや倫理的な課題にも積極的に取り組む必要があります。この技術のポテンシャルを最大限に活用するためには、適切なガバナンスと管理体制の構築が不可欠です。