フランス、AI分野で世界リーダーを目指す：米大手との連携強化

Last Updated on 2024-05-31 20:26 by 荒木啓介

フランスは、米国の大手テクノロジー企業の支援を受けて、世界のAI（人工知能）のリーダーになることを目指している。パリで開催されたViva Technologyカンファレンスでは、フランスがAIのリーダーとしてどれだけ進歩したかについての話題で盛り上がった。フランスのAI企業H（旧Holistic）は、米国の電子商取引大手アマゾンやGoogleの元CEOであるエリック・シュミットを含む投資家から2億2000万ドルの資金を調達した。フランスのAIシーンは、マイクロソフトとアマゾンなどの米国のテクノロジー企業から数十億ドルの投資を受けている。

フランスの財務大臣ブルーノ・ルメールは、フランスが欧州でAIのリーダーであると述べ、フランスは自国でAIを創出し、開発したいとの意向を示した。フランスは、MetaのFacebook AI ResearchセンターやGoogleのパリにあるAI研究ハブ、および主要な大学を含む強力なAI研究開発エコシステムを誇っている。

フランス大統領エマニュエル・マクロンは、フランスが欧州のテクノロジー産業をリードしていると述べたが、欧州は米国に遅れをとっており、より多くの「大手プレイヤー」が必要であると指摘した。マクロン大統領は、パリを世界的なAIハブにする方法について議論するため、エリック・シュミットやメタのAI科学者ヤン・ルカンらと会談した。

フランスは、AI研究開発を加速する一方で、「適切な規模」で規制するという課題に直面している。EUはAI法を承認し、人工知能を規制する画期的な法律を制定した。一部の技術幹部は、規制が厳しすぎるとヨーロッパのAI野心を阻害する可能性があると警告している。フランスは、EUのAI法が革新に対して制限が厳しすぎると批判している。

【編集部追記】フランスのAI戦略には様々な解釈の余地があります

フランスのAI戦略は、単なるテクノロジー優位を狙うだけでなく、「人間中心のAI」を推進する理念の現れとも言えます。AIの倫理的側面にも注目し、人間性を尊重したAI開発を目指している可能性があります。

単なる国家的プロジェクトではなく、EUがデジタル主権を確立する上での重要な一里塚とも位置付けられます。EUがAI分野で自立し、米中に対抗できる力を付けることが狙いかもしれません。

この背景には、単にイノベーションを生み出すだけでなく、AIによる産業の変革を見据えた人材育成や雇用対策の狙いもあるかもしれません。AIが社会に与える影響を見据えた長期的な視点が存在しているはずです。。

一部の専門家は、フランスがAI分野で主要プレーヤーになるには、規制の障壁、複雑な労働法制、さらなる計算能力の確保など、多くの課題が残されていると指摘しています。現状では英米中に大きく水をあけられている面もあります。

フランスのAIスタートアップへの投資は増えつつあるものの、依然として英国を大きく下回っています（英国はフランスの2倍以上を調達）。フランスが本当にAIハブになれるかは、今後の投資動向次第と言えるでしょう。

◆補足情報
ヤン・ルカン：フランス出身の計算機科学者。ディープラーニングの第一人者の一人で、現在はメタ（旧フェイスブック）でAI研究を率いている。
モーリス・レビー：パブリシス・グループのCEO。
ジェームズ・マニカ：グーグルのシニアバイスプレジデント。技術と社会を担当。

EU AI法案：人工知能（AI）の開発と利用に関する世界初の包括的な法律。AIシステムのリスクに応じて、禁止や義務付けなどの規制を定めている。
⇒ EU Artificial intelligence Act（ Future of Life Institute (FLI) によって管理されている「EU AI法」の最新情報サイト）AIアクトエクスプローラーやコンプライアンスチェッカーなどで「自分とAI法」の関わりを知ることができる。

VivaTech：フランス・パリで毎年開催される大規模なテクノロジーカンファレンス。スタートアップ企業とグローバル企業の交流の場となっている。
⇒ VivaTechオフィシャルサイト

読者のみなさん
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【ニュース解説】

フランスが、アメリカの大手テクノロジー企業の支援を受けながら、世界の人工知能（AI）分野でのリーダーになることを目指していることが話題となっています。特にパリで開催されたViva Technologyカンファレンスでは、フランスのAI分野での進歩が大きく注目されました。フランスのAI企業であるH（旧Holistic）は、アマゾンやGoogleの元CEOエリック・シュミットを含む投資家から2億2000万ドルの資金調達に成功し、フランスのAIシーンが米国のテクノロジー企業からの投資を受けていることが明らかになりました。

フランス政府は、自国でのAI開発を強化し、欧州内でのリーダーシップを確立することを目指しています。フランスは、MetaのFacebook AI ResearchセンターやGoogleのパリAI研究ハブなど、強力なAI研究開発エコシステムを有しており、これをさらに発展させたいと考えています。

しかし、フランスが直面しているのは、AI研究開発を加速する一方で、適切な規模での規制を実施するという課題です。EUではAI法が承認され、人工知能を規制する新たな法律が制定されましたが、この規制が革新を阻害する可能性について、技術業界からは懸念の声が上がっています。フランスは、このEUのAI法が革新に対して制限が厳しすぎると批判しており、バランスの取れた規制が求められています。

この動きは、AI技術の発展とその応用範囲の拡大に大きな影響を与える可能性があります。AI技術によって、医療、交通、製造業など様々な分野での効率化や新たなサービスの創出が期待されています。しかし、同時に、プライバシーの侵害や雇用への影響、偏見のあるアルゴリズムによる不公平な判断など、潜在的なリスクも指摘されています。

フランスがAI分野でのリーダーシップを目指す中で、技術の革新と社会的な課題への対応のバランスをどのように取るかが、今後の大きな課題となります。また、国際的な競争が激化する中で、フランスがどのようにして自国のAI産業を育成し、世界市場での地位を確立できるかが注目されています。

from France is aiming to become a global AI superpower — but not without help from U.S. Big Tech.