バイドゥ(百度)、AI価格破壊へ – ERNIE 4.5とX1 Turboで競合の25%価格を実現、マルチエージェントアプリも発表

[更新]2025年4月28日18:12

中国検索大手バイドゥが武漢開発者会議で新AIモデル「ERNIE 4.5 Turbo」と「X1 Turbo」を発表。競合DeepSeekの25%という破格の価格設定でAI民主化に前進。マルチエージェントアプリ「Xinxiang」も登場し、複雑なタスクを自律実行。AIクラウド収益が前年比26%増加し、成長戦略が奏功。 - innovaTopia - (イノベトピア)

中国の検索エンジン大手バイドゥは2025年4月25日、武漢で開催された年次開発者会議「Create 2025」において、最新のAIモデル「Ernie 4.5 Turbo」と「X1 Turbo」を発表した。これらは同社の旗艦モデルのアップグレード版で、前バージョンより高速かつ低価格となっている。

Ernie 4.5 Turboは前モデルと比較して80%の価格削減を実現し、入力トークンあたり0.8人民元(0.11ドル)、出力トークンあたり3.2人民元(0.44ドル)という価格設定となった。これは競合するDeepSeekのV3モデルと同等の性能を持ちながら、コストはわずか40%に抑えられている。一方、推論モデルであるX1 Turboは、DeepSeekのR1モデルと比較して約75%安い価格設定となっており、入力が1人民元(0.14ドル)、出力が4人民元(0.55ドル)となっている。

バイドゥはまた、マルチエージェント協働アプリケーション「Xinxiang(心響)」を発表した。このアプリはすでにAndroid向けにリリースされており、iOS版は審査中である。Xinxiangは日常タスク、都市観光、AIマッチメイキング、法律相談など10の主要シナリオにわたる200以上のタスクタイプを提供しており、将来的には10万以上のタスクタイプに拡大する計画である。

同社はさらに、AI Open Initiativeを通じて開発者にAIサービスへのアクセスと収益化の機会を提供し、AIの「ユニバーサルソケット」と呼ばれるモデルコンテキストプロトコル(MCP)の完全なサポートも発表した。

バイドゥの創業者兼CEOであるロビン・リー氏は会議で、「未来はマルチモーダルのものだ」と強調し、純粋なテキストモデルは縮小し、テキスト、画像などを扱えるマルチモーダルモデルが新たな標準になると主張した。

from:Baidu unveils big bets on AI apps and affordable models at Wuhan developer conference

【編集部解説】

バイドゥが発表した新しいAIモデル「ERNIE 4.5 Turbo」と「ERNIE X1 Turbo」は、AIの民主化に向けた重要な一歩と言えるでしょう。これらのモデルは2025年4月25日に武漢で開催された「Baidu Create 2025」で発表されました。

まず注目すべきは、これらのモデルの価格設定です。ERNIE 4.5 Turboは前モデルから80%の価格削減を実現し、ERNIE X1 Turboに至っては競合するDeepSeek R1の25%という破格の価格設定となっています。具体的な数字で見ると、ERNIE 4.5 Turboの価格は100万入力トークンあたり0.11ドル、100万出力トークンあたり0.44ドルであり、これはOpenAIのGPT-4.5の価格(100万入力トークンあたり75ドル、100万出力トークンあたり150ドル)と比較すると圧倒的に安価です。

この価格破壊はAI業界に大きな影響を与える可能性があります。高性能AIモデルの利用コストが下がることで、スタートアップや中小企業でも先進的なAIアプリケーションを開発できるようになるでしょう。バイドゥのCEOであるロビン・リー氏が「アプリケーションこそが真の力を持つ」と述べているように、今後はモデル自体よりも、それを活用したアプリケーションの競争が激化すると予想されます。

また、バイドゥが発表したXinxiang(心響)というAIエージェントアプリも注目に値します。このアプリはすでにAndroid向けにリリースされており、iOS版は2024年半ばから審査中の状態が続いています。Xinxiangは単なるチャットボットを超えて、旅行計画の作成からホテル予約まで複雑なタスクを自律的に実行できる機能を持っています。これはAIの実用性を大きく高める取り組みと言えるでしょう。

さらに、バイドゥはModel Context Protocol(MCP)の統合も発表しました。MCPは「AIのユニバーサルソケット」と表現されており、外部サービスと大規模モデルを標準化されたインターフェースで接続することを可能にします。これにより、開発者はより簡単にバイドゥのAIサービスを活用できるようになるでしょう。

バイドゥのAI戦略の転換は、同社の業績にも表れています。2024年第4四半期の財務報告によると、AIクラウド収益が前年比26%増加した一方、従来のオンラインマーケティング収益は7%減少しました。この傾向は、バイドゥがAIを成長ドライバーとして位置づけていることを示しています。

一方で、この急速な価格競争と機能拡張には潜在的なリスクも存在します。低価格化によるAIの普及は、AIの誤用や悪用のリスクを高める可能性があります。また、バイドゥとDeepSeekなどの中国企業間の激しい競争は、安全性や倫理的配慮よりも機能や価格を優先する風潮を生み出す恐れもあります。

日本企業にとっては、このような中国企業の急速な進化は脅威でもありチャンスでもあります。低コストで高性能なAIモデルを活用することで、日本企業も革新的なアプリケーションを開発できる可能性が広がります。しかし、単にAIモデルを利用するだけでなく、日本独自の強みを活かしたAIアプリケーションの開発が求められるでしょう。

今回のバイドゥの発表は、AIの実用化と普及が加速する転換点となる可能性があります。技術的な進化だけでなく、ビジネスモデルやエコシステムの構築においても、中国企業の存在感がますます高まっていくことでしょう。

【用語解説】

バイドゥ(Baidu):
中国最大の検索エンジン企業で、AIや自動運転技術にも注力している。中国のGoogleとも呼ばれる。

ERNIE(Enhanced Representation through kNowledge IntEgration):
バイドゥが開発した大規模言語モデルのシリーズ名。日本語では「アーニー」と読む。

マルチモーダル:
テキストだけでなく、画像・音声・動画など複数の情報形式(モード)を同時に処理できる能力。

トークン:
AIモデルが処理する言語の最小単位。単語や文字、記号などを分割したもの。料金体系の基本単位となる。

MCP(Model Context Protocol):
AIモデルと外部ツール・データベースを接続するための標準プロトコル。Anthropicが策定し、OpenAIを含む他社が採用を始めている業界標準。「AIのユニバーサルソケット」とも呼ばれる。

DeepSeek:
バイドゥの競合となる中国のAI企業。高性能な言語モデルを開発している。

【参考リンク】

バイドゥ公式サイト(外部)
中国最大の検索エンジン企業の公式サイト。AIサービスや検索エンジンを提供している。

ERNIE Bot(外部)
バイドゥのAIチャットボット「文心一言」の公式サイト。ERNIEモデルを活用したサービス。

バイドゥAIクラウド(外部)
バイドゥのAIサービスプラットフォーム。企業向けAIソリューションを提供している。

AI Open Initiative(外部)
バイドゥが開発者向けに提供するAIサービスへのアクセスと収益化オプションを提供するプラットフォーム。

【参考動画】

【編集部後記】

AIの価格破壊が起きている今、皆さんのビジネスやプロジェクトでどのようにAIを活用できるか考えてみませんか?高性能AIが身近になることで、これまで予算的に難しかったアイデアも実現可能になるかもしれません。中国企業の動向から日本のAI活用の可能性を探るのも面白いですね。皆さんならERNIEのような低価格高性能AIをどう使いますか?ぜひSNSでアイデアを共有してください。AIの民主化時代、一緒に可能性を探っていきましょう。

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TaTsu
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