Last Updated on 2025-08-12 16:54 by 荒木 啓介
OpenAIは2025年8月8日、GPT-5のロールアウトを開始した。GPT-5はChatGPTの無料アカウントを含むすべてのユーザーが利用可能で、使用制限はあるものの料金は発生しない。
Microsoftも同日、GPT-5をWeb版、Windows、Mac、iPhone、AndroidのCopilotアプリで無料提供すると発表した。
GPT-5はMicrosoft 365 Copilot、Microsoft Copilot Studio、GitHub Copilot、Visual Studio Code、GitHub Mobile、Azure AI Foundryでも利用できる。
Microsoft CopilotではSmart(GPT-5)モデルとして実装され、タスクに応じて自動的に推論の深度を調整する。GPT-5は地域別に段階的展開されている。
Microsoft 365 Copilotの有料サブスクリプション利用者は、メール、文書、ファイルに対する推論機能が利用可能となる。開発者向けには、GPT-5、GPT-5 mini、GPT-5 nanoの3つのオプションがAzure AI Foundry経由で提供される。
From:
GPT-5 Is Available For Free To Microsoft Copilot Users
【編集部解説】
今回のGPT-5統合は、AIの使い方そのものを更新する出来事です。前提として、リアルタイムルーター(タスクに応じた自動モデル切替)はOpenAIのChatGPTとMicrosoft Copilotの双方で共通に機能します。ユーザーがモデルを意識せず、問いの複雑さに応じて「速さ」と「深さ」を自動で配分できる点が、GPT-5世代の体験の核です。

一方で、実務適用の観点ではCopilotに固有の強みがあります。第一に、Microsoft 365とのネイティブ統合により、Outlook、Teams、Word、Excel、PowerPoint、Loopに横断的に埋め込まれ、Entra ID(旧Azure AD)の権限やSharePoint/OneDriveのデータ境界に準拠して動作します。メール、会議、文書、ファイルといった業務コンテキストを前提に推論できるため、ワークフローへの定着が速いです。
第二に、IT管理とコンプライアンスへの適合性です。テナントポリシー、DLP、eDiscovery、監査ログ、条件付きアクセス、MFAといった既存の統制に自然に乗るため、大規模展開や監査対応がしやすい設計です。
第三に、開発から運用までの一貫性です。GitHub CopilotやVisual Studio Codeでの開発、Copilot Studioでのカスタムエージェント、Azure AI Foundryでの配備まで、同一のGPT-5スタックで連続的に活用できます。試作から社内実装、運用改善までのリードタイム短縮が見込めます。
一方でChatGPT側の利点は、導入の軽さと検証スピードです。アカウント作成だけで最新のGPT-5体験に触れやすく、個人〜小規模チームによるアイデア検証やモデルトライアルに向きます。現実的な住み分けは「ChatGPTで着想と検証、Copilotで業務への定着とスケール」。どちらも無料導線があるため、ユースケースに応じて併用するのが合理的です。
セキュリティと信頼性の観点では、Microsoft側の事前検証レイヤー(AI Red Teamなど)やテナント運用の統制が、企業導入の安心材料になります。ロールアウトは地域・環境により差が出る点、無料提供には使用制限がある点は留意が必要です。今回の記事では、過去の「噂・予想段階」から踏み込み、正式リリース後の具体的な活用動線(Smart〈GPT‑5〉のUI、Microsoft 365内での動き)まで整理しました。スクリーンショットは編集部で準備し、初期セットアップから運用定着までを伴走します。
【用語解説】
GPT-5
OpenAIが2025年8月7日に発表した最新のAI言語モデルで、高速応答と深い推論機能を統合した「統一モデル」である。コーディング、数学、データ分析、科学など多岐にわたるタスクで、過去のOpenAIモデル中最高の性能を発揮する。
Smart(GPT-5)モデル
Microsoft Copilotで実装されているGPT-5の機能名で、ユーザーのプロンプトを自動分析し、単純な質問には高速処理、複雑な推論が必要な質問には深い思考処理を自動選択するリアルタイムルーティング機能を持つ。
モデルルーター(Model Router)
Azure AI Foundryで提供される自動オーケストレーション機能で、プロンプトの構造、ツール利用、複雑性を分析し、最適なAIモデルをミリ秒単位で選択する。推論コストを最大60%削減可能。
Azure AI Foundry
Microsoftが提供する開発者向けのAIプラットフォームで、GPT-5シリーズ(GPT-5、GPT-5 mini、GPT-5 nano、GPT-5 chat)を含む各種AIモデルをアプリケーション開発に統合できるツールである。
リアルタイムルーター
GPT-5の核心機能で、ユーザーのプロンプトをリアルタイムで解析し、タスクの複雑性に応じて最適なモデルを自動選択する技術。これによりユーザーはモデル選択を意識する必要がなくなる。
【参考リンク】
OpenAI(外部)
GPT-5を開発したAI企業で、ChatGPTの運営元。最新AIモデル情報提供
Microsoft 365 Copilot(外部)
GPT-5のリアルタイムルーター機能搭載。ビジネス文書から複雑データ分析まで対応
GitHub Copilot(外部)
GPT-5の高度コーディング能力で複雑アプリ開発や長期エージェントタスク支援
Azure AI Foundry(外部)
GPT-5シリーズ4モデルとモデルルーター機能で企業向けセキュアAIソリューション構築
【参考動画】
【参考記事】
Available today: GPT-5 in Microsoft 365 Copilot(外部)
Microsoft公式による2025年8月7日のGPT-5統合発表。リアルタイムルーター機能詳細説明
Microsoft incorporates OpenAI’s GPT-5 into consumer offerings(外部)
Microsoft News公式によるGPT-5統合包括レポート。AI Red Team安全性検証結果報告
GPT-5 in Azure AI Foundry: The future of AI apps starts here(外部)
Azure公式による開発者向けGPT-5詳細解説。4モデル構成と推論コスト60%削減分析
【編集部後記】
GPT-5がMicrosoft Copilotで無料利用可能になったこのタイミングで、皆さんはどのような活用方法を考えていらっしゃいますか?今回の統合により、高度なAI推論機能が身近になりましたが、実際に触れてみると、従来のAIツールとの違いを実感できるかもしれません。
特に注目すべきは、モデルルーターによる推論コスト60%削減という企業にとって画期的な改善点です。私たちinnovaTopia編集部も、このリアルタイムルーティング機能の可能性に驚いています。皆さんの業務や創作活動において、どのような変化が生まれそうでしょうか?ぜひお試しいただいた感想や、気づいた点があれば教えていただけると嬉しいです。