サム・アルトマンCEOはGPT-5への批判を受け8月9日に謝罪し、有料会員(ChatGPT Plus/月額20ドル)限定でGPT-4oの復活措置を発表した。ただし、この再提供は当面の暫定措置とされている。
OpenAIは8月8日、ChatGPT向けに新モデル「GPT-5」を正式リリースし、従来利用可能だったGPT-4oやo3など複数のレガシーモデルを事前告知なしで一斉廃止した。これによりユーザーのプロジェクトや既存チャット履歴も自動で新バージョンへ切り替わり、多くの利用者から困惑と反発の声が噴出した。特に、ユーザーが親しんでいたGPT-4oの応答や“人格”の消失に対し、RedditやSNSで激しい抗議が発生していた。GPT-5は推論やコーディング能力など様々な分野で進化を遂げているが、ユーザー体験の連続性やAIへの愛着が大きな課題として表面化した。
From: The GPT-5 rollout has been a big mess
【編集部解説】
2025年8月8日にOpenAIが公開した「GPT-5」は、単なる性能向上の発表にとどまらず、AIと人との関係性をめぐる議論を再燃させました。従来のGPT-4oやo3といったレガシーモデルが事前告知なく一斉に廃止され、過去のチャット履歴までもが自動的に新モデルへ置き換わったことは、技術的な更新以上の衝撃を多くのユーザーにもたらしました。それは単に“使い慣れた道具”を失うだけでなく、長く積み重ねてきた対話の感覚や信頼感といった、AIとの関係性そのものを断ち切られる体験だったのです。
今回の反発は「技術の進化=満足度の向上」という単純な図式が成り立たないことを物語っています。特にChatGPTのような生成AIは、ビジネスやクリエイティブ作業だけでなく、日々の意思決定や自己表現の一部にまで深く入り込んでいます。モデルの違いは単なる処理能力の差ではなく、“人格”や“語り口”の違いとしてユーザーの実感に結びついており、そこに対する愛着や信頼は、数値化できない価値として存在しています。
サム・アルトマンCEOが「我々はユーザーがGPT-4oに抱く価値を過小評価していた」と公言し、僅か1日でGPT-4oを有料会員向けに暫定復活させるという判断は、OpenAIにとってもひとつの転換点でしょう。これはユーザーフィードバックを単なる意見としてではなく、サービスの存続条件の一部として受け止めた証でもあります。今後は、性能や安全性を高める取り組みと並行して、ユーザーが求める“関係性の維持”や“選択の自由”をどう担保するかが鍵になるはずです。
私たちは、この出来事を「AI進化の副作用」としてではなく、人とAIがより持続的かつ互恵的に共存するための学びの機会と捉えています。技術的な合理性と感情的な納得感、その両立がこれからのAI開発の核心と言えるでしょう。そしてその実現には、技術者と利用者の双方向の対話が不可欠です。今回の事例が、その対話をより豊かで実りあるものにするきっかけになることを願っています。
【用語解説】
GPT-5:
OpenAI開発の2025年最新大規模言語モデル。より高精度な推論・高速処理・プログラミング支援などを強化。
GPT-4o「Omni」:
由来の名称。テキスト・画像・音声を融合する“マルチモーダル”型モデルで、多くの自然な会話体験を実現。
レガシーモデル(legacy models):
GPT-4oや o4-mini、o4-mini-highなど、GPT-5以前の旧世代ChatGPTモデル群。
【参考リンク】
OpenAI公式サイト(外部)OpenAIの企業情報や最新AIモデル、研究開発内容を網羅した公式ページ。
【参考記事】
The GPT-5 rollout has been a big mess(外部)鞍替え混乱、ユーザー反発、既存モデル削除騒動とOpenAI社の対応を詳細に扱う海外専門記事。
OpenAI GPT 5 model faces backlash, company brings back legacy models for customers(外部)旧モデル廃止の反発と有料復活策、アルトマンCEOの声明までを多角的に総括する海外ビジネス記事。
【編集部後記】
今回のGPT-5大幅刷新と仕様変更によるユーザーの声や体験の変化は、「どのモデルが“優れているか”」だけでなく、「私たちがAIに何を期待するのか、どんな“関係”を築くのか」という問いを投げかけてくれました。みなさんもAIとの付き合い方や変化、体験を、ぜひ自由にシェアしてみませんか?その気づきが、より良いAI社会の進化につながると私たちは信じています。