ZoomのAI新機能「free up my time」、会議参加の必要性をAIが自動判定

[更新]2025年9月19日07:09

ZoomのAI新機能「free up my time」、会議参加の必要性をAIが自動判定 - innovaTopia - (イノベトピア)

Zoomは2025年9月17日、年次イベントの「Zoomtopia」にてAI Companion 3.0を発表した。この新しいAIツールは人間の監視なしにタスクを処理するエージェンティック(agentic)機能を持つ。11月に利用開始予定である。

最も注目される新機能は「free up my time」で、AIがカレンダー上でスキップすべき会議を提案し、会議招待者をオプション参加者に変更することを推奨する。また専用の集中時間のために会議のない期間をブロックすることも提案する。ただしZoomのAIがカレンダーに変更を加える前に最終承認が必要である。

新機能またはアップデート機能としては、手動で入力した会議メモを会議の洞察を使って拡張するメモ取り機能、会議スライドを短いビデオクリップに変換する機能、新しいアバター作成機能、リアルタイム翻訳機能が含まれる。これらは対象となる有料のZoom Workplaceアカウントであれば追加料金なしで利用できる。

また、企業向けには月額12ドルの追加料金でZoom経由のカスタムAIエージェント作成機能も提供される。これらの機能は再デザインされたZoom Workplaceホーム画面と共に提供される。エージェンティックAIは生成AI技術の最新の波で、大規模言語モデルを基盤として独立してタスクを完了する能力を持つ。

From: 文献リンクZoom’s New AI Tool Will Tell You What Meetings to Skip

【編集部解説】

ZoomZoomtopia 2025で発表したAI Companion 3.0は、単なるアップグレードではなく、ワークプレイスAIの新しいパラダイムを示しています。従来のAIアシスタントが「指示されたことを実行する」受動的な存在だったのに対し、エージェンティックAIは「自ら判断して行動する」能動的な存在へと進化しました。

free up my time」機能の革新性は、AIが人間に代わって会議の価値を判断する点にあります。これまで会議参加の判断は完全に人間の領域でしたが、AIが過去の会議データ、参加者情報、議題の重要度を分析して提案を行うことで、知識労働者の時間配分を最適化しようとしています。

ただし、この機能には慎重な検討が必要な側面もあります。会議をスキップすることで生まれる人間関係への影響や、重要な情報を見逃すリスクは依然として存在します。また、AIの判断基準が組織の文化や個人の働き方に適合しない可能性も考慮する必要があります。

技術的な観点では、エージェンティックAI大規模言語モデルに「メモリ」と「推論能力」を組み合わせることで実現されています。これにより、単発の質問応答から連続的なタスク処理への進化が可能になりました。Zoomの場合、過去の会議参加履歴、カレンダーパターン、ユーザーの行動傾向を学習し、個人に最適化された提案を行います。

ビジネスへの影響は多層的です。短期的には管理業務の効率化による生産性向上が期待される一方、長期的には働き方そのものの変化を促す可能性があります。特に、AIによる時間管理の自動化は、知識労働者がより創造的で戦略的な業務に集中できる環境を作り出すでしょう。

規制面では、AIによる自動判断の範囲や責任の所在について、今後議論が活発化することが予想されます。企業がAIの判断を信頼してどこまで任せるかは、組織のガバナンスやリスク管理の新しい課題となります。

【用語解説】

エージェンティックAI(Agentic AI)
人間の指示を待たずに自律的に判断し、複数のタスクを連続して実行できるAI技術。従来のAIが単発の質問応答に特化していたのに対し、目標達成のために複数のステップを自動実行する能力を持つ。

AI Companion
Zoomが提供するAIアシスタント機能。会議の文字起こし、要約作成、質問応答などを行う。2023年に初版が登場し、現在は3.0版が最新となっている。

大規模言語モデル(LLM)
膨大なテキストデータで訓練された自然言語処理AI。ChatGPTやGPT-4などが代表例で、人間のような文章生成や理解が可能。エージェンティックAIの基盤技術として使用される。

【参考リンク】

Zoom(外部)
ビデオ会議サービスの世界的リーダー。パンデミック期に急成長し、現在はAI機能を統合した総合的なワークプレイスプラットフォームを提供している。

Zoom AI Companion(外部)
Zoomの公式AIアシスタント機能。会議の効率化と生産性向上を目的とした各種AI機能を提供する。

【参考記事】

Zoom unveils AI Companion 3.0 at Zoomtopia 2025(外部)
Zoom公式による発表内容の詳細。AI Companion 3.0の新機能と11月のリリーススケジュールについて説明している。

Zoomtopia 2025: Zoom Launches AI Companion 3.0(外部)
UCTodayによるZoomtopia 2025の詳細レポート。エージェンティックAIの技術的背景とビジネスへの影響を分析している。

Zoom introduces AI avatars, smarter AI assistant(外部)
Indian Expressによる報道。AIアバター機能と他プラットフォーム連携について詳しく説明している。

AI Landscape 2025: Agentic Automation Changes Everything(外部)
エージェンティックAIの市場動向とビジネスインパクトを分析。2025年のAI業界の変化を予測している。

Agentic AI at Scale: Redefining Management(外部)
MIT Sloan Management ReviewによるエージェンティックAIの組織への影響に関する学術的分析。管理手法の変化について論じている。

【編集部後記】

皆さんは日々の会議で「この時間、本当に必要だったのかな」と感じることはありませんか。ZoomのAI Companion 3.0が提案する「会議をスキップする」という発想は、働き方の根本的な見直しを迫っているように思えます。

一方で、AIに時間管理を委ねることへの不安も理解できます。大切な情報を見逃したり、同僚との関係に影響が出る可能性もあるでしょう。皆さんなら、どの程度までAIの判断を信頼しますか。また、時間が生まれた分、どんなことに集中したいと考えているでしょうか。

エージェンティックAIは確実に私たちの働き方を変えていきます。この変化を前向きに捉えるためには、どんな準備や心構えが必要なのか、一緒に考えていければと思います。

投稿者アバター
omote
デザイン、ライティング、Web制作を行っています。AI分野と、ワクワクするような進化を遂げるロボティクス分野について関心を持っています。AIについては私自身子を持つ親として、技術や芸術、または精神面におけるAIと人との共存について、読者の皆さんと共に学び、考えていけたらと思っています。

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