Edifier Japan株式会社は2025年11月6日、インナーイヤー型ワイヤレスイヤホン「EvoBuds」の発売を発表した。Bluetooth 6.1に対応し、対応コーデックや実装最適化により約80ms級の低遅延を実現。
LDAC HDオーディオデコードに対応し、最大伝送速度990kbps、40kHzフルバンドのハイレゾサウンドを再生可能で、一般社団法人日本オーディオ協会のハイレゾワイヤレス規格認証を取得している。
13mmトリプルコンポジットダイナミックドライバーを搭載し、インテリジェントアダプティブノイズキャンセリング機能により周囲の騒音環境に合わせて自動調整する。AIリアルタイム翻訳機能は21言語に対応し、デュアルデバイスの同時接続をサポートする。
専用アプリ「Edifier ConneX」はiOS・Android OSに対応している。
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最新のBluetooth 6.1技術を搭載したAI音声翻訳付きノイズキャンセリングイヤホン「EvoBuds」
【編集部解説】
ワイヤレスイヤホンは今、単なる音声通信機器から「多層的な体験デバイス」へと進化しています。EDIFIERのEvoBudsが搭載するBluetooth 6.1、LDAC対応、AI翻訳という三つのレイヤーの統合は、このトレンドを象徴する一例にほかなりません。
Bluetooth 6.1はこの年の中盤に仕様が発表されたばかりの技術です。約80msの低遅延通信という数字は、従来のワイヤレスイヤホンが抱えていた遅延問題をほぼ実用レベルで解決しています。これにより、音ズレの課題が顕在化していた動画視聴やゲームプレイといった用途でも、より快適な体験が可能になります。
LDAC HDコーデックの990kbpsという伝送速度は、ワイヤレスでありながらハイレゾレベルの情報量を届けることを意味します。有線イヤホンとの音質差を意識させない環境が、ようやく現実のものになりつつあるのです。こうした音質面での進化は、音楽制作やポッドキャスト利用など、音そのものに価値を感じるユーザー層を確実に取り込み始めています。
一方、AIリアルタイム翻訳機能の21言語対応は、より戦略的な意味合いを含んでいます。これまで翻訳機能はスマートフォンアプリに依存していましたが、イヤホンへの統合により「耳で直接理解する」という新しいインターフェースが誕生しました。グローバル化の進展に伴い、音声ベースのコミュニケーションツール化するイヤホンの価値が急速に高まっています。

ただし、留意すべき点もあります。AIによる翻訳精度はコンテキストや方言に左右されやすく、ビジネス交渉のような高度な意図伝達には依然として人間の介在が必要です。また、常時接続されたイヤホンからのデータ送信は、プライバシー関連の懸念事項としても浮上しています。
デザイン面では、セミインイヤー設計と鏡面メッキ加工という組み合わせが、機能性と美的価値のバランスを意識していることが読み取れます。長時間装着を前提としたワイヤレスイヤホンは、もはや機器ではなく身につける「ファッションアイテム」の側面を獲得しているのです。
この製品が示唆するのは、イヤホン市場が単一の機能では競争しなくなったという現実です。音質、接続性、AIサービス、デザイン、アプリエコシステムといった複数の軸が統合された時点で、初めて市場での競争力が生まれる時代へ突入しています。
【用語解説】
Bluetooth 6.1
Bluetoothの最新仕様。2025年5月に採択されたバージョン。プライバシー強化とランダム化されたアドレス変更機能により、デバイストラッキングの困難性を向上させている。低遅延通信も特徴である。
LDAC HDオーディオデコード
ソニーが開発したBluetooth用のコーデック。最大伝送速度990kbpsで、ワイヤレス接続でありながらハイレゾレベルの音質を実現する。24-bit/96kHzのハイレゾオーディオファイルに対応し、日本オーディオ協会のハイレゾワイヤレス規格認証を取得している。
セミインイヤー設計
イヤホンの装着形状の一種。耳の外耳道に完全に挿入されず、耳介の浅い部分にかかる設計。圧迫感が少なく長時間装着に向いている。
インテリジェントアダプティブノイズキャンセリング
周囲の騒音環境をリアルタイムで検出し、ノイズキャンセリングの深度を自動調整する機能。ユーザーの装着状態や移動環境に応じて最適な静寂度を提供する。
AIリアルタイム翻訳
人工知能を利用した、ほぼ遅延のない音声翻訳機能。複数言語間での会話をイヤホンを通じて自動翻訳する。
【参考リンク】
Edifier Japan 公式サイト(外部)
ワイヤレスイヤホン、ヘッドホン、スピーカーなど、オーディオ製品全般の情報を提供。
Bluetooth Official Site(外部)
Bluetooth技術の公式仕様書、最新バージョン情報、認証基準が公開。
【参考記事】
Bluetooth Core Specification 6.1 Released with Enhanced Privacy and Power Efficiency(外部)
Bluetooth 6.1の主要機能、プライバシー強化、消費電力改善について。
The ultimate guide to Bluetooth headphones: LDAC isn’t Hi-Res, but that’s okay(外部)
LDAC 990kbps伝送速度と実際の知覚体験、周波数特性を分析。
Bluetooth 6: low-level improvements aimed for stability(外部)
低遅延化の技術背景、80ms実現メカニズムの詳細解説。
Bluetooth 6.1 specification introduces randomized RPA updates(外部)
RPA ランダム化タイムアウト設定による攻撃難度向上を解説。
Delivering on the bi-annual release schedule(外部)
Bluetooth 6.0、6.1、6.2の進化系統と開発ロードマップ。
【編集部後記】
ワイヤレスイヤホンは今、ただの音響デバイスではなく、グローバルコミュニケーションの相棒になろうとしています。
Bluetooth 6.1、LDAC、AI翻訳という三つの技術が集約されたEvoBudsのような製品が次々と登場する中で、皆さんは「自分たちの日常にどんなイヤホンが必要か」を問い直す時が来ているのではないでしょうか。音質に惹かれる人、デザイン性を重視する人、海外出張が多い人、長時間装着する人――利用シーンが多様化する今だからこそ、テクノロジーとの付き合い方も一人ひとり異なっていくはずです。自分たちの「心ときめく選択肢」を見つけるために、共に未来を探索していきましょう。
























