野村総合研究所は2025年11月6日、生成AI「Claude」を提供するAnthropic PBCとAmazon Bedrock向けAnthropic認定リセラープログラム契約を日本で初めて締結した。
NRIはこれまでにAnthropicの日本法人設立前からClaudeを日本企業向けに導入しており、今回の契約によりAWSとの戦略的協業を活かしながら、日本国内の多様な業種・業務領域でClaude活用を加速させる体制を強化した。
最大の特徴は、Amazon Bedrockの「日本国内クロスリージョン推論」により、Claude 4.5の推論処理が東京および大阪リージョン限定で完結し、データが国外流出しない高いデータセキュリティ環境を実現した点にある。これにより、金融機関や官公庁など厳格なガバナンス要件を持つ企業・団体にも幅広くAI導入の道が拓かれ、今後さらなる日本のDX推進や競争力強化が期待される。
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野村総合研究所、日本国内初のAnthropic認定リセラーに選定
【編集部解説】
今回のNRIによるAnthropic認定リセラー契約締結は、日本の企業向け生成AI市場における重要な転換点となります。最大のポイントは、Amazon Bedrockの「日本国内クロスリージョン推論」機能により、Claude 4.5の推論処理が日本国内(東京・大阪リージョン)に完全に閉じた形で実行できる点です。
この技術的な実現により、金融機関や官公庁など、厳格なデータガバナンス要件を持つ組織でもClaudeを本格導入できる環境が整いました。従来、海外のAIモデルを利用する際の最大の障壁は「データが国外に出る可能性」でしたが、この懸念が技術的に解消されたのです。
NRIが「日本初」の認定リセラーとなった背景には、同社の実績が大きく影響しています。Anthropic公式サイトによれば、NRIはClaudeを活用して日本語文書のレビュー時間を半減させるなど、すでに複数の日本企業への導入実績を持っています。
AIリセラープログラムの意義は、単なる販売代理店契約を超えています。NRIはコンサルティングからシステム統合、運用までワンストップで提供できる体制を持つため、企業の既存業務プロセスにClaudeを最適化して組み込むことが可能です。
特に注目すべきは、AIエージェントの実用化が急速に進む現在のタイミングです。Anthropicが最近発表した「Skills」機能により、Claudeは単なる対話型AIから、複雑な業務プロセスを自動化できるモジュラー型のエンタープライズAIエージェントへと進化しています。
この契約により、日本企業は言語の壁やセキュリティ要件といった従来の課題を克服しながら、最先端のAI技術を自社の競争力強化に活用できる道が開かれました。Tech for Human Evolutionという観点から見れば、技術の民主化と実用化が同時に進む重要な一歩と言えるでしょう。
【用語解説】
Amazon Bedrock
AWSが提供する生成AI基盤サービスで、複数のAIモデルを企業のセキュリティ要件に対応した形で利用できるプラットフォームである。
AIリセラープログラム
AI企業が提供する技術やサービスを、再販業者が顧客に提供できる契約形態。販売代理にとどまらず、コンサルティングやシステム開発も含む場合が多い。
Anthropic
米国に本拠を置き、生成AIモデル「Claude」を開発する企業。倫理的なAI設計に注力し、企業向けソリューションを提供している。
【参考リンク】
株式会社野村総合研究所(NRI)(外部)
コンサルティングとITソリューションを提供し、AIを活用した業務改革支援も行う日本企業。
Anthropic(外部)
生成AIモデル「Claude」を開発し、倫理的なAI技術の普及に力を入れている米国企業。
Amazon Web Services (AWS)(外部)
クラウドサービス大手。Amazon BedrockやAI基盤サービスで企業のDXを支援。
Claude(Anthropicの生成AI)(外部)
Anthropicが開発した対話型および業務支援型の生成AIモデル。
【参考記事】
Amazon Bedrock now supports Japan cross-region inference(外部)
Amazon Bedrockが日本国内データリージョンでAI推論を可能にし、セキュリティ強化した内容。
NRI cuts document review time in half with Claude(外部)
NRIがClaudeを用いて日本語文書のレビュー作業時間を半減させた導入実績についての事例。
How Anthropic’s ‘Skills’ Transform Claude Into a True Enterprise AI Agent(外部)
AnthropicのSkills機能でClaudeが業務自動化対応するエンタープライズAIに進化した解説記事。
【編集部後記】
みなさんは、いまAIや生成AIがどのように社会やビジネスの現場に取り入れられているのか、実感できていますでしょうか。今回のニュースは、特にデータガバナンスを重視する日本企業や官公庁による国内生成AI活用へのハードルが下がったという点で、大きな意味があります。
自分の仕事や日常生活に、最新のAI技術がどんな形で入り込んでくるのか――どんな変化が生まれる可能性があるか、ぜひ考えてみていただければ幸いです。今、みなさんが気になっているAIの活用や未来像があれば、ぜひ教えてください。
























