SalesforceのCEOマーク・ベニオフは、3年間毎日利用したOpenAIのChatGPTからGoogleの最新モデルGemini 3へ移行すると日曜にXで表明した。ベニオフは同モデルを2時間使用し、推論や速度、画像等の機能における飛躍を認めた。
同氏の投稿は月曜朝までに100万回以上表示された。競合であるOpenAIのCEOサム・アルトマンも先週、Gemini 3を称賛したほか、元テスラのAIディレクターであるアンドレイ・カルパシーやStripeのCEOパトリック・コリソンもXで肯定的評価を下した。
GoogleとDeepMindは先週、Gemini 3をテキストやコード等に対応する強力なモデルとして発表しており、OpenAIのChatGPTシリーズや5、AnthropicのClaude 3.5との競争が激化している。
From:
Salesforce’s Marc Benioff says Google’s Gemini 3 just blew past ChatGPT: ‘I’m not going back’
【編集部解説】
今回のニュースは、単なる「好みの変化」以上の意味を持っています。長年、生成AI界の絶対王者として君臨してきたOpenAIのChatGPTに対し、GoogleのGemini 3が「実用性と推論能力」で明確な逆転劇を見せ始めたことを象徴する出来事だからです。特に、ビジネス界の重鎮であり、これまでOpenAIとも密接な関係にあったマーク・ベニオフ氏が「戻れない」と断言したインパクトは計り知れません。
技術的な深掘りをすると、記事中で触れられている「Agentic(エージェント的)」というキーワードが非常に重要です。これは、従来の「質問に答えるAI」から、「自律的にタスクを完遂するAI」への進化を指します。Gemini 3が評価されたのは、単に文章が上手いからではなく、複雑なビジネスプロセスやコーディングにおいて、人間の意図を深く汲み取り(Vibe Coding)、自律的に判断して正解を導き出す推論能力の高さにあると推測されます。
この動きは、企業のAI採用戦略にも大きな影響を与えるでしょう。これまでは「とりあえずChatGPT」が標準解でしたが、特定のタスクにおいてはGoogleのエコシステムと深く統合されたGeminiの方が優位であるという認識が広がれば、エンタープライズ領域でのシェア争いは一層激化します。私たちユーザーにとっては、単一のモデルに依存せず、用途に応じて最適なAIを使い分ける「マルチモデル時代」の本格到来を意味します。
一方で、懸念すべきは「AIへの過度な依存」と「ブラックボックス化」です。ベニオフ氏が「Insane(狂気的)」と表現するほどの性能向上は、AIが導き出した答えの根拠を人間が検証することを困難にする可能性があります。特にエージェント型AIが自律的に行動し始めた際、そのミスや暴走をどう制御するかは、技術的な課題であると同時に、今後の法規制の焦点となっていくはずです。
しかし、長期的にはこの競争こそが人類の進化を加速させます。Googleの猛追により、OpenAIも次世代モデルでさらなる革新を迫られるでしょう。私たち人間は、これら超高性能なAI同士の競争が生み出す果実を享受しつつ、それをどう「指揮」するかという、より高度な役割へとシフトしていくことになります。
【用語解説】
Vibe Coding(バイブ・コーディング)
アンドレイ・カルパシー氏が提唱した概念。プログラミングの際、コードの細部を人間が書くのではなく、AIに自然言語で「やりたいこと(雰囲気・Vibe)」を伝え、生成されたコードの中身を人間が詳細に確認せずに実行結果だけを見て修正・運用する開発スタイルのこと。
マルチモーダル
テキストだけでなく、画像、音声、動画、プログラムコードなど、複数の種類の情報を同時に理解・処理・生成できる能力のこと。人間が五感を使って世界を認識するように、AIも多様なデータを組み合わせて高度な判断が可能になる。
【参考リンク】
Google Gemini(外部)
Google DeepMindが開発した最新のマルチモーダルAIモデル。テキスト、画像、動画、コードなどを理解し生成する能力を持ち、Googleエコシステム全体に統合されている。
Salesforce(外部)
世界シェアNo.1の顧客管理(CRM)プラットフォームを提供する企業。AI「Einstein」を搭載し、ビジネスデータの活用を支援している。CEOのマーク・ベニオフ氏はAI業界のキーパーソンの一人。
Stripe(外部)
インターネット向けの経済インフラプラットフォームを構築するテクノロジー企業。決済処理から会社設立まで、オンラインビジネスに必要なツールを提供。CEOのパトリック・コリソン氏もAI技術の活用に積極的だ。
【参考記事】
A new era of intelligence with Gemini 3(外部)
GoogleによるGemini 3の公式発表ブログ。推論能力、マルチモーダル理解、エージェント機能が大幅に強化された点や、開発者向けの新機能について詳細に解説している。
What is Agentic AI?(外部)
AWSによる「Agentic AI(エージェント型AI)」の解説記事。自律的に目標を達成するAIシステムの定義や、従来の自動化ツールとの違いについて技術的な視点から説明している。
【編集部後記】
ベニオフ氏の決断は、私たちに「ツールの選び方」を再考させてくれますね。皆さんの日常や業務でも、「なんとなくChatGPT」になっていませんか?画像や動画、複雑な推論が必要な場面では、Gemini 3のような新しい選択肢が、想像以上の効率化をもたらすかもしれません。
「とりあえず両方使ってみて、自分の相棒を決める」。そんな軽やかな実験が、未来を少しだけ早く引き寄せる鍵になるはずです。ぜひいろいろなAIツールを試してみて、その感想を教えてください。
























