Last Updated on 2024-01-31 05:39 by 荒木 啓介
ハリウッドのタレントエージェンシーWMEは、人工知能（A.I.）技術を通じてクライアントの肖像権が不正利用されるのを防ぐため、テクノロジー企業Vermillioとのパートナーシップを発表しました。この提携により、WMEのクライアントは、自身の画像や知的財産がA.I.技術を使って不正に使用されることから保護されることを目指します。Vermillioが開発したプラットフォーム「Trace ID」は、A.I.技術を利用して画像を追跡し、クライアントが自身の肖像や画像を収益化する方法を模索します。
昨年の俳優ストライキでは、A.I.を利用してこれらの資産を保護する方法が大きな争点となりました。ストライキ後にSAG-AFTRA（俳優組合）との契約が承認されたものの、一部のパフォーマーはA.I.による保護に不満を持っています。例えば、契約では、実際の俳優の特徴を組み合わせてキャラクターを作成する「合成フェイク」の使用を禁止していません。
また、テイラー・スウィフトの偽の性的画像など、オンライン上でA.I.によって生成された画像が広まっています。WMEはクライアントの保護を最優先事項としており、Vermillioとの提携により、このような問題に対処し始めることができると述べています。WMEのクライアントは、自身の識別可能なデジタルデータをVermillioに提供し、ブロックチェーン上で記録および保護されます。これにより、オンライン上に現れるクライアントの画像を追跡し、認証することが可能になり、画像を削除するか、または支払いを要求することができます。
【ニュース解説】
ハリウッドのタレントエージェンシーであるWMEが、テクノロジー企業Vermillioと提携し、人工知能（A.I.）技術を利用した肖像権の不正利用からクライアントを保護する新たな取り組みを発表しました。このパートナーシップは、特に昨年の俳優ストライキで浮上したA.I.による肖像権保護の問題に対処することを目的としています。Vermillioが開発した「Trace ID」というプラットフォームを通じて、クライアントの画像や知的財産が不正に使用されることを防ぎ、また、それらを収益化する新たな方法を模索します。
この動きは、A.I.技術の進化によって、実在の人物の特徴を組み合わせて新たなキャラクターを作り出す「合成フェイク」や、テイラー・スウィフトのような著名人の偽の画像がオンライン上で拡散される問題に対する重要な対策となります。WMEのクライアントは、自身のデジタルデータをVermillioに提供し、ブロックチェーン上で保護されることにより、オンライン上での画像の追跡と認証が可能になります。これにより、不正利用された画像の削除や、使用に対する報酬を要求することができるようになります。
この提携は、エンターテイメント業界におけるA.I.の利用が拡大する中で、クリエイターやパフォーマーの権利を保護するための新たな枠組みを提供します。また、A.I.を利用してコンテンツを他言語に翻訳する際など、パフォーマーが自身の声や肖像を収益化する新たな機会を生み出す可能性もあります。
しかし、このような技術の導入は、プライバシーやデータ保護の観点から、新たな課題や懸念を引き起こす可能性もあります。ブロックチェーン上でのデータ管理は透明性とセキュリティを高める一方で、個人情報の取り扱いに関する厳格な規制やガイドラインの整備が求められます。また、A.I.による肖像権の不正利用を完全に防ぐことは困難であり、技術的な対策と法的な対策の両方が重要になってきます。
長期的には、この提携が示すような技術的な取り組みが、エンターテイメント業界におけるA.I.の健全な発展とクリエイティブな活動の保護に貢献することが期待されます。同時に、技術の進化に伴う倫理的な問題や法的な課題に対して、業界全体での議論と協力が必要となるでしょう。
from Hollywood Agency Partners With Tech Start-up Over A.I. Protection.
