Last Updated on 2024-01-27 14:34 by 荒木 啓介
バイオテクノロジー・イノベーション・オーガニゼーション(BIO)の新しい報告書によると、世界中で人間を対象に試験されている249の新規ワクチンプログラムのうち、28%がCOVID-19の予防を目的としていることが明らかになりました。さらに、進行中の臨床プログラムが5つ以上ある疾患は全体の20%に過ぎず、ウェストナイルウイルスやライム病などの一般的な脅威に対しては、臨床開発中のワクチンが1つしかない状況です。
この報告書は、バイオテクノロジーおよび製薬企業による感染症に対する研究開発がCOVID-19に過度に集中しており、他の多くの感染症に対する研究が不足していると結論付けています。
【ニュース解説】
バイオテクノロジー・イノベーション・オーガニゼーション(BIO)の最新の報告書によると、現在人間を対象に試験されている新規ワクチンプログラムの中で、COVID-19に関連するものが全体の約28%を占めていることが判明しました。これは、全体の249のプログラム中、約70のプログラムがCOVID-19の予防に焦点を当てていることを意味します。一方で、5つ以上の臨床プログラムが存在する疾患は全体の20%に過ぎず、ウェストナイルウイルスやライム病のような広く知られている感染症に対しては、開発中のワクチンが1つしかないという状況が明らかになりました。
この状況は、バイオテクノロジーおよび製薬業界がCOVID-19のパンデミックに対応するためにリソースを集中させた結果、他の感染症に対する研究開発がおろそかになっていることを示しています。このような偏りは、将来的に他の感染症が流行した際に、十分な対策が取れないリスクを生じさせる可能性があります。また、多様な感染症に対するワクチン開発が不足していることは、公衆衛生上の脅威に迅速かつ効果的に対応する能力に影響を及ぼすことになります。
この報告書から得られる教訓は、研究開発の多様性を確保し、一つの疾患に過度に集中することなく、幅広い感染症に対するワクチン開発を進めることの重要性です。これには、研究資金の配分を見直し、感染症のリスク評価に基づいた優先順位付けが必要になるでしょう。また、新興感染症や再興感染症に迅速に対応できるような研究開発体制の構築も求められます。
ポジティブな側面としては、COVID-19に対する集中的な研究開発が、mRNAワクチンのような新技術の進歩を促進したことです。これは将来的に他の疾患にも応用可能であり、ワクチン開発のスピードと効率を大幅に向上させる可能性があります。しかし、潜在的なリスクとしては、特定の疾患に対する過剰な投資が他の必要な研究を疎外し、バランスの取れた公衆衛生対策の妨げになることが挙げられます。
規制に関しては、政府や国際機関が研究開発の方向性に影響を与えるための政策やインセンティブを設定することが考えられます。例えば、研究資金の配分を多様化し、未対応の感染症に対する研究を奨励することで、よりバランスの取れたワクチンパイプラインを構築することができるでしょう。
長期的な視点では、感染症の脅威は常に変化しており、新たな病原体の出現や既存の病原体の変異によって、新しいワクチンの必要性が生じる可能性があります。そのため、柔軟かつ迅速に対応できる研究開発体制の確立が、将来の公衆衛生を守る上で不可欠です。
from Biopharma industry's vaccine pipeline lacks ‘depth,' with an overemphasis on Covid — report.