イーサリアム新提案:ガス上限4年で100倍に – 研究者ダンクラッド・ファイストが段階的スケーリング計画を発表

[更新]2025年4月29日06:52

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イーサリアム財団の研究者ダンクラッド・ファイストが2025年4月27日、イーサリアム改善提案(EIP)9698を提出した。この提案は、ブロックチェーンのガス上限を今後4年間で段階的に100倍に増加させる計画だ。

ファイストは「ダンクシャーディング」と呼ばれるイーサリアムのデータストレージソリューションの名付け親として知られている。

提案の主な内容

  • 現在36百万のガス上限を36億に引き上げる
  • 6月1日頃(ビーコンチェーンのエポック369017)から開始予定
  • 最初の2年で10倍、さらに2年で10倍の合計4年で100倍に増加
  • ハードフォークを必要としない自動的な増加メカニズム

期待される効果

  • 現在の15-20TPSから最大2,000TPSへの処理能力向上
  • ブロックあたり約6,000の取引を処理可能に
  • イーサリアムの競争力強化(比較:Solanaの現在のTPS 800-1,050、理論上最大65,000TPS)

開発者からの懸念

イーサリアムのコア開発者であるウカシュ・ロズメイとイーサリアム財団の開発者ヨッヘム・ブラウワーは、急速な拡大に対して慎重なアプローチを求めている。ブラウワーは、4年間で100倍という目標は過度に積極的であり、まずは6ヶ月で2倍の増加から始めるべきだと提案している。

この提案は、イーサリアムがレイヤー2ソリューションに加えて、ベースレイヤーでのスケーラビリティ向上に取り組む最新の試みとなっている。

from:Ethereum Could Supercharge Transaction Speed to 2,000 TPS Thanks to Bold New Proposal

【編集部解説】

イーサリアム財団の研究者ダンクラッド・ファイスト氏が提案したEIP-9698は、イーサリアムのスケーラビリティに関する長年の課題に対する画期的な解決策となる可能性を秘めています。この提案の核心は、現在36百万に設定されているガス上限を4年かけて段階的に36億まで引き上げるという点にあります。

まず注目すべきは、この提案が「ハードフォーク不要」で実装できる点です。これはネットワークの分断リスクを最小限に抑えつつ、大規模な変更を導入できることを意味しています。技術的には、各エポック(約6.4分)ごとに少しずつガス上限を自動的に引き上げる「決定論的な指数関数的成長スケジュール」を採用しています。

具体的には、最初の2年で10倍(36百万から3.6億)、さらに2年で10倍(3.6億から36億)という段階的な増加を計画しています。このエポックごとの非常に緩やかな増加により、ノードオペレーターや開発者に適応と最適化のための十分な時間が与えられます。

この提案が実現すると、イーサリアムの取引処理能力は現在の15-20TPSから最大2,000TPSへと飛躍的に向上します。これはSolanaの現在の処理能力(800-1,050TPS)に迫る数値であり、イーサリアムの競争力強化に大きく貢献するでしょう。

しかし、この提案には技術的な課題も存在します。ガス上限の急激な増加は、最適化されていないノードに負担をかけ、ブロック伝播時間を延長させる可能性があります。これに対してファイスト氏は、「エポックごとの非常に緩やかな増加により、ノードオペレーターや開発者に適応と最適化のための十分な時間を与える」と説明しています。

また、この提案はイーサリアムのスケーリング戦略における重要な転換点とも言えます。近年、イーサリアムは主にレイヤー2ソリューションを通じたスケーリングに注力してきましたが、この戦略に対しては「エコシステムを相互運用性の低い複数のチェーンに分断し、ユーザー体験を悪化させている」という批判もありました。EIP-9698は、ベースレイヤー(レイヤー1)でのスケーラビリティ向上に再び焦点を当てる取り組みと言えるでしょう。

イーサリアムコミュニティ内では、この提案に対する議論も活発に行われています。一部の開発者からは、4年間で100倍という目標は過度に積極的であるという懸念の声も上がっています。

この提案が実現すれば、DeFi(分散型金融)やNFT(非代替性トークン)などのイーサリアム上のアプリケーションは、より高速で低コストな取引を実現できるようになります。これにより、ユーザー体験の向上やアプリケーション開発の活性化が期待できるでしょう。

また、イーサリアムのガス上限増加は、ブロックチェーン業界全体のスケーラビリティ競争にも影響を与える可能性があります。他のブロックチェーンプラットフォームも、競争力を維持するためにさらなる技術革新を迫られるかもしれません。

EIP-9698は6月1日頃から実装が始まる予定ですが、実際に導入されるかどうかはイーサリアムクライアントチームの投票にかかっています。今後数週間のコミュニティの反応と議論の行方に注目が集まります。

イーサリアムは常に技術革新を続けるプラットフォームですが、この提案はその歴史の中でも特に大胆な変革と言えるでしょう。テクノロジーの進化とともに、ブロックチェーンの可能性も広がり続けています。

【用語解説】

ガス(Gas):
イーサリアムネットワーク上でトランザクションやスマートコントラクトを実行するために必要な計算資源の単位。ガソリンが車を動かすように、ガスはイーサリアムの処理を動かす燃料と考えるとわかりやすい。

ガス上限(Gas Limit):
一つのブロックで使用できる最大のガス量。例えば、ガソリンスタンドで「満タンで5,000円まで」と指定するようなもの。ブロックガス上限が高いほど、一度に処理できる取引数が増える。

TPS(Transactions Per Second):
1秒間に処理できる取引数。銀行のATMで例えると、1台のATMが1秒間に処理できる取引数のようなもの。

イーサリアム改善提案(EIP):
イーサリアムの機能や仕様を変更するための提案書。日本の法改正案のようなもの。

エポック(Epoch):
イーサリアムのビーコンチェーンにおける時間の単位で、約6.4分間。32個のスロット(ブロック生成機会)で構成される。

ダンクシャーディング(Danksharding):
イーサリアムのデータストレージを効率化するソリューション。ダンクラッド・ファイスト氏にちなんで名付けられた。

レイヤー2(Layer 2):
イーサリアムのメインネットワーク(レイヤー1)の上に構築された二次的なネットワーク。メインネットワークの負荷を軽減し、スケーラビリティを向上させる。

ハードフォーク:
ブロックチェーンの基本的なルールを変更する大規模なアップデート。新旧のルールに互換性がないため、全参加者が新ルールに移行する必要がある。

【参考リンク

イーサリアム公式サイト(外部)
イーサリアムブロックチェーンの公式ウェブサイト。技術情報、開発者リソース、コミュニティ情報などを提供している。

イーサリアム・ファウンデーション(外部)
イーサリアムの開発と普及を支援する非営利団体。研究、開発資金提供、教育活動などを行っている。

GitHub EIP-9698(外部)
ダンクラッド・ファイスト氏が提案したEIP-9698の詳細が掲載されているページ。

YCharts イーサリアムガス上限データ(外部)
イーサリアムのガス上限の推移を確認できるデータサイト。

【参考動画】

【編集部後記】

イーサリアムの進化は、私たちの日常にどう影響するのでしょうか?ブロックチェーン技術の進歩は時に専門的で分かりにくいですが、この「ガス上限100倍」という変化は、より速く、安価なDeFiサービスやNFT取引を実現する可能性を秘めています。皆さんは現在のイーサリアムの処理速度に不満を感じたことはありますか?また、このような段階的な技術革新がWeb3の普及にどう貢献すると思いますか?コメント欄でぜひ皆さんの考えをシェアしてください。

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TaTsu
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